1-45.45話「イクストロン謎のパワー」

 今回は『闘士ゴーディアン』を代表する話の一つだと私は思う。田辺由憲のキレのある戦闘及びコミカルな人物作画、それぞれの特技を生かして奮闘するサントーレ隊の人々の魅力が堪能できる。一方科学担当の松崎健一らしく、シナリオの裏テーマはエリアスのイクストロン研究である。

 それではシナリオと録音台本を参考に見ていこう。


45話「イクストロン謎のパワー」 1980年8月10日


 脚本     :松崎健一

 演出     :紀裕行

 作画監督   :田辺由憲


あらすじ


 サントーレでは衣類と食糧の不足が深刻になっていた。竜馬はマクセルタウンからの買い付けを提案する。マクセルタウンは悪徳商法でのし上がったタウンということでアンノンジーは反対するが、竜馬が交渉で何とかするということで了承する。

 竜馬は買い出しに女子部隊を連れていこうとするが、ロゼを山猿呼ばわりしたために早速キャットファイト。男性陣はその迫力におののくばかり。こんな部隊のリーダーを任されたのはブラスター・バックだ。

 その頃、エリアスはヴィクトールタウン地下の調査で、謎の動く物質を掘り当てていた。「もしも私の勘に狂いがなければ、マドクターに永遠の栄光が訪れるだろう」と興奮するエリアス。

 サントーレ本隊はデリンガーとガービンをサントーレの入口に囮として置き、ダイゴはプロテッサーで買い出し部隊に同行する。マドクターの見張りが囮に気を取られているうちに買い出しを済ませようという作戦だ。

 サクシダーからの報告で、サントーレ隊がマクセルタウンに買い出しに来たという情報を掴んだ毒魔大帝統は、バラスに闘獣士ノブゼルを出撃させ、マクセルタウンもろとも殲滅するよう命じる。今回の指揮はペイマドック(ホクマドック)。もちろんサントーレに攻撃を加え足止めさせることも忘れない。

 そうとは知らない買い出し部隊は、マクセルタウン市長との交渉に臨んでいた。案の定、市長はサントーレ隊が提示した金額の二倍、5000万ボルを要求してきた。「このタコ」と市長に詰め寄るダイゴだがこれでは埒が明かない。竜馬が交渉役をバトンタッチする。

 竜馬の指摘は、悪徳商法のやり過ぎで最近物資が売れなくなっているということ。図星を指された市長は劣勢になる。そこにマドクター襲撃の一報が。竜馬は交渉を打ち切って帰ろうとバックに言うが、市長は商業都市のマクセルタウンには軍備がないのでマドクターを撃退して欲しいと泣きつく。竜馬はここぞとばかりに1000万ボルに値切り、「背に腹は代えられんじゃろ」とほくそ笑んだ。

 迎撃に向かったバックたちだが、プロテッサーでは力不足ということで、ダイゴはゴーディアンに嵌入するためプロテッサーの俊足でサントーレに帰還する。一方、バックは竜馬のセットした爆弾で窮地を突破しようとするが、買い出しに行った女子部隊がまだ戻ってこない。そして戻ってきた彼女らは買ったばかりのドレス姿で戦闘できる状況ではなかった。「ロゼ、お前を頼りにしてるぜ」と言うバックに「あたい、頑張る」と殊勝なロゼだった。

 サントーレに戻ったダイゴは攻撃を無視してガービンに嵌入し、マクセルタウンに向かおうとするが、ノブゼルの右手の鎖分銅に引きずり下ろされる。時間がないゴーディアンはノブゼルの左手の鎌を必殺白光剣で切り落とすと、止めに白光剣を投げつけて倒した。

 ゴーディアンが戻る間にもマクセルタウンの戦いは続いていた。バックに後れを取らず戦場を駆けるロゼを見て女子部隊も発憤。ドレスの裾を引き裂いて奮戦する。竜馬の仕掛けた爆発で地上部隊は片付いたが、上空からペイマドックの司令船が狙ってくる。その時上空で爆発が。ゴーディアンが間一髪駆けつけたのだ。ペイマドックは小型船で脱出していった。

 ペイマドックの失敗は毒魔大帝統に伝えられたが、エリアスがイクストロンを発見したことで上機嫌な大帝統にはどうでもいいことだった。

 サントーレ隊の買い付けも無事終わり、残ったのはマクセルタウン市長の呪詛の声のみだった。


解 説


 ロゼの胸が見えすぎてハラハラする回。井上瑤も録音台本にはないアドリブを積極的に入れている。前回さんざんだった紀裕行演出だが、作画の田辺由憲との相性が良かったのか、今回は場を盛り上げる方向に向かっている。

 市長の弱みにつけ込んで値切る竜馬や、ロゼと女子部隊の女の戦いに振り回されるバリーやバック等、幕間回だからこその自由さ。

 今回活躍する女子部隊、シナリオでは「WDC(ウーマン・ディフェンス・チーム)」と表記。19話の松崎健一回でも同じ表記が使われている。録音台本では「婦人部隊」。本編ではいつも通り「女子部隊」である。

 シナリオと録音台本では、バックがロゼと女子隊員のケンカを終わらせたのを見て感心するダイゴと竜馬の台詞があったがカット。逆に目が点になるバリーはシナリオ・録音台本にはない。

 イクストロン発見時のエリアスの台詞、シナリオでは「このエネルギーをもってマドクターに永遠とわの栄光が訪れる!」と断言している。

 シナリオではサントーレの動きを探るマドクター斥候を倒して敵の目を引きつけている間に買い出し部隊が出撃する。この部隊の大型輸送車についてはシナリオに(設定あり#36に)と注釈があったが、36話本編で見つけることはできなかった。

 イクストロンが容器を溶かすのを見たエリアスが「特殊ガラスの容器を」と驚くが、シナリオと録音台本では「特殊プラスチック」だった。変更された理由は不明。

 本編では交渉中の通信でマクセル・タウンにスパイが潜入していることが伝えられるが、シナリオや録音台本ではタウン到着時に竜馬がスパイに気づくシーンがあった。この前振りがあったからこそ竜馬は強気で用心棒の交渉をできたわけで、本編でカットされたのは残念。

 ホクマドックが今回は「ペイマドック」と呼ばれている。その理屈で行くなら「サイマドック」も「シャーマドック」だと思うのだが。録音台本では「ペイマドック」だが、シナリオでは「ホクマドック」と正しく書かれていたので絵コンテ以降のミスだろう。今回も声は伊武雅之だと思われる。

 今回の闘獣士、『スーパーロボットマテリアル』では「ノムゼル」と表記。シナリオ及び録音台本では「ノブゼル」表記。シナリオでは二体あり、それぞれサントーレとマクセル・タウンを襲っていた。両方ともゴーディアンに倒される。

 買い物を許可したバックが女子隊員にキスマークをつけられるシーン、交渉に向かうロゼを見送る竜馬の台詞、戦闘に張り切るバックをからかうダイゴのやりとりもシナリオにはない。本編では全体的にコミカル度が増している。

 マクセルタウン市長との交渉、シナリオでは4500万ボルを2000万ボルに値切っている。本編の方が阿漕。

 ロゼと張り合い、戦闘時にドレスを真っ先に破く女子隊員、シナリオでは「ティオレ」という名前が付けられていた。録音台本では名前なし。

 シナリオではサントーレに戻る途中にマドクターに襲われたプロテッサーはツンドラ・ダッシュで回避するが、本編ではカット。

 ゴーディアン対ノブゼル戦では必殺白光剣の投げ付けという遠距離対策を披露。ゴーディアンが普通に戦っているだけで良回というのも悲しいが、今までがひどすぎたのだ。

 シナリオではデュークスクリューや赤光剣、ガービン・フッカーを使っているが、本編での白光剣投げつけ、フットミサイルは使っていない。

 シナリオでは後半にもエリアスがイクストロンを解析するシーンがあり、特定の波長で反応が増大することを突き止めているが、その代償に研究室は破壊される。それを受けた伊武雅之のナレーションは本編とは全く違っている。録音台本には「N」のみ。

『エリアスは、イクストロンの秘めるはかりがたいエネルギーの謎にただ言葉もなかった。小さな破片でさえ、この威力。そのイクストロンの全貌と人類救出計画プロジェクトXの大きさに、今さらながら身ぶるいした』


今回の名言


 「女子供の世話は運命だとあきらめております」(バック)


 「偉いぞロゼ、どんなドレスよりもお前の服が最高だ」(バック)

 「バック隊長、あんたならあたいのお兄ちゃんにしてあげる」(ロゼ)


 「バラス、いつまでも大きな顔はさせぬ。この力の秘密を解き明したあかつきには」(エリアス)シナリオのみ

 「我が身を滅ぼそうとも、マドクターは不滅だ」(エリアス)シナリオのみ


こぼれ話


 『ジ・アニメ』Vol.10(1980年9月号)では、「人気メカ比較紹介」という記事で、放送中のロボットアニメの機体スペックが紹介されている。『闘士ゴーディアン』からはプロテッサー、デリンガー、ガービン三体が取り上げられている。攻撃力の説明が具体的なのが面白い。以下抜粋する。


プロテッサー

体長…2.5m 重量…5t 速度…マッハ5 戦闘時には100km/時 馬力…一万馬力

(ゴーディアン・ボムの)破壊力はナパーム弾10箇分。破壊した後はアトミック・ジャイロ装置が働いてブーメラン状に戻ってくる。ダッシュ力は瞬時にして70km/時からスタートすることができる。


デリンガー

体長…5m 重量…5000t(500tの誤りだと思われる) 速度…マッハ3 馬力…10万馬力

破壊力は、タンカーを四方に立てて、0.4秒間のうちに粉みじんに砕くことができる。原子力剣、電子ヌンチャク、槍など多様にこなす。


ガービン

体長…15m 重量…5000t 速度…マッハ15 馬力…20万馬力

パンチ力はエンタープライズ級の原子力タンカーを倒してしまう。撃突力は80mの鉄鋼板を0.2秒でぶち破る。脚部でふみつける威力は4tトラック30台分を0.5秒でスクラップ化する。

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