1-46.46話「サントーレの花嫁」

 今回の脚本、テロップでは山崎晴哉と表示しているが、曽田博久が正しいことを入手したシナリオで確認。『アニメージュ』1980年9月号及び、フォローの80年11月号では曽田博久と正しく表記(『ジ・アニメ』80年9月号では「増」田博久と誤植)。

 曽田回がここに入らないとローテーション的におかしいし、今回の伏線が次の曽田回に出てくるので間違いない。それでは見ていこう。


46話「サントーレの花嫁」 1980年8月17日


 脚本     :曽田博久(テロップでは山崎晴哉と誤植)

 演出     :秋山勝仁

 作画監督   :杜福安

(『アニメージュ』1980年9月号では松井栄)


あらすじ


 食糧確保のため湖に釣りに出たダイゴたち。キャシーは編み物をするダルフを見ながら幸せな一時を感じていた。浮きが沈んだので慌てて引き上げると、かかっていたのは竜馬のふんどしだった。「返して欲しいぜよ、おいの赤フン」と全裸で水中に立つ竜馬の姿に笑うダルフ。

 その時、突然軍隊を引き連れた老軍人が現れた。老軍人はヨークタウンのスミス将軍と名乗り、キャシーの顔を見ると自分の孫だと言い出した。訳が分からないキャシー。スミスはキャシーの母方の祖父で、母親が駆け落ちしたため最近まで居所が分からなかったのだ。スミスはサントーレでアンノンジーに引き合わせるようダイゴたちに命ずる。

 その頃、スミス将軍の動きを掴んだバラスは、エリアスとサクシダーに過去の戦いを分析するよう命ずる。

「戦いはその指揮官の裸の姿を余すところなくさらけ出す物だ。過去の栄光に酔った老いぼれのな」

 サントーレでスミス将軍は自分たちは十字軍だと言い、ヨークタウンへ避難するよう命じる。動揺する市民たち。スミスはサントーレを自分たちの指揮下に置くと言い、アンノンジーを始め市民たちの猛抗議にあう。戦いは悪に対して正しい意志を見せることだというアンノンジーと、戦いは軍事力で示すというスミスの主張は全く相容れない。

 スミスはキャシーだけでも避難して欲しいと説得するが、看護婦の仕事があると断られる。スミスはその態度の裏に恋人がいるとにらみ、恋人探しを始める。先ずはダイゴに襲いかかるが、ピーチィーが抗議するのを見て見込み違いと分かる。その後もバリー、竜馬と手当たり次第にアタックするが外れ。見かねたキャシーが恋人はダルフだと告白するが、スミスは編み物をするような男は範疇外だった。気圧されているダルフに発破をかけるダイゴとピーチィー。勇気を出したダルフは、「おら、キャシーと結婚します」と言い放つ。照れるキャシー。スミスは「キャシーにふさわしい男は戦場でもっとも勇敢な男でなければならんのだ」と聞く耳を持たない。

 スミスにはキャシーの婿として心に決めた男がいた。副官のカーペンター大尉だ。スミスは彼を特命部隊の隊長に任じ、マドクター攻撃のための秘策、Z作戦を開始する。しかし、マドクター側もエリアスたちの分析でZ作戦への対策を取っていた。そうとも知らず出撃するヨークタウン軍。

 一方、竜馬は独力でZ作戦の内容を掴みダイゴたちに報告する。Z作戦とは逃げる敵の中に敵に変装した部隊を送り込むことだったのだ。竜馬はマドクターがあっさり退いたのを見てマドクターの罠だと察する。予感は的中し、地中から突然「古代闘士型闘獣士アルゴン(シナリオより)」が現れた。部隊はアルゴンの剣の一閃で倒れ、アルゴンに立ち向かったカーペンターは目から出る光線で蒸発する。勝ち誇るバラスに、毒魔大帝統は黙示録第59章にある「作戦返し」を命ずる。トウマドック(シナリオより)が指揮を執り、ヨークタウン軍の制服を身につけて潜入する。

 命からがら戻ってきた兵士たちはサントーレの入口で呼びかけるが、竜馬は「ヨークタウン軍と一緒にマドクターが紛れ込んだらサントーレは終わりぜよ」と開けさせない。祖父が心配なキャシーはダルフと共に隠し出口から外に出る。進退窮まって突撃したスミスはマドクターとの戦闘で負傷していた。気がつくと目の前にはダルフが立ち応戦している。キャシーがスミスを助けて後退する。闘獣士にはゴーディアンの出番だ。アルゴンにシャインシェルドと白光剣で対抗するゴーディアン。

 戦闘の最中、ダルフはヨークタウン軍の一団がサントーレへ進むのを見る。その中のリーダー格(トウマドック)の男のブーツがマドクター兵士の物だと見抜いたダルフは「マドクターだぞ」と大声で呼ばわり、侵入を阻止する。アルゴンもゴーディアンの必殺白光剣で倒された。

 スミスはメカコンと共に戦う市民、負傷兵を手当てするキャシーたち女性陣を見て、自分の考えが間違っていたことを悟り、アンノンジーに話しかける。

 戦闘後、サントーレではアンノンジーが神父役となってダルフとキャシーの結婚式が行われたが、スミス将軍はアンノンジーに指輪を託し、部下たちとヨークタウンに戻っていった。その指輪は、駆け落ちした娘への贈り物だったのだ。

