1-2.2話「出撃・かくし砦」

 今回は手持ちの録音台本を参考テキストとして、第2話を紹介していきたい。なお、『アニメージュ』vol.17(79年11月号)では、「サン・トーレの秘密」というタイトルだった。1話予告でのタイトルは「出撃!かくし砦」。


2話「出撃・かくし砦」1979年10月14日


 脚本     :山本優

 演出     :落合正宗

 作画監督   :宇田川一彦


あらすじ


 気がつくと、ダイゴは見知らぬ部屋で、見知らぬ人々に囲まれていた。包帯姿の女性と、ダイゴと同じ年頃の少女、6歳くらいの少年だ。ここはシティ郊外の山にあるサントーレという秘密基地、女性はサオリと名乗り、ダイゴは自分の弟だという。天涯孤独の身の上だと思っていたダイゴはサオリの言葉が信じられず、部屋を出ていく。

 その頃メカコンでは、行方不明になったダイゴを皆が心配していた。ケンカしていたピーチィもいつになくしおらしい。そこにダイゴがひょっこり帰ってきた。おみやげの食用蛙をめぐってまたケンカが始まってしまう。

 マドクターの幹部たちは、昨夜の襲撃で撮影された謎のロボットの正体に頭を巡らせていた。毒魔大帝統に尋ねると「ゴーディアン」との回答。そして毒魔黙示録34ページに基づき、メカコン第18連隊襲撃を命じられる。バルバダス第一の部下、ギロスの部隊とバルバダスが出撃した。

 謎のロボットの正体が分からないのはメカコン側も同じだったが、少なくとも敵ではないとバリーは判断していた。

 いざ帰ってきたものの、ダイゴはサオリのことが気になって仕方ない。泉で考え込んでいると、さっきの少女ロゼと少年チョコマがやってきた。ダイゴは二人に、自分のペンダントがサントーレの通信機に反応して光ったこと、ゴーディアンで出撃したサオリが、メカに適応できず大やけどをおったことを聞かされた。ダイゴはサントーレに行き、父の意識が移植されたコンピュータと対話する。ゴーディアンが、自分が操縦するために父によって開発されたことを知ったダイゴは、ゴーディアンで戦う決意をする。

 折しも、メカコンがマドクターの襲撃を受けていた。初出撃したダイゴは見事ゴーディアンでマドクターを撃退する。バリーたちは、ロボットが残していった「GOUDEAN」というサインを見て、首を傾げるばかりだった。

 サントーレに戻ったダイゴはサオリに疑ったことを謝るが、「俺の頭じゃ整理の付かないことが多すぎる」と言い残して立ち去る。チョコマはサオリに「姉さん」と呼ばないダイゴに苛立つが、ダイゴにとってまだ全てのわだかまりは解けていないのだ。


解説


 冒頭のマドクター会議シーン、本編では「ミスターX」が会議に参加しているが、録音台本ではバルバダスが参加している。ここが彼の初登場。キャラクターの設定画も後の資料本に収録されているが、この回の作画監督である宇田川一彦が描いたのか、九里一平設定のキャラクターをクリンナップした宮本貞雄が描いたのか不明。台本ではこの後、毒魔大帝統に叱責されるミスターXのシーンがあるが、本編ではカット。なお、この時点で彼の名前は「○○」と書かれており、まだ仮名すら決まってなかったことが分かる。

 エリアスの発言で、ゴーディアンを動かす「メカニカル・バイオニズムシステム」はマドクターでも開発中の物だと判明する。

 次の毒魔宮殿シーンでも、台本のバルバダスの代わりにミスターXが参加。毒魔大帝統に「ゴーディアン」と名を告げられたとき、三人が「ゴー」「ディ」「アン」と分担して言っているのが面白かったが、本編ではエリアスが代表して言ってしまった。

 AパートとBパートの切れ目、本編ではダイゴを追ってきたロゼたちと出会うシーンだが、台本ではギロスとバルバダスのシーンだった。これは先のシーンカットで前倒しになったのだろう。

 また、ダイゴが父の声を聞くシーンでも、重要な台詞がカットされている。以下台本より。

父の声「(ゴーディアンは)お前のからだの全てに適合するように私が作っておいた」

ダイゴ「何のために?!」

「人類に遺された最大にして唯一の物質を守るためだ!」

「それは何だ!」

「今、それは云えぬ」

 このシーンでの父の台詞の一部は、ゴーディアンの嵌入シーンでナレーションとして使われている。

 そしてOPや合体時のバンクシーンとして使われる、ゴーディアンの初嵌入、出撃シーン。途中でプロセッサーの胸の色指定が間違っているカットがあるのはご愛敬。ダイゴがプロテッサーに入るときのコール「セットガード・プロテクション」は台本では「ゴーディアン、ゴー」だった。本編ではブースターを発進させるときに「ゴーディアン、ゴー」と言っている。その後の各形態コール「プロテッサー!」「デリンガー!」「ガービン!」は台本にはない。安原義人のアドリブではなさそうだが。

 戦闘時に『闘士ゴーディアン』がBGMとして初めて流れる。これは無条件に盛り上がるスタイル。

 今回は変顔になったりずっこけたりのシーンが増え、ますます2.5枚目の雰囲気漂うダイゴを安原義人が軽妙に演じている。もちろん、サオリや父との対話シーン等、決めるところは決めるので格好いい。

 戦闘シーンでは、ダイゴの動きがそのままゴーディアンに伝わるため、腕を組んだり、勢いをつけて下にパンチしたり、腕の埃を払ったりとコミカルな仕草になっている。ダイゴが「乗ってる人が違うんだってよ」と現在聞くとメタっぽい台詞を言うわけである。

 ゴーディアンに乗って火傷を負ったサオリは耐熱服を着て搭乗していたが、ダイゴは普段着のままで何も変わらないのが、父の言葉を実証している。

 戦闘シーンでは技名こそ言わないものの、両腕を肘から発射する「ガトリング・アーム」と足のすねから発射される「フットミサイル」が初登場する。

 なお次回予告のカットは1話の使い回し。早くもギブアップか?


 今回の名言


「ダイゴ・ダイゴって気安く呼ばないでくれよ。ダイゴのバーゲンやってるわけじゃないんだ」(ダイゴ)


こぼれ話


 『アニメージュ』vol.18(79年12月号)では、当時の新番組を竹宮恵子、ささやななえ、和田慎二という人気漫画家が見て採点するという記事が掲載されている。少女漫画寄りなのは『ベルサイユのばら』に合わせたのだろうか。『闘士ゴーディアン』は35満点制で24・27・21点。「ダイゴの声が顔と合ってないような気がする」「クリントが気に入った」「1話で話が終わらないのは困る」等の意見があがっていた(意見は順不同)。


 『ジ・アニメ』vol.1(79年12月号) では、「やぶにらみ太郎のアニメ鑑賞日記」という連載記事が始まり、『闘士ゴーディアン』も取り上げられている。「タツノコのアニメにしてはロボットのスタイル、メイン・キャラが東映のそれ(ロボットアニメ)に近い」との感想だが、東映ロボットアニメを手がけていた落合正宗の影響だろう。


 また、『冒険王』79年11月号から桜多吾作によるコミカライズ版もスタート。11月号はアニメ1.2話を下敷きとした話になっているが、企画書時点の設定が多数残っている。クリントの常態が生身だったり、サオリの名前がサラだったり。マドクター幹部陣は特に取り違えが激しい。原因と思われるものが『スーパーロボットマテリアル(タツノコプロ編)』(銀河出版)に掲載されている九里一平直筆のキャラ身長対比