1-43.43話「陽はまた昇る」

 今回は41話からの山本優三部作最終回。ダイゴの過去を辿る旅が一区切りつく。

 ナレーションでも触れられていないが、今回のタイトルはダイゴとゲストキャラのエンリコ両方にかけていると思われる。

 今回は手持ちの録音台本を参考に見ていこう。


43話「陽はまた昇る」 1980年7月27日


 脚本     :山本優

 演出     :秋山勝仁

 作画監督   :杜福安


あらすじ


 ダイゴは母の死からまだ立ち直れずにいた。夜明け前のヴィクトールタウンを一人見つめている。

 サントーレではマドクターの攻撃で外に遊びに行けないチョコマたち少年隊が、ホバーを磨いていた。ダイゴがいないことに気づいたピーチィが何か知らないか尋ねるが分からない。

 サオリは対話室で泣き崩れていた。京太郎はサオリに、ダイゴには両親は宇宙船の事故で死亡したことにしてあったと告げる。それはマドクターの手からダイゴを守ると同時に、いずれ厳しい宿命に立ち向かわなくてはならないダイゴへ、何も知らずに自由に育って欲しいという思いからだった。そこへロゼが駆け込んできた。カーペ・ヴィレッジのゲンじいさんの家に何か母の手がかりがあるかもしれないと思ったダイゴは、ゴーディアンで帰省したのだ。

 ゴーディアンの動きはマドクターにも伝わっていた。毒魔大帝統は神経戦でサントーレを囲み、ゴーディアンの帰りが遅くなれば攻撃に転じろと命ずる。

 ゲンじいさんの墓参りをしてから帰省するダイゴ。だが、ゲンの家には男の子がいた。ダイゴが話しかけても返事をしない。その時、果物を持ったシスターが家に入ってきた。彼女はミッチェルといい、マドクターの攻撃で聖堂を焼かれてからエンリコとここで暮らしていた。エンリコはマドクターに家族を殺されてから口をきけなくなったのだ。ダイゴがこの家の住人だと知ったミッチェルは無断で使用していたことを詫び、出て行こうとするが、ダイゴが制する。その時ゲンに「ここに何かあったら地下室へ行け」と言われていたことを思い出したダイゴは、マントルピース裏の隠し通路を開き地下室へ向かう。

 外ではゲンの家を目指して、サオリたちを乗せたホバーが向かっていた。墓の近くにいた密偵のマドクター兵も家に侵入しようとしていた。

 地下室にあったのはゲンのフィルムメッセージが入ったモニターだった。そのフィルムには、幼いダイゴがゴーディアンに同調するための手術シーン、ナオミに抱かれる赤子のダイゴを見守る京太郎とサオリとの一家団欒の光景が映っていた。『美しく優しい母と気高い父を誇りに思い、どんなことにもくじけるな』というゲンのメッセージにダイゴは涙する。

 その時、背後で「あなた方は」という声がした。一部始終を背後から見ていたミッチェルが突然入ってきたサオリたちに驚いたのだ。ダイゴは我に返るとサオリに「心配をかけた。サントーレに戻るぞ」と言い、地下通路に入り込んでいたマドクター兵を倒す。

 ダイゴが信頼できる人物だと認めたミッチェルは、エンリコを一緒に連れて行って欲しいと頼む。ここではマドクターの襲撃で外で遊ぶことも出来ないと言うミッチェルを見て、ダイゴはチョコマに「帰ったらフットボールの試合をやるぜ」「マドクターの奴らに見せつけてやるんだ。太陽の下の自由までは奪えないってことをな」と言い放つ。そしてミッチェルもエンリコと共に来るよう誘った。話はまとまり、皆はサントーレへ帰還する。

 その頃、サントーレでは二体の闘獣士キャンザー(録音台本より)の発する怪電波に人々が苦しめられていた。バリーは基地を展開し大砲の銃身で威嚇するが、待ちきれないホクマドック(32話準拠)がキャンザーで攻撃を始めた。そこにゴーディアンが到着、必殺白光剣で二体を倒す。恐れをなしたホクマドックは退散した。

 バラスはサントーレでフットボール大会が行われているという報告を聞き、机を叩き壊した。作戦の失敗よりもマドクターを嘗められたのが許せなかったのだ。

 サントーレでは久しぶりに子供たちの歓声が響き渡っていた。エンリコも一緒にプレイしている。倒れたエンリコに駆け寄るダイゴに、エンリコは「自分で、立てる!」と立ち上がる。ダイゴは「おい、口をきいたぞ」と喜び、ミッチェルは涙ぐんだ。

『悲しみから起ちあがったダイゴ。太陽は再び、明日もサントーレに昇るだろう』(伊武雅之)


解 説


 開幕からダイゴが佇むシーンへ歩く音声が入っているミスが。録音台本ではダイゴとクリントが歩くシーンが入っていた。

 ピーチィーがダイゴを「あのオタンコナス」呼ばわりして立ち去った後、少年隊のガヤが「オタンコナスだってさ」と言っているがアドリブ。

 対話室のサオリと京太郎のシーン、録音台本では京太郎が「生きて再び会うものとは私も思っていなかった」と切り出しているが本編ではカット。「お父様はダイゴを不憫と思わないのですか」というサオリへの回答も、「わしとて人の親……我が子はひと一倍いとしい」と断ってから本編の台詞へと続く。

