1-44.44話「戦火のなかのうぶ声」

 今回からしばらく、サントーレの人々の日々と、周辺のタウンとの協力関係を築こうとする試みが同時進行で描かれる。二つに共通するのは「生きるための戦い」。次の大イベントが始まるまでの幕間劇的な気楽さもあり、サントーレ篇で一番バラエティに富んだストーリーが楽しめる。

 今回は録音台本を参考に見ていこう。


44話「戦火のなかのうぶ声」 1980年8月3日


 脚本     :山崎晴哉

 演出     :二階堂主水

 作画監督   :松井栄

『ジ・アニメ』Vol.9(1980年8月号)では演出:二階堂敏行、作画監督:木村正人


あらすじ


 第二のビッグ・カタストロフに気づいているのは、サントーレやマドクター首脳陣だけではなかった。タイガータウン市長タイガーは脱出用宇宙船の燃料であるネオヘリウランを奪うため、隣のレインボータウンに進撃した。レインボータウン市長モントフはブレヒト将軍に迎撃を命ずる。両市の戦闘は持久戦の様相を呈していた。

 その頃、サントーレではアンナやキャシーたち女性陣が身重のジーナのお産を手伝っていた。ダイゴとダルフ、ピーチィは長官室に向かう途中でジーナを運ぶところに偶然ぶつかり、ジーナの夫がヴィクトール・タウンの戦いで戦死したこと、ジーナは心臓に持病があり、出産は難しいと言われていることを知ってしまう。どうしても生みたいと主張するジーナに、ダイゴは「その意気だ。何事もファイト、ファイト、ファイトだ」と励ます。

 長官室でダイゴたちは、タイガータウンとレインボータウンの戦いをマドクターが利用し、サントーレを孤立させようとしているという竜馬の話を聞く。京太郎も『全てのタウンはサントーレを中心に一致団結せねばならない』と言っていると聞き、ダイゴたちは戦争を止めさせるために両タウンへ向かった。

 一方毒魔大帝統は、サクシダーをタイガータウンに派遣し、闘獣士ザイクロンをエリアスに作らせた。サクシダーはレインボータウンをもらうことを条件にタイガータウンに協力するとタイガー市長に申し出、了承を得る。サクシダーは偽装したマドピューターでレインボータウンに進撃する。

 サントーレでは、ジーナのお産にドブロフとアンナが立ち会っていた。親子が助かる保証はないとためらうドブロフにジーナは「これは私の戦いで、ファイト、ファイトです」と言い、自力で出産することを認めさせる。

 レインボータウンに向かった竜馬たちは、モントフ市長は戦争を止めたいがタイガータウンに対抗するためやむを得ず戦っていると知る。タイガータウンにはダイゴとバリーが向かっていた。タイガー市長はビッグカタストロフから市民を救うためには仕方ないと主張するが、バリーはサントーレを守ることで、全人類が助かる道が開けると説得する。だが市長はヴィクトールタウン陥落の際に救援を送らなかったからこそタイガータウンは生き残ったと主張し、ダイゴの怒りを買う。ダイゴの言葉には、ジーナの夫のような戦死者たちの思いを踏みにじられた悔しさがあった。結局交渉は決裂する。

 サントーレへ戻るダイゴたちにピーチィーからの通信が入った。タイガータウンの軍にマドピューターが混じっているというのだ。ゴーディアンでレインボータウンに向かったダイゴが到着した時には、既にブレヒト将軍は戦死していた。分離してそれぞれの剣で戦うゴーディアン。だが、その間にサクシダーはタイガー市長を暗殺していた。知らせを聞いたダイゴは再合体するとタイガータウンへ向かう。

 一方サントーレでは、ジーナのお産が始まっていた。ドブロフたちも必死だ。

 ゴーディアンが到着したタイガータウンはザイクロンに蹂躙されていた。早速立ち向かうが、思ったより敵が素早く苦戦する。ザイクロンは腕からの回転翼で光線を出しながらゴーディアンにハリケーンをぶつける。「ファイト、ファイト」と自分に発破をかけるダイゴ。ハリケーンを突破すると必殺白光剣で拝み切りしてザイクロンを倒す。