 『サントーレに、初めてウェディングドレスが舞った。そしてまた、一つの団結がサントーレに生まれた。しかし、いずれ来るであろう大異変をダイゴ達は知るよしもなかった』(伊武雅之)


解 説


 シナリオ原題は「サン・トーレの花嫁」。

 冒頭の釣りシーン、シナリオではダイゴは水泳パンツ姿で現れるので、竜馬と一緒に池に入っていたのかもしれない。

 スミス将軍の声は飯塚昭三、カーペンター大尉の声はたてかべ和也だと思われる。名字的には鍛冶屋と大工である。

 毒魔殿、サイマドックとトウマドックは32話準拠で表記。

 スミス将軍とサントーレ市民のやりとり、シナリオでは声を上げた女性は夫がヴィクトールタウンに捕まっていると訴えた。それを受けての「今回の名言」の台詞になる。

 アンノンジーの台詞も、シナリオでは「勇気を持って、愛を信じて生きていくか」と少し違っている。今回のテーマからすると「愛」という言葉は大事だと思うので入れて欲しかった。

 ダルフは親のない子のためにセーターを編んでいるとキャシー。いい話だ。怒るスミス、シナリオでは「よりによりって一番カスと! 」と更にひどいことを言っている。

 アンナの声が今回はアニタの小宮和枝。シナリオには「アニタ」と書かれていたが、絵はアンナというややこしいことになっている。シーン的にはナースのアンナが正しいと思うのでシナリオの誤記だろうか。

 毒魔大帝統の「老いぼれの手の内、読めたか」の台詞、シナリオではバラス。

 カーペンターが倒されたのを見たスミス、本編では「カーペンター大尉が、カーペンター大尉が」と言っているが、シナリオでは「カーペンター大尉が、カーペンター君が」となっており、動揺ぶりを現している。

 毒魔大帝統の黙示録シーン、シナリオでは勝利に酔うバラスに「ヨークタウン軍を蹴散らすぐらいで満足してはなるまいぞ」と釘を刺している。「太陽のスカシ、太陽のスカシ」も本編ではカット。

 トウマドックがブーツの色でマドクターだとばれるシーン、直前のシーンではヨークタウン軍のブーツになっている。そこは間違えてはまずい所だろう。

 ゴーディアン対アルゴンはシナリオに細かい戦闘描写がない。シャインシェルドからビーム砲が出るのはガトリングと間違えたのだろうか。

 止めの「必殺白光剣」がまた「赤光剣」に聞こえるが、シナリオでも

『ゴーディアンGの必殺技が決まる。

「必殺赤光剣」』

と書かれていたのでシナリオの誤記である。

 結婚式の行われた場所はシナリオでは「大ホール」。本編では鐘楼のある教会風の建物である。スミスのアンノンジーへ残した言葉、シナリオでは本編の台詞に続けて「そしてサン・トーレの勇気ある人々のすべてにも、どんなに遠く離れていても祈り続けると誓った」と続く。なくなったのは前半で女性市民とのやりとりがカットされた影響だろうか。

 結婚式後のダンスパーティではバリーとサオリがパートナーに。

 ラストのナレーションはシナリオにはなし。


 今回演出の秋山勝仁は、スミス将軍の「手を挙げろ」からの俯瞰シーンで赤フンを着ける竜馬、恋人はダルフだとスミスに告白するシーンのぼかしの使い方、ゴーディアン対アルゴンの剣闘士スタイルの戦闘シーン等、後年監督として大成する片鱗が随所に見受けられる。


今回の名言


「しかしあなたにホバー戦車が操縦できるかな? ビーム砲が撃てるかな? 」(スミス)

「(かぶり振り)でも、祈ることはできます」(女)シナリオのみ


「我々の戦いは軍事力ではない。悪に対して、人間がいかに正しく、勇気を持って生きていくかを示すものだ」(アンノンジー)


こぼれ話


 『アニメージュ』vol,27(1980年9月号)では、放送予定欄で山本優が今回と前回の内容を紹介し、「たとえ戦火のさなかでも"どっこいみんな生きている"という証拠です」とまとめている。


 『冒険王』80年9月号掲載のコミカライズ第11話は桜多吾作のオリジナル。

 ダイゴがゴーディアンの操縦者だと分かったマドクターはスナイパーを送り込んだが、ダイゴやダルフ(コミカライズでは初期誤設定の「ダルク」表記)、ピーチィーにことごとく倒されていた。第2のビックカタストロフの予兆である地震も頻繁に起こっている。

 ホバーに乗っていたダイゴはアユカという女性とぶつかり、怪我させてしまう。見舞いに行ったダイゴは二人きりの空間で迫られ、「年上との青い体験だ……。ええんじゃろな冒険王でこんなことして……」とデレデレ。だが、アユカの正体はエリアスの開発したプラスチック皮膚で化けたマドクターだった。間一髪逃げ出したダイゴはピーチィに助けを求めるが、マドクターもピーチィーに化けてしまう。「作者の多少のデッサン狂いの他は全く同じ」と悩むダイゴだが、下着姿で争う二人を見て「ピーチィーのはだかが見られるぞ」と呼ばわり、恥じらった方を倒す。

 桜多吾作がダイゴの作者ディスりにコマ外からトンカチで突っ込みを入れている。

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