1-10.10話「赤い鼻の酋長」

 『アニメージュ』80年1月号から各話あらすじ紹介だけだった「テレビアニメーションワールド」がお題に沿ったスタッフのコメントになる。「今月はここを見よう」というテーマに永井プロデューサーはこれまでの意見を踏まえ、ヴィクトールタウンの位置づけをはっきりさせる、敵のメカをスマートなものに変える、ゴーディアンの各ロボ単体が戦うシーンやレギュラーの出番を増やす、をポイントとして挙げている。実際の放送では3話のバトルピューター登場からこの流れが始まっていると思われる。

 それではシナリオを参考に10話を確認していこう。


10話「赤い鼻の酋長」 1979年12月9日


脚本     :松崎健一

演出     :落合正宗

『アニメージュ』vol.19(80年1月号)では湖川順康(古川順康)表記

作画監督   :宇田川一彦


あらすじ


 荒野に突如現れたマドクター基地。それをインディアンの老酋長、レッド・ノーズが見つけた。「ワシの土地だ」と抗議するレッド・ノーズをマドクター隊員は取り合ってくれない。精霊にお伺いを立てたどりついたのはメカコン基地。マイペースのレッド・ノーズに振り回される隊員たちだが、ともかく基地壊滅のために工作員を送り出す。隊長は第1特殊工作班班長、ブラスター・バック軍曹。爆発の専門家だ。ダイゴ、ピーチィ、ダルフが同行する。最初は「あんな女子供と仕事をさせる気ですか」と反対するバックだったが、抗議するピーチィーたちに折れて同行させる。

 「ホバーでは目印が見つからないから」ということで、徒歩で向かうことになった皆は疲労困憊。それでもなんとか基地に到着し爆薬を仕掛けて回るが、マドクター隊員に見つかってしまった。あくまで任務を遂行しようとするバックは肩を負傷するが爆薬を起爆させ、ダイゴに助けられながら後退する。

 基地壊滅の報を聞いた新総統バラスは、毒魔黙示録33ページに載っているサリューで出撃するようサクシダーに命ずる。サリューの攻撃から逃れるため洞窟に逃げ込むダイゴとバック。

 危機一髪、迎えにきたロゼたちに助けられたダイゴは、クリントをバックのそばに残してゴーディアンに嵌入。名誉挽回しようと必死なサクシダーはサリューの火炎でゴーディアンを責め立てる。ダイゴは負傷しても任務を果たすバックを思いだして奮起し、パージしてデリンガーの剣でサリューの胴を切り裂き、再嵌入したガービンのガトリング・アームで首を切断した。サクシダーは命からがら脱出する。

 幸いバックは看護婦にちょっかいをかけるくらい回復し、レッド・ノーズはそのままメカコンに居着いてしまった。


解 説


 シナリオタイトルは「ワシ、赤い鼻の酋長」。

 レッド・ノーズの声優は今回のテロップにはないが千葉順二。シナリオ本文では「R・N」と略されていた。占いのシーン、シナリオによると「オンウィー(月)の精霊よ オンチャシュペ(惑星)の精霊よ」と言っている。メカコン基地でライスカレーをおかわりしまくるシーンはシナリオでは「飯」としか書かれていない。「インデアンカレー」というカレーの有名店にちなんだと思われる。

 ブラスター・バックの声優はクロリアスから引き継いだ黒部鉄(屋良有作)。シナリオでは「骨太、色黒」と書かれていたが、実際の肌色はダイゴたちとさほど変わらない。

 レッド・ノーズとブラスター・バックのデザインは、今回の作画監督である宇田川一彦かと思ったが、『ジ・アニメ』Vol.6(1980年5月号)内の特集記事で、山本優がレッド・ノーズとトロス・クルスのデザインを九里一平に頼んだと語っている。『マテリアルシリーズ3 スーパーロボットマテリアル《タツノコプロ編》』に設定画が掲載されている。二人ともこの後再登場しレギュラー入りする。

 道中、「クーリントちゃん、持ってくーんない」と言う安原義人の演技は氏お得意の調子で、かなりアドリブが入っている。ピーチィがダイゴにラブラブな所を隠さないのも珍しい。

 シナリオではAパートはマドクター兵を倒すダイゴたちまで。Bパートはバックの爆薬設置から。

 毒魔黙示録、シナリオでは「33のS」。前回までと立場が逆転し、バラス総統に平身低頭するサクシダーの転落ぶりが際立つ。この話からサクシダーも前線で指揮を執るようになる。

 今回はマドクター隊員がレッド・ノーズをからかうところなど、人間臭い描写が見られる。

 シナリオではレッド・ノーズが鳥の群を操り、マドクター兵を襲うシーンがあるが、本編ではカットされた。レッド・ノーズがまっとうな戦いぶりを見せるのはかなり後になる。

 バトルピューター・サリュー、シナリオでは「三、四十mはあろうかという長い胴体に多数の足を持つ蛇足竜」と描写。ゴーディアンとの戦闘、本編ではガービンからデリンガーが出て攻撃するが、シナリオでは「シュート・プロテクション、プロテッサー!」のコールと共に、ガービンからプロテッサーが射出され、ゴーディアン・ボムで攻撃、デリンガーに再嵌入して「電子ヌンチャク」で攻撃、さらにヌンチャクを棒状に変形させた「電子スティック」で攻撃してからガービンの「ミサイル・ボーガン」で止めだった。なお、本編で使われた剣は今回も白光剣タイプ。松崎健一は注釈で(作品の上ではデリンガー→プロテッサーのパターンも可能にしたいと思いますので射出パターンを一考願います)と書いているが、今回は間に合わなかったようだ。

 今回は本編演出で、バックとクリントが隠れる洞窟の外に映る光景が要所要所で挟まり、サリューが倒されたところで、メカから外れた一本のネジがバックたちから見ると巨大なネジとして洞窟の入り口に落ちてくるというオチになっているのが面白い。これはシナリオにはなく、絵コンテ以降の追加と思われる。なんとなく特撮チックで、当時『ザ・ウルトラマン』に関わっていた古川順康が演出でもおかしくない気がする。

 なお、本編ラストでメカコンに居座るレッド・ノーズはピーチィーの部屋に居座ると解説している人が海外にいるが、よく似ているが別の女子隊員である。

 次回予告は普通に新規作画。


こぼれ話


 『冒険王』80年1月号のコミカライズ3話はこの回。桜多吾作はシナリオをほぼ忠実に描いているが、「レッド・ノーズ」の名前は「レッド・ルース」になっている。また、バックのキャラクターデザインができてなかったのか、野戦服を来たひげ面の黒人として描いている。鳥を呼び出すレッド・ルースや、マドクターの攻撃が頭をかすめるダイゴもアニメでは使われなかったシーン。ガービンからプロテッサーへの射出も描いているが、サリューへの止めはプロテッサーの腕から飛び出す「アームカッター」。設定としてはあるが、アニメ本編では正しく使われることがなかった武器である。一方漫画冒頭、柔道で特訓するダイゴはオリジナル。また、ダイゴがピンチになったときにビーコンでサントーレを呼び出そうとするが、みんな就寝中で反応しないというのも本編との相違点。

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