1-9.9話「恐るべしマドクター総統」
三部作の最終話は、裏テーマであるバラスがついに表テーマになる転回点。視聴者にも大きな衝撃を与えたと思われる。手元のシナリオを参考に解説する。
9話「恐るべしマドクター総統」1979年12月2日
脚本 :山崎晴哉
演出 :寺田憲史
作画監督 :小野茂
あらすじ
マドクターの内部では、台頭した司令官バラスに対する評価が日増しに高まっていた。と同時に連敗のクロリアスの株は下がり続けている。同格の司令官ギラリスは無視するが、バルバダスはバラスの戦術を認めていた。
マドクター3幹部のサクシダー、エリアスはそれぞれバラスに接触し、自分が空位の総統の座に座るため利用しようとする。だがバラスはその全てを密かに録音し、逆に弱みを握ることに成功する。一方、クロリアスもバラスとサクシダーの会談をスパイに録音させていたが、バラスに看破されスパイは殺される。
その頃、ダイゴはゲン爺さんの敵を討つためメカコンでハードに体を鍛えていた。サオリが寂しがってると気を利かせたロゼたちはサントーレにダイゴを連れていくが、逆にサオリに怒られてしまう。
毒魔黙示録44ページに基づき、ウエスト小学校を攻撃するためスバイダーを出撃させる毒魔大帝統。立候補したクロリアスは、部下のギラリス、バルバダスを呼び、反逆罪でバラスの逮捕を命ずる。
だが、バラスはこの機会を待っていた。逮捕に向かったギラリスは返り討ちにあい、残ったバルバダスはクロリアスを裏切りバラスにつく。それを知らないクロリアスは偽の通信文に騙され、意気揚々とウエスト小学校を攻撃する。
サントーレにいたダイゴはあわてて出撃。迎え撃ったクロリアスは、ギラリスの部隊に進撃を命じるがいっこうに来ない。司令船にはバラスが乗っているのだ。ゴーディアンに迫られ必死に助けを呼ぶクロリアスにバラスの非情な声が響く。クロリアスは自分が裏切られたことにようやく気づいたが時遅し。司令船ごとゴーディアンに倒される。敵討ちを果たして快哉をあげるダイゴだが、即座に退却した敵の動きに不審さを感じるのだった。
毒魔殿に戻ったバラスは、サクシダー、エリアスの裏切りを盾に、自分が総統の座に着くことを宣言した。反論しようとする二人を制したのはバラスの部下に付いたバルバダス達だった。毒魔大帝統もバラス総統の誕生を歓迎する。
勝利を喜ぶ間もなく、ゴーディアンには手強い敵が現れた。
解 説
今回のタイトルカットは毒魔殿。
今回のダイゴは脇筋だが、ゲン爺さんの敵を取るために一皮むけた姿を見せてくれる。それにつきあうダルフやバリー達もほほえましい。サオリがサントーレで孤立して暮らす寂しさからダイゴに会いたいロゼ達を思うのも変化のポイントだろう。
ギラリスの声優は増岡弘だと思われる。シナリオでは隻眼設定だった。バルバダスと被るから避けたのだろうか。
バラスの模擬戦闘シーン、目標であるゴーディアンの張りぼてはシナリオにはない。
本編では買い物帰りのエリアスと出くわすバラスだが、シナリオではサクシダーがバラスを招き入れたのを見ており、サクシダーの部屋を出たところで声をかけるという展開。
毒魔黙示録、シナリオでは44ページの4。
シナリオではAパートはクモ形バトルピューター「ズバイダー」出撃まで。Bパートはサクシダーの秘書の正体ばれから。
シナリオではギラリスの死体を踏んで通るバラスだが、本編では避けたのかアングルで分からないようになっている。ここで彼の残忍な性格が窺える。
この後のバルバダスへの勧誘シーンでは、シナリオでは続けて言っているバルバダスの台詞の間にバラスの「何?」を入れて溜めを作っている。これは演出の判断だと思うが、いい見せ場になっている。
ズバイダーとゴーディアンの戦闘シーン、「ヤッター!」と叫ぶのはシナリオではダルフ。流れ的には本編のピーチィーで正解だと思う。
今回もデリンガーの剣は白光剣タイプ。しかも、クロリアスへの止めも同じ剣のように見える。シナリオでは「ゲンじいさんの剣」(デュークスクリュー)なのだが。これではゲン爺さんも浮かばれまい。その後後退していくバラス達を見つめるダイゴの独白は、シナリオでは「敵ながら見事だぜ」とバラスを賞賛する内容になっている。
毒魔殿でバラスが総統になることを宣言するシーン、シナリオでは毒魔大帝統が「みなも総統の下に一致団結し、余のためにつくせ!」と言っている。
ラストシーン、本編ではダイゴがバラス撤退時に「誰なんだ」と言っているにもかかわらず「バラス、ゴーディアンにとって手強い相手になりそうだぜ」と言うモノローグが流れる。シナリオではサントーレとメカコン基地でごちそう責めのダイゴというオチ。
結局クロリアスは今回もシナリオに書かれていた「イモバッタ」を一度も本番で使うことなく亡くなってしまった。
次回予告は一部新規作画のようだ。
今回の名言
「自分は軍人だ。政治はわからん。だが、強い者は尊敬する!」(バルバダス)
こぼれ話
山本優は敵幹部を早い回に殺すことが多いが、そのきっかけは『ブロッカー軍団Ⅳマシーンブラスター』で「主要人物を殺すと視聴率が上がるってことに気付いてね」とのこと(「fancybox'77 オリジナルアニメ黄金期の雄、中野に来る!!-山本 優ロングインタビュー」より)。今回もその仕込みのために九里一平のデザインしたクロリアスに取って代わるためのバラスを登場させたわけだ。ちなみに私が入手したキャラクター設定画では、バラスの絵に「バルバダス」と書いてあるのが疑問点。それなら2話でシナリオのバルバダスの位置にいるのも分かる。
バラスの肌は黒みがかっているが地肌だろうか。ゴーディアンには黒人系のキャラがほとんどいないので、バランスを取ったのだろうか。気になる。
ここで3話で紹介した『ジ・アニメ』Vol.2(1980年1月号)のアフレコ現場インタビューについて改めて語りたい。レギュラー陣ほぼ全員にインタビューしたものだが、クロリアスの黒部鉄(屋良有作)が台本を見て自分の死を知り慌てているのが一番の見どころ。「今度は何か別の役をやるらしい」とも語っており、その役は早くも10話で登場する。一方、バラス役の西村知道は、「悪役側で一番面白いキャラクターなんじゃないでしょうか」とノリノリ。加川三起(鳳芳野)はエリアスとは違い「機械も色気も苦手」とのこと。「もっと活躍させて欲しい」と言っているが、彼女の春への道のりはまだまだ先である。サクシダー役の北村弘一はこの場にはいなかったようでインタビューは無し。毒魔大帝統役の村松康雄は線録りに苦言を呈しながらも「ドクマは目しか出てこないのでそういう点ではラク」とフォローしている。
他のインタビューについてはまた後の回で紹介したい。
なお、『ジ・アニメ』Vol.3(1980年2月号)では連載の「やぶにらみ太郎のアニメ鑑賞日記」でこの回の感想が語られ、「どっかの国の政治家サンたちを連想させてくれて、見ているボクとしてはおかしくてしょうがなかった」と書かれている。
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