1-55.55話「大いなる遺産」


 今回は『闘士ゴーディアン』2回目の総集編。とはいえ、今回明かされる新事実はこれまでのサントーレとマドクターの戦いを決定的に変えることになる。そして、ダイゴの秘密についても真実が皆に明らかになる。それでは見ていこう。


55話「大いなる遺産」 1980年10月19日


 脚本     :山本優

 演出     :紀裕行

(『アニメージュ』『ジ・アニメ』1980年11月号では渡部秀雄、『アニメージュ』81年1月号では紀裕行)

 作画監督   :村中博美


あらすじ


 真夏にもかかわらず、サントーレ一帯は吹雪に覆われている。雪中パトロールをしていたゴーディアンがサントーレに戻ると、長官室に市民たちが詰めかけていた。相次ぐ異常気象や災害で市民の間には不安が漂っている。それを見たサオリは、京太郎の許可をもらい市民への説明会を開こうと提案する。

 市民たちはホールに集められ、花巻博士が壇上で解説を始めた。京太郎も映像を介して説明する。第2次ビッグカタストロフについて、ヴィクトールタウンとイクストロンの関係。そしてダイゴにイクストロンの注入が行われたこと。仲間の視線はダイゴに集まり、自分にイクストロンが埋め込まれていることを初めて断言されたダイゴは愕然とする。

 さらに花巻博士は、ダイゴの持ち帰った遺跡の碑文から驚くべきことが分かったと報告する。碑文は5万年前の物だった。そしてダイゴがカナード遺跡から持ち帰ったCD状の記録媒体によって、火星と木星の間で宇宙戦争があったこと、地球に逃げ延びたイクストローム星人が、将来のビッグカタストロフに備え原人に遺伝子改造を施し、自分たちの遺伝子を後世に残すと共に急激な進化を促したこと。ドクマ星人も同様に原人を改造したこと、が推測できるというのだ。

 一方、毒魔殿ではエリアスが毒魔大帝統にマドクターの歴史を明かすよう求めていた。カナードでアダムⅢが見せた5万年前の映像に、毒魔殿そっくりの宇宙船が映っていたのだ。エリアスは次の「太陽のすかし」はキンバリー山系のいずこかに4日後現れると予測し、その前に説明を聞きたいと申し出た。毒魔大帝統はその申し出に答え、エリアスはマドクターがドクマ星人の遺伝子を受け継ぐ者たちを生き残らせるために結成されたことを知る。毒魔大帝統はエリアスに「バラスとサクシダーと力を合わせマドクターを導け」とアノー号奪取を命ずる。

 サントーレでは、信じがたい出来事を聞かされた市民が興奮している。サオリはいたたまれず壇上に駆け上がり、アノー号を捜すジェロニモの報告を待つよう説得するが、興奮は収まらない。そこにダイゴとクリントが登壇した。ダイゴはサントーレ同盟のため各地を回っている竜馬を引き合いに出し、「自分だけが良けりゃそれでいいのか」と抗議する。サオリは「(避難民を)一人でも多く無事にこのサントーレに迎えられるよう、今の私たちにするべきことがあるはずです」と提案する。市民たちは拍手し、各自が自分たちが出来ることをしようと動き出した。パトロールに向かうダルフ、防寒具の準備をするピーチィーたち女性陣、薪を集めるチョコマたち。ダイゴはクリントを連れてプロテッサーでイクストロンの観察に向かった。

 『舞う雪だけが、何も知らぬげに美しく渦を巻いていた』(伊武雅之)


解 説


 今回は総集編兼SF設定の説明回で戦闘シーンはない。だが、話が綺麗にまとまってるため手抜きには見えない。タイトルの「大いなる遺産」はアノー号のこと。

 冒頭、サントーレ内部に帰還するゴーディアンのシーンは初めてだろう。入ったのが第1発進口か第2発進口かは不明。その後雪合戦するダイゴとピーチィは久しぶりに明るいシーン。

 厚着な市民たちに比べ、半袖のままのサオリやピーチィーたちは寒そう。本来ならフォローすべき所だが、設定変更が難しかったのだろう。

 抗議する市民たちの代表格の男は、前半で『闘士ゴーディアン』の作画監督をしていた宇田川一彦氏がモデルらしい。『ジ・アニメ』80年7月号『ヤマトよ永遠に』特集で紹介された写真に雰囲気が似ている。かなり大柄というのも宇田川氏の特徴である。声は伊武雅之だろうか。

 説明会ではメリーとジュリー、ポール、アニタ、メカコンのコック、ジーナ母子、シスターミッチェルとエンリコなど、過去のゲストキャラが久しぶりに登場。メリー夫人の服は以前の水色ではなく赤系。ジュリーの服も少し色が違う。ポールは相変わらず反発する役回り。アニタは青シャツだけではなくピンクシャツ姿も披露する。ドブロフとアンナの周りの席の市民が線画なのは間に合わなかったのだろうか。

 いつもは水槽越しで対話する京太郎だが、今回は市民に分かりやすくするためか、自分の顔をスクリーンに映している。ホールの座席が微妙に水平でないのが残念。

 ダイゴがカナード遺跡から持ち帰ったという記録媒体、前回には出ていない。

 人類進化図の映像、現生人類は葉っぱで急所を隠したダイゴ。改造シーンの原人の顔は京太郎に見える。

 毒魔大帝統、今回も「太陽のすかし」ノルマを二回果たす。

 クリントもダイゴの登壇シーンで久しぶりに活躍。

 今回は村中博美の一人原画。


こぼれ話


 『冒険王』1980年11月号掲載の桜多吾作コミカライズ第13話は、アニメ54話「暴かれたドグマ(正しくはドクマ)星間戦争の謎」、55話「大いなる遺産」がベース。ただしジェロニモ16世やロゼは出てこず、ダイゴたちが調査に当たる。エリアス側にバラスが合流するのも相違点。

 前回ラストで発見された遺跡から手がかりを得たダイゴたちは岩で隠された遺跡に入り、イクストローム星人のミイラを発見する。後を追うエリアスたちとダイゴたちは、残留思念で送られたメッセージを受け取る。ドクマ星人は太陽系の第五惑星(アニメでは火星)で暮らしていたがソコネスの小惑星、イクストロームと衝突して消滅、戦争の後地球に逃れた。同じく地球に逃れたイクストローム星人は地球の原人と同化し、地球人は進化していった。

 「移民船アーノオ(アノー)号を発見し、どちらが生き延びるか決着を付けよ」とイクストローム星人は双方に告げる。

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