1-53.53話「巨大文明タウンの壊滅」

 今回はサントーレの使者としての竜馬活躍編であり、マドクターの世界規模での暗躍が分かる回である。そして終盤のレギュラーキャラ登場回でもある。それではシナリオを参考に見ていこう。


53話「巨大文明タウンの壊滅」 1980年10月5日


 脚本     :山崎晴哉

 演出     :石田昌平

 (『アニメージュ』『ジ・アニメ』1980年10月号では「時野昌平」、『アニメージュ』1980年12月号では「石田正平」)

 作画監督   :松井栄


あらすじ


 ウカペの影響は止まるところを知らない。南洋ではハリケーンが荒れ狂い、高波がリゾートホテルを飲み込んでいく。

 サントーレでは花巻博士がオロンケ密林から持ち帰った石碑の解析に成功したと聞き、ダイゴが対話室に駆け込んでいた。赤外線で解析したところ、石碑の絵文字の下に別のメッセージがあったのだ。花巻博士は以前京太郎が入手した遺跡のかけらが手がかりになると予想していた。

 そのころ、竜馬はヨークタウンのグリーン市長の紹介で、かつての南フランスにあるヨーロッパ共同体タウン(ECT)のシュワイツ大統領とサントーレ同盟の交渉に及んでいた。だが大統領は全く取り合おうとしない。追い出された竜馬を慰めたのは大統領の娘シモーヌと息子ニッキーだった。二人の話では大統領はタウンの科学力を過信しており、愛人のステラにぞっこんなのだという。そこに噂のステラが現れた。派手な美女で、シモーヌたちにも優しく応対している。ステラはそのまま執務室に消えた。

 毒魔殿では、サクシダーが毒魔黙示録60項(シナリオでは67ページの86)を読み上げていた。潜伏している影のマドクター部隊の一斉蜂起について書かれている。毒魔大帝統は手始めにECT壊滅を指示し、「出来るだけ多くを殺せ」と命じた。ECTには、サクシダーの右腕とも言える「キル」が潜伏している。

 竜馬はシモーヌに案内され、恋人のチェスター助教授の研究室にやってきた。チェスターは大統領の助手を務めていたこともある天才科学者だ。チェスターはマドクターやビッグカタストロフについて真剣に案じており、竜馬の話も受け入れた。

 その夜、パーティでシュワイツ大統領とステラの婚約が発表された。そこにシモーヌが駆け込んできた。竜馬とチェスターを伴っている。竜馬は客に向けて演説するが誰も真剣に取り合ってくれない。チェスターがマイクを取った時、外で爆発音がした。マドクターの蜂起が始まったのだ。

 事情が分からず慌てる大統領の傍らで、ステラの口元がほくそ笑む。ステラは真実を告げ「シュワイツ、かわいそうな人」と言うと、ドレスを投げ捨てた。彼女こそが「キル」だったのだ。突入したマドクター兵が要人たちを人質に取っている。キルは彼女を止めようとしたシュワイツに思わず発砲してしまう。くずおれるシュワイツ。キルの標的は竜馬に向けられるが、パチンコ玉がキルの腕に命中する。上のテラスにいたニッキーが撃ったのだ。竜馬とチェスターはマドクター兵を倒し、負傷したシュワイツを連れたシモーヌと脱出する。

 空にはマドクターの爆撃機が編隊を組んで飛んできている。なおも強気のシュワイツだが、ECTに反撃の気配はない。マドクターに制圧されているのだ。竜馬は通信室の場所をニッキーに案内してもらう。

 通信室には先客がいた。キルたちがサクシダーから指令を受けていたのだ。竜馬はドアが開いた拍子にマドクター兵と入れ違いに飛び込み、キルを剣の柄の当て身で気絶させる。そのままサントーレに通信を始めた竜馬。そこで意識を取り戻したキルが発砲した。

 執務室に運び込まれたシュワイツの所にキルが現れた。続けて入ってきたのはニッキーと竜馬。キルの弾は通信機に当たって無事だったのだ。シュワイツはなおもキルを説得しようとするが、キルは煙幕を張って脱出した。

 市内ではマドクターの攻撃がなおも続いていた。さらにウカペの反応も激しくなり、海は荒れ狂っていた。ついに官邸も沈み始める。竜馬が死を覚悟したとき、天井に穴が開いた。ゴーディアンが到着したのだ。すくい上げた竜馬たちを塔に逃がす。

 初めて見る生のゴーディアンに驚くキル。闘獣士こそないが、マドピューターを密集させて攻撃させる。デリンガーになってもプロテッサーになっても群がってくるマドピューターに苦戦するゴーディアン。ツンドラアタックでマドピューターをなぎ倒し、緑光剣でキルの司令機を切り裂く。キルは戦闘機で脱出するが、プロテッサーの投げつけた緑光剣で撃墜される。かろうじて脱出したキルに、シュワイツは「ステラ」と呼びかける。キルは「殺し損ねたわ」とつぶやき、絶命する。キルを抱きしめるシュワイツ。

 戦いは終わったが、ウカペの引き起こした暴風雨とマドクターの攻撃で、ECTは壊滅状態だ。突如、塔に亀裂が入った。シュワイツはキルを抱きあげたまま、「お前たちは私のような間違いを二度と犯すな」と言い残し、瓦礫の中に消えた。竜馬たちを手に持ったゴーディアンが飛び立つ。その背後で、ECTは津波に飲まれていった。


