1-37.37話「マドクター六千年の謎」

 『アニメージュ』vol.26(1980年8月号)の放送予定欄では、36話のアフレコ現場の裏話を山本優が紹介している。

 「これは打ち上げは武道館だな」と冗談が出るくらいの大所帯。線録りが多いゴーディアンの現場だが、竜馬初登場の今回はなんとか間に合わせた模様。しかし後半になると怪しくなってきた。「37話は大丈夫です!」と自信と冷や汗の入りまじった声で宣言する岡崎CD。

 だがこの37話、一筋縄ではいかない背景があった。それでは見ていこう。


37話「マドクター六千年の謎」 1980年6月15日


 脚本     :山崎晴哉

 演出     :石川信夫

 作画監督   :杜福安


あらすじ


 毒魔殿。バラスはイクストロンの解析が進まないとエリアスを責め立てる。成り上がりのバラスに「頭が高い」と言われてエリアスは激高。部下のツアラに「憂さ晴らしに遠乗りをする」と言い残して出て行った。

 遠乗りするエリアスを見つけたのは偵察に出ていたダイゴと竜馬。「怪しい美しさをたたえちょる」エリアスを見た竜馬は興奮。ダイゴと共に捕らえようとする。ダイゴのザップガンでホバーを壊されたエリアスは気絶する。追いかけてきたツアラもダイゴにホバーを破壊され、重傷を負ってしまう。何とか毒魔殿に戻ったツアラはバラスに報告するが、「このことは口外せぬように」と言われてしまう。

 サントーレに連れ帰ったエリアスは三日も飲まず食わずで黙秘し、ダイゴたちは困っていた。それを見ていたサオリは、「女には女同士ということもありますから」と言い、バリーの制止も聞かずにエリアスの所へ向かった。サオリはエリアスを最上級の部屋に通し、その趣味の良さにエリアスも態度を軟化させる。サオリの勧めで入浴したエリアスは、「そなたの情け受けようと思う」とサオリに気を許し、マドクターの歴史について語り始めた。別室では監視カメラの映像をダイゴたちが固唾をのんで見守っている。

 マドクターの祖先は紀元前4000年頃エジプトの地に発祥した。そもそもマドクターとは神事呪術医術を司る一族のこと。王を始めとして広く人民から敬い、尊ばれた存在だった。毒魔大帝統はエジプト王を選び、ピラミッドはマドクターの力の象徴だった。紀元前3000年頃エリアスの祖先はエジプトを統一した。その子孫は世界に広がり、クレオパトラ、卑弥呼、楊貴妃、マリー・アントワネットなどを輩出していった。マドクターの意志を受けた者にはジンギンカン、ナポレオン、ビスマルク、ヒットラー等がいる。そして今、毒魔大帝統が神であり絶対君主である王国を建設するため立ち上がったのだ。エリアスには我が家系は毒魔大帝統に次ぐ貴族中の貴族という誇りがあった。

 サオリはマドクターが何故平和共存できないか尋ねる。「これからの世の中、かわいそうだが力弱き者は生き残れないと毒魔黙示録予言篇に書かれている」と答えるエリアス。大変動で人類は死滅するが、マドクターはプロジェクトXの力によって生き残ると豪語するエリアスにサオリはきっぱりと宣言する。

「弱い人々を支え、共に生きていこうとするのが人間です。あなた方の考えは、単なるエゴでしかありません」

 交渉は決裂したが、エリアスの素性を知った竜馬はヴィクトールタウンの人質との交換を思いつく。

 その頃毒魔殿でもエリアスが捕らわれたことを知った毒魔大帝統が激怒し、毒魔黙示録第19章の42に基づいてヴィクトールタウンの人質全員とエリアスの交換作戦を命じる。その時、白旗を立てたホバーに乗ったダイゴがやってきた。応対に出たバラスに、明日の正午、タウンの南ゲートで人質とエリアスを交換しようと提案する。

 翌日。エリアスを乗せたホバーに乗ったダイゴは南ゲートに向かった。途中で人質を乗せたトラックとすれ違う。人質がサントーレに到着したことを確認してからエリアスを解放するという算段だ。無事到着したとバリーから連絡を受けたダイゴはエリアスを解放するが、エリアスは「そなたの姉サオリはサントーレに置いておくには惜しい女」と言い残す。そこにバリーからの通信が。人質が攻撃されているのだ。罠にはめられたと知った竜馬は仕掛けておいた爆薬で谷間ごとエリアスたちを生き埋めにしようとするが、ツアラが身代わりになってしまう。忠臣の死に激怒するエリアス。