 この後ロゼが駆け込んできてダイゴが出撃したことを伝えるが、録音台本では驚くサオリのシーンの後にカットされたシーンがあった。

『すがるように水ソウの方をみるが 無情にもドアが閉じる

再びロゼの方を向くサオリ(表情 キ然)*私がやらねばだれがやる!!』

 画面の説明にキャラクターの心の声まで書いてある。これまで見てきたゴーディアンの録音台本では特異。これはシナリオからあったのか、絵コンテ以降の文章なのか気になる。

 録音台本ではダイゴ出撃後、バリーが「やはり、ダイゴにはお母さんの事が」と言ったため、ロゼとチョコマにサオリが事情を話すシーンがあるが本編ではカット。ここで竜馬とサオリがダイゴの行き先はカーペ・ヴィレッジだと推測してホバーで向かうことになる。

 今回の毒魔殿、「毒魔黙示録196ページ」という指示、「闘獣士キャンザー」の名前が台詞にあったが本編ではカット。『スーパーロボットマテリアル』では「シザーズヘッド型メカ」と書かれており名前の記載がない。本編でもホクマドックが言っているのになぜ採用されなかったのだろう。録音台本では(カニ型カブトを配し胴は人型ヨロイ手に火炎砲の槍をもつ)と説明されている。

 廃墟のカーペ・ヴィレッジを見たダイゴは嘆息する(今回の名言参照)が、24話の京太郎の台詞『人間のいない都市は無意味な廃墟に過ぎぬ』を思い出す。この後ミッチェルがいたであろう修道院の廃墟の前を通ってゲンの家に向かうが本編ではカット。ゲンの墓参りも本編ではゴーディアンから降りずに済ませているが、録音台本ではゴーディアンを木立に隠したダイゴがクリントと一緒に墓参りをしている。クリントがゲンの墓に頬ずりしたりと見せ場があったので本編でも見たかった。

 手持ちの録音台本では、この後の4Pが乱丁で次のページと前後している。録音台本ではミッチェルの登場までがAパート。

 エンリコについて、録音台本では(メキシコ人風 10歳)と書かれている。山本優はこれまでもゲストキャラの年齢指定をしているので、これはシナリオの指示だろう。

 今回メッセージフィルムのゲンの髪型が7話と違っているが、壁の写真の髪型も混乱している。写真を見ながら「それに……ゲン爺っちゃも もう帰っちゃこない」と言うダイゴを見たミッチェルが十字を切るシーンがあるが本編ではカット。次のシーンで彼女が目を伏せているのはその名残である。

 今回のゲンの説明で、ダイゴに手術が施されたのは1歳頃、ナオミと別れてすぐだと推察される。ちなみに手術位置についての指定は録音台本にはない。「ゴーディアンという守護神」とゲンは録音台本で言っているが、「守護神」の部分がカットされた理由は不明。

 ホクマドックの声は伊武雅之だろうか。ホルスターもきちんと描いてある。

 大滝一家の団欒シーン、録音台本では「籐の吊りイスに幼いダイゴをあやしているマダムクィーン」と書かれていた。本編では普通の椅子。

 今回の作画は基本悪いのだが、在りし日の一家団欒を見て涙するダイゴの顔はとても良かった。修正が入ったのだろうか。

 サントーレの砲門が40話以来使われる。

 「きさまらあ~」と怒りながら降り立つゴーディアンの足がマドピューターを踏みつぶすのだが、これは録音台本にはないシーン。ゴーディアンが伸ばした腕の先から光が伸びて白光剣になるが、これは録音台本の表記通りである。

 ラスト、報告を受けて机をたたき壊すバラスは録音台本にはなし。逆に伊武雅之のナレーションは書いてある。

 『ジ・アニメ』80年7月号によるとオカモト竜馬は修道院で育った孤児なので、もしかしたらシスター・ミッチェルと面識があったのかもしれない。4.5年前に村を離れているという設定なので分からないが。


今回の名言


 「奴らに片時なりともマドクターの恐ろしさをわすれさせてはならぬ」(毒魔大帝統)


 「……カーペ・ヴィレッジは死んだ 死んだ街だ!!」(ダイゴ)録音台本のみ


 「ジッチャ……おれは幸せな子供だったぜ」(ダイゴ)録音台本のみ


こぼれ話


 1980年7月25日初版の『ケイブンシャの大百科64 テレビヒーロー大百科PART3』では、『闘士ゴーディアン』の特集とともに、「超合金のできるまで」という特集で超合金ゴーディアン制作現場の密着取材をしている。栃木県の「おもちゃのまち」にあるポピー壬生工場で超合金ゴーディアンが作られていく工程が豊富な写真で紹介されている。工場で働くお姉さんたちももう引退されただろうか。裏表紙も超合金ゴーディアンの広告である。

 ちなみに特集内、クロリアスの年齢がバルバダスの27歳、エリアスの年齢がクロリアスの25歳に取り違えられている。

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