1-54.54話「暴かれたドグマ星間戦争の謎」

 『アニメージュ』vol.29(1980年11月号)の放送予定欄で山本優は、「ゴーディアンの世界は、一連のタウン間戦争やビッグ・カタストロフの実体がはっきりしてきて、いよいよクライマックスへと昇りはじめます」と今後の展開を紹介している。

 「その大むかしに宇宙空間でなにがあったのか。それが、サントーレとマドクターの争いに、どうかかわっているのか。その秘密が、今後の作品の展開のゆくえをうらなうでしょう」

 それでは本編を見ていこう。


54話「暴かれたドグマ星間戦争の謎」 1980年10月12日


 脚本     :松崎健一

 演出     :渡部英雄

 作画監督   :杜福安


あらすじ


 「時知らずの暗黒の大密林で出会う沈黙の稲妻のように、今こそ大いなるドクマの力誇示するときである。行け、カナードの遺跡へ、解き明かせ太陽のすかしを」

 毒魔大帝統はエリアスをカナードに向かわせた。

 一方、ジェロニモ一行もカナードに向かっていたが、吹雪の中を馬で進むのは容易ではない。野営をしていると突然馬が暴れ出した。エリアスの乗ったホバー型マドピューター(仮称)が攻撃してきたのだ。ジェロニモはレッド・ノーズとロゼを馬で逃がし、仲間たちと弓で立ち向かう。作戦は成功し、マドピューターは破壊された。

 サントーレではダイゴが季節外れの雪に震えていた。花巻博士の話では、ウカペのイクストロンガスが太陽エネルギーを吸収し始めたのだという。先日の大竜巻でイクストロンが急成長しているためだ。ダイゴはロゼたちに思いをはせる。

 エリアスたちは徒歩でジェロニモたちを追いかけていた。部下のアルバが脱落しても先を急ぐエリアス。

 ジェロニモたちは巨大な雪の塊の前に立っていた。ここが「太陽のすかし」の指し示した場所だと判断したのだ。ジェロニモが着火剤の着いた矢を雪山に放つと雪が解け、下の岩が現れた。そこには横たわる巨大な人型の絵が描かれていた。遠方のエリアスからもよく見える。エリアスは闘獣士ドードーの出動を要請した。

 闘獣士の出動をキャッチしたサオリは、ダイゴに出動を要請する。ゴーディアン三体で向かうダイゴ。ロゼたちのいる岩の前に立つと、突然ゴーディアンと岩が光り始めた。イクストロンが反応しているのだ。ゴーディアンから光線が岩に発射され、崩れた岩の中から宇宙艇が姿を現した。宇宙艇の入口が開くのを見てダイゴたちは内部に侵入した。エリアスも後を付ける。

 宇宙艇の突き当たりはブリッジになっていた。中には、岩に描かれたのと同じ姿の人型生物がいた。生物は「良く来た、我が良き子孫たちよ」とテレパシーで呼びかけ、突然室内が立体映像で包まれる。ダイゴたちと陰で見守るエリアスの前で始まったのは、壮大な過去の物語だった。

 人型生物はソコネスの小惑星、イクストローム星人だった。ソコネスは太陽系の周りを不定周期で回っている。五万年前に火星と木星に異常接近し、イクストロームは凍り付いた。生き残りは宇宙へ脱出したが、火星にはドクマ星人の文明が築かれていた。ドクマ星人とイクストローム星人の間で宇宙戦争が勃発し、イクストローム星人は地球へ逃げ込んだ。だが、ドクマ星人の追撃で宇宙艇は撃墜され、この場所に不時着したのだ。来るべきビッグカタストロフに備えるため、「移民船アノー号を求めよ」とイクストローム星人アダムスリーは伝える。

 外に出たダイゴたちは、ゴーディアンから宇宙艇へと光線が発射され、宇宙艇から「太陽のすかし」が延びるのを見た。そこに闘獣士ドードーが襲ってくる。宇宙艇から脱出したエリアスたちにも応援部隊が到着した。ドードーの光線をダイゴがよけたところ、宇宙艇に命中し爆発してしまう。ダイゴはジェロニモたちを「太陽のすかし」の示す先へ出発させ、必殺白光剣でドードーを倒す。

 『ジェロニモたちの行くところ、次々と太陽のすかしは謎のヴェールを脱いでいく。ウカペはビッグカタストロフを煽り、そして、人類救出計画プロジェクトXは新たな段階を迎えた。人類文明に隠された種を配したイクストローム星人、その彼らが残した移民船アノー号とは』(伊武雅之)


解 説


 今回はタイトル前に毒魔大帝統のアバンが入る。毒魔殿全景をバックに変貌したウカペが映るが、大帝統の正体へのヒントにも見える。

 タイトル、『アニメージュ』では「暴かれた毒魔星間戦争の謎」となってるので、シナリオのタイトルは違っていた可能性がある。本編ではEDの「ドグマ大帝統」と同じく「ドグマ」だが、安原義人は「ドクマ」と朗読。ちなみにニコニコ動画の配信タイトルでは「ドクマ」に直されていた。

 ホバー型マドピューター(仮称)は新規デザインだろう。他にも宇宙艇やドクマ星の戦艦等、河森正治の新規デザインが随所に見られる。

 ジェロニモの仲間たち、子供インディアンはリストラされた模様で出てこない。彼らの使う矢は先端に爆薬や着火剤が付いているらしい。

 ジェロニモがレッド・ノーズの甥だと分かる。「カレー食いたい」と10話のネタを引っ張るシーンで場を和ませてくれる。

 ジェロニモが矢を放って岩の下の絵が現れるシーンの音楽、サウンドトラックには入ってないので流用音源だと思われる。

 名前は出ていないが毒魔殿にサイマドック(32話準拠)が。声は増岡弘だと思われる。ここの毒魔大帝統の台詞、エコーがかかりすぎて聞き取りづらい。

 イクストローム星人アダムⅢの声は北村弘一だと思われる。名前の由来は「アダムスキー」と「始祖者」、及び後で明かされる自身の設定に引っかけたものだろう。第一次ビッグカタストロフ回想シーンで14話のバンクを使用。

 ドードーとの戦闘で久しぶりにシャインシェルドからのビームを使用。ここでダイゴがよけなかったら宇宙艇も無事だったかもしれない。

 「アノー号」は実際の台詞だと「アーノー号」に聞こえるが、これは録音台本では「ANOH号」と綴られているからである。「ノアの箱舟」の綴り「NOAH」のもじりだろう。河森正治の設定イラストでも確認できる。シナリオでは「アノー号」表記なのになぜそうしたのかは不明。本編の回想シーンではカムフラージュされた姿で登場している。


今回の名言


 「私はアダムⅢ、この星に文明の種を配したるもの」(アダムⅢ)


こぼれ話


 今回のイクストローム星人アダムⅢが話す太陽系先史文明との星間戦争や、次回に明かされる人類進化史のミッシングリンク等のエピソードは、1977年に発売されたジェイムズ・P・ホーガンのSF小説『星を継ぐもの』、及び続編の『ガニメデの優しい巨人』の影響が強く見られる。星間戦争が「5万年前」というのも『星を継ぐもの』由来であろう。日本では1980年5月23日に『星を継ぐもの』、1981年7月31日に『ガニメデの優しい巨人』発売なので、松崎健一始めスタッフは原書で読んでいた可能性が高い。

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