1-6.6話「ヴィクトールタウンの罠」

 四人目の脚本家にして、ゴーディアンのSF設定の要、松崎健一の初担当回である。例によってシナリオを参考に進めていきたい。


6話「ヴィクトールタウンの罠」 1979年11月11日


 脚本     :松崎健一

 演出     :寺田憲史

 作画監督   :宇田川一彦


あらすじ


 ヴィクトールタウン侵攻がいっこうに進まないことに焦る毒魔大帝統に呼び出された幹部達。毒魔黙示録87ページ第4項に基づき、クロリアスが出撃した。

 その頃、ダイゴは街を案内したいというピーチィの付き添いで、ヴィクトールタウンに買い物に向かっていた。スピード違反したりとやっぱりお騒がせなダイゴ。レストランに入った二人は、公園に変な建物が建っていることに気づく。実はレストランはマドクターに乗っ取られており、隊員が従業員に化けていたのだ。なんとか隊員を倒して脱出した二人だが、ダイゴは異変を察知してやってきたロゼたちと建物の調査に向かってしまう。抜け駆けされたピーチィは大激怒。追いかけていった彼女の目の前で、ダイゴの載ったスポーツ・クラフトが大爆発。ダイゴが死んだと思ったピーチィは、初めて自分がダイゴが好きだったことに気づく。

 もちろんダイゴは生きていた。サントーレに戻ったダイゴは出撃。街にダメージを与えないためプロテッサーで戦うダイゴだが、クロリアスは謎の建物からムカデ形バトルピューター、デムーガ(シナリオではデムーカ)を出撃させる。ダイゴは腹が空いてるせいか満足に闘えない。ダイゴを助けるためにサオリはガービンを動かし、ダイゴはゴーディアンに再嵌入してゴーガンアタックで見事デムーガを倒す。

 のんきに戻ってきたダイゴは、皆がダイゴの墓を囲んで泣いているのに出くわす。ピーチィは心とは裏腹にダイゴをはり倒した。


解説


 タイトルカットは3話と同じデリンガー。ちなみに前回の予告では1話と同じくホバーに乗るダイゴだった。

 松崎健一の書く毒魔大帝統の台詞はカタカナ交じりで、コンピューターであることを意識した文章になっている。その言葉を聞くサクシダーの眼球があり得ない動きをするのは撮影ミスだろうか。

 今回初めてヴィクトールタウン内部で話が展開する。ダイゴのお上りさんらしいドタバタは、後年松崎健一が安原義人主役で書く『テクノポリス21C』を思い出させる。

 ダイゴとピーチィの出会った池は「ブッシュの池」というらしい。カエルネタも2度目。ここで勢い余ってダイゴにキスしかかるピーチィーだが、シナリオにはないので絵コンテ以降の追加と思われる。ピーチィー以外の女子隊員の存在も初めて明らかになる。

 ダイゴ達がシナリオでは「カーぺ」なのに「カッペ」・ヴィレッジと言っているのはアドリブなのか、録音台本で変更されたのかは不明。確かに元ネタは「いなかっぺ」だろうが。

 パトカーにダイゴが払う罰金は「75ドル50トレス」だが、脚本は「ボル」。「ボル」だと藤子・F・不二雄がよく使う印象がある。「短い間だったね、お元気で。じゃあね」とお金に言うダイゴの台詞はアドリブと思われる。

 ウェイターがマドクターだと気づくシーン、本編ではピーチィだがシナリオではダイゴ。シナリオではここでオチへの伏線を張っていたが、オチがカットされたためここもカット。

 今回街中ということで、初めてゴーディアン・ボムを使ったプロテッサーでの戦闘が展開される。プロテッサーを初めて見たのに「ゴーディアン」と呼ぶピーチィー達に突っ込んではいけない。

 ゴーガンアタックも初披露。企画書で「ミサイル・ボーガン」と名付けられていた武器が元ネタだと思われる。シナリオではちゃんと腕から射台が出て、背中から取り出した矢形ミサイルを発射するという仕掛けなのだが、本編ではただの片腕ロケットパンチになっている。

 中にダイゴがいなくても自力で動くガービンも今回初披露。サオリが遠隔操作したように本編では見えるが、シナリオではロゼがガービンを立て直しただけで動かしてはいない。

 シナリオでは、ダイゴはサントーレに向かうのに市民のエアカーを拝借しているのだが、本編ではロゼが乗ってきたエアカーに乗り、ヴィクトールタウンへは自分のエアバイクで帰ってくる。サントーレに置いてあったのだろうか。レストランを壊した代金をマドクターに捕まっていた従業員に請求されるというオチもカット。

 次回予告、いつもは「また会おうな」と締めるダイゴが「また会おうぜ」と少し違っているのが興味深い。絵は次回本編から使われている。


今回の名言


「ダイゴの奴、尻に敷かれるタイプですな」(ダルフ)

「一度こいつを試してみたかったぜ」(ダイゴ)


「ダイゴ、あんたよくみるとイイ男だね」(ロゼ)

「やっぱ映画スターになるべきだったかな、ナンチャッテ」(ダイゴ) シナリオのみ


こぼれ話


 シナリオでは、メカコンのホバーを「イモバッタ」呼ばわりするクロリアスのシーンがあるが、本編ではカット。しかし、桜多吾作のコミカライズ1話ではサクシダーが「イモバッタ」呼ばわりしている。これは推測だが、6話のシナリオが手元にある状況で作ったが、1話が掲載された『冒険王』11月号のカラー口絵記事準拠でクロリアスとサクシダーを取り違えたため、サクシダーの発言になったと思われる。

 なお、79年12月号掲載の2話はこの「ヴィクトールタウンの罠」のコミカライズだが、ガービンの止め武器が違う。これについては17話で改めて語りたい。

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