 一方、ダイゴはゴーディアンで人質を襲うマドクター兵のトラックを踏みつぶしていた。さらに徒歩で逃げるエリアスたち幹部を追い詰める。だが、マドクターは手元に残しておいた捕虜が乗るメカをゴーディアンに見せ、たじろぐ隙に逃走する。エリアスは「愚か者め!その愚か者に負けたわらわの恥、必ず晴らしてくれる!」とゴーディアンに言い放ち、人質の乗ったメカの観音扉を開かせる。乗っていた人質はゴミのように落ちていく。そして三体のメカが合体し闘獣士アザラカイザーとなった。アザラカイザーの風攻撃に押されるゴーディアンだが、「ミラクルスピン」で地下に潜ってアザラカイザーを押し上げる。アザラカイザーは触手でゴーディアンを底部に縛り付け、肩の牙で突き刺そうとするがゴーディアンは脱出、必殺白光剣で倒す。

 戦いは終わったが、死者の山を前に涙を流しながら叫ぶダイゴだった。

「何が選ばれし民だ、貴様ら人間じゃねぇ、人間の皮を被ったケダモノだ!マドクターめ、絶対に許さないぞ!許してたまるか!」


解 説


 今回冒頭のエリアスはこれまでにないくらい綺麗。

 ツアラは普通の格好。ベルトのバックルでマドクター所属であることが分かる。エリアスの個人的な部下なのだろう。声優は伊武雅之だろうか。

 遠乗りをする姿を見てすぐエリアスと分かったダイゴだが二人に面識はないはず。ブラスター・バック経由で知ったのだろうか。このエリアスが載るホバーは風防も付いた新デザイン。ツアラはマドクター兵汎用のホバーに乗っている。

 最上級の部屋にあるルノアールの絵の元ネタは不明。ちなみにこの部屋、窓があって外の景色も変わるのだがどこにあるのだろう。

 今回の見所はエリアスとサオリの女の対決。エリアスのプライドをくすぐるサオリの懐柔が一枚上手だった。

 「毒魔黙示録予言篇」という単語はここで初登場する。

 CM明けのバリーのサオリデレに大笑い。どんどんナイスガイ度が下がっている。

 しかし今回のゴーディアン戦闘シーンに突如挿入される毒魔殿のバラスたちのシーンは何だったのか。時間が余るなら出撃バンクでも流しておけば良かったのに。

 ゴーディアン、突如「スーパーキック」「ミラクルスピン」と言い出すので何事かと思った。

 今回は村中博美の一人原画。またも山崎晴哉がゴーディアンでの大虐殺リストを更新してしまった。


 今回の名言 


  「全ての芸術はマドクターに奉仕するもの。下賤の民からもこのようなすぐれた芸術家が時として出るのは不思議なことだ」(エリアス)

 「飢え死にした亡骸は、決して美しい物ではありません。もしあなたが本当に死を望まれるなら、その時には私がどの様にも美しく死なせてあげましょう」(サオリ)


こぼれ話


 実は「マドクター六千年の謎」は本来40話で、37話は40話として放送された「巨砲を叩き潰せ」だった。『ジ・アニメ』Vol.7(1980年6月号)のスタッフ座談会でも、40話にマドクターの全貌が明かされること、エリアスの入浴シーンがあることなどを山本優が語っている。『ジ・アニメ』Vol.8(1980年7月号)の放送予定欄でも確認することができる。

 一方、『アニメージュ』vol.25(1980年7月号)の放送予定欄では実際の放送順になっている。山本優が岡崎CDも心配していたキャラクターの作画について、「話によってダイゴの顔がまちまちだというお叱りがありましたが、最近になってようやくしもぶくれのおたふくかぜもなおり、栄養失調も回復いたしました。いまはスタッフの気力と栄養を受け、すばらしい活躍をしておりますので、ぜひともご注目ください」とユーモラスに報告している。


 『冒険王』80年7月号掲載のコミカライズ第9話は桜多吾作のオリジナル。

 雨が一週間も降り続き、ヴィクトールタウン周辺はジャングルのようになってしまった。この植物の正体はマドクターが開発したXO号。雨さえ降り続けば普通の植物の200倍のスピードで増えるのだ。マドクターは、天気コントールマシン開発者の博士を捕らえ、強制的に雨を降らせ続けていた。ジャングルに調査に向かったゴーディアンは、エリアスの部下、カメレオーダーに出会うが、ジャングルでは身動きがとれない。その間にも雨は降り続く。ゴーディアンはジャングルの外から探知した熱線で機械を突き止め、コークスクリューキックで倒す。解放された博士は、自分が善意で製作した機械が悪用されたことに打ちひしがれていた。

 たぶん最もゴーディアンらしくない話。カメレオーダーはマスク姿で、怪人風。マドクターに痛めつけられる博士など、厳しいシーンが多い。

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