解 説


 今回はメカコン勢の出番はなし。

 遺跡のレリーフ内部のイメージ、シナリオでは「アレシボ通信文」を例に挙げている。1974年にアレシボ電波望遠鏡から宇宙人へ送られたメッセージである。

 今回手持ちのシナリオで初めて「花巻博士」という京太郎の台詞があり、DVDの設定資料の漢字が正しいことが確認できた。

 ECTでも普通に会話している竜馬だが、公用語設定はあるのだろうか。

 ゲストの声優、シュワイツはたてかべ和也、シモーヌは鈴木れい子、ニッキーは井上瑤、キルは吉田理保子、チェスターは福士秀樹だろうか。

 シモーヌは父はECTを苦労して作り上げたこと、ニッキーが父を慕っていることなどを語るが、シナリオにはないフォローである。

 チェスターの研究室のシーン、チェスターが眼鏡のガラスを拭いているが弦が逆向きである。ちなみにパーティ会場では眼鏡をかけていない。コンタクトなのだろうか。ここでチェスターが「マドクターも恐ろしいし、大きな異変も必ずくる」と言うが、シナリオではシモーヌの台詞だった。

 パーティーのシーン以降では一部に青マスクがかかっている。これは暗い画面を表現するための「パラ」という演出らしい。昔の実写映画では、パラフィン紙を使って光を遮っていたことからきている。

 正体がばれた時のステラの演出がすごすぎる。乱舞するステラ、くるくる回るステラ、バックに流れる女性スキャット(流用音源?)。謎演出の再来である。これだけやられたらイタリア版サブタイトルも「ステラ」になるというもの。

 ちなみに本編ではこのタイミングでAパート終了だったが、シナリオではパーティ前のシーンでAパート終了。本編ではカットされたシーンが多いせいだろう。その代わりステラの正体ばれのシーンが増量されたようだ。キルのコスチュームが明らかにドレスの下から見えていたタイツと違うというのは突っ込んではいけない。

 ニッキーがパチンコでキルを打って竜馬を助けるシーン、シナリオではカットされた冒頭にパチンコで竜馬を脅かすシーンがあり、伏線が張ってあった。

 マドクターの爆撃機は初登場のメカだろうか。シナリオでは「大型ジャイロホバー」と書かれていた。

 通信室に飛び込むときフェイントをかける竜馬はシナリオにはない。

 本編で分かりにくかった通信室のシーン、シナリオでは竜馬に気絶させられたキルは部下たちによって運び去られ、執務室に乗り込むシーンはない。撃ち合いで破壊された通信機をチェスターが修理するシーンがある。

 ゴーディアンとマドピューター群との戦闘、シナリオでは竜馬たちを助けるシーンはなく、到着するとすぐプロテッサーになって戦闘する。ガービンやデリンガーの戦闘もある本編の方が天丼効果もあって面白いと思う。

 今回は14話のビッグカタストロフバンクを別シーンで二回使用。時間調整のためだろうか。

 次回予告、安原義人は「ドクマ」と読んでいるがテロップでは「ドグマ」。『ドグマ大帝統』に合わせたのだろうが、漢字では『毒魔』なのだから合わせて欲しかった。


 今回のシナリオは本編と大筋はほぼ同じだが、全体の構成はかなり入れ替わっている。その中でも重要な相違点は、チェスターに助教授の肩書きがないこと、ゴーディアンがシモーヌたちと一緒にホバーに載せた子どもたちを運んでいること、ECTには原子炉があり、津波で破壊されたことが壊滅の止めになったこと(本編のキノコ雲にその名残がある)。

 また、キルとシュワイツの関係はシナリオと本編で大きく異なっている。シュワイツがパーティー会場でキルを止めようとして撃たれるシーン、シナリオでは「よくも騙したな」とキルに怒っている。執務室でのキルの説得シーンもシナリオにはない。「お前たちは降伏しろ。命だけは助けてやる」というキルも、シナリオでは「他の人類はマドクターにとって無用の長物」とマドクターの優生思想に染まっている台詞がある。

 本編では描かれたシュワイツがキルを看取るシーン、「お前たちは私のような間違いを二度と犯すな」という台詞もない。科学技術を過信してECTと共に最後を迎えるという雰囲気だ。

 キルのトライアングル型のイヤリングは通信機になっていたが、本編ではフィーチャーされなかった。

 サクシダーの殺害命令をかいくぐって生き残ったチェスターは、最終盤で重要キャラとしてレギュラー入りすることになる。


今回の名言


 「マドクターだけが生き残ればよい。他の人類は無用の長物」(エリアス)

 「皆殺しにしろ。特に科学者どもは一人たりとも生かしておくでない」(サクシダー)


 「おいはオナゴは斬らんぜよ」(竜馬)本編のみ


こぼれ話


 『アニメージュ』vol.29(1980年11月号)の放送予定欄では、「私の一番好きだったアニメ」というお題に、山本優が東映動画の映画『白蛇伝』をあげ、「みんながんばっているんだろうけど『白蛇伝』のような"たっぷり、じっくり"という作品は驚くほど少ないのが現状。どうもフィルムのダイゴ味が希薄で、小技になったんじゃないでしょうか」と「ダイゴ」に引っかけて語っている。

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