 ダイゴの奮戦むなしく、タイガータウンはマドクターの手に落ちてしまったが、レインボータウンは救われた。そして、サントーレでは新たな命が誕生した。ジーナも無事助かり、ダイゴに「私、心の中でファイト、ファイトと言いながら」と話しかけると、満足そうに我が子を見つめた。


解 説


 『ジ・アニメ』Vol.9(1980年8月号)の放送予定欄では、43話「陽はまた昇る」の内容として今回のあらすじが誤って書かれている。

 今回の演出の「二階堂主水」はペンネームと思われる。元ネタは二階堂平法の「松山主水」だろう。原画が「にしこプロ」となっており、この組み合わせを『オタスケマン』や『バルディオス』でも見ることが出来るので、にしこプロ関係者ではないだろうか。なお、『ジ・アニメ』の「二階堂敏行」が同一人物だとすると、『ドン・ドラキュラ』に関わっている。

 今回は冒頭5分間レギュラーが登場しない異色作。14話のビッグ・カタストロフバンクがほぼ丸々使われている。

 録音台本では紹介カットで「タイガータウン」「レインボータウン」には字幕スーパーが付くことになっていたが、本編では表示されず。

 レインボータウン市長室の絵がガッチャマンというお遊びが。

 ジーナのストレッチャーをサオリたち四人が並んで押しているのだが、いくらなんでも幅が広すぎではないか。この直後ダイゴたちと鉢合わせするシーン、録音台本では2P差し込みがある。途中でシーンを飛ばしてしまったようだ。

 録音台本ではAパートは毒魔殿のシーンまで。

 タイガー市長の声はたてかべ和也だと思われる。タイガースファンだからだろうか。市の旗もトラの絵である。モントフの声は伊武雅之だろうか。

 サクシダーが偽タイガー部隊に命令するシーン、録音台本では「三分の一はタイガータウンに攻め込む 残りは闘獣士と共にタイガータウンに攻め込み 一気に両タウンを占拠する」となっている。本編では後半部分しか使われていないが、本来シナリオでは「三分の一はレインボータウンに攻め込む」だったのではないか。画面の説明では『アクション オーバーに ヒットラーみたいに!!』と指示がある。

 パールタウンやグリーンタウンといった街がサントーレの周りにあり、ヴィクトールタウン決戦時に援軍を送ったためマドクターの手に落ちたことが分かる。

 ダイゴとバリーが乗っているホバーは二人乗りで、後ろ上部と下部に飛行用のエンジンが二つずつ付いている。『スーパーロボットマテリアル』には載ってないタイプ。バリーが「くそ!エゴの亡者め!」と吐き捨てるが、録音台本ではダイゴの台詞だった。

 レインボータウン戦、ブレヒトがマドクターの砲撃で亡くなったときに竜馬が「市長!」と駆け寄るが、これは録音台本でも同じ。シナリオから違っていたのかは不明。

 今回ゴーディアン三体が分離したまま飛んでくるが、いつもは手を広げているのに気を付けの姿勢。そして三体のバランスが明らかにおかしい。

 三体の剣の切りつけを閃光の色のみで見せる演出は新鮮だが、録音台本の解説を見ないと分かりづらい。

 サクシダーに撃たれたタイガー市長、録音台本では「おゝわしのタウンが宇宙船団(図と誤記)が」と言って事切れるが、本編ではカット。

 ザイクロン戦、録音台本ではガービンからデリンガーが出るシーンがあるが、止めはガービンの必殺白光剣。よく分からない。

 ラスト、録音台本ではロゼがダイゴたちを手術室へ迎えるシーンで終わっており、お産を終えたジーナの台詞とナレーションはない。

 エンドテロップ、河森正治の「河」の一番上の点が落ちて「にすい」になっている。


こぼれ話


 このタイミングで『ジ・アニメ』Vol.8(1980年7月号)特集記事のサントーレ側人物配置を再度確認してみよう。40話以降の登場人物の配置だが、医務局にキャシー・ミッチェル、少年隊にエンリコ、母子区にジーナと「マルチェロ」という名前がある。この名前は以降も登場しない。推測だが今回生まれた赤ん坊ではないか。シナリオには名前が書かれていたのかも知れない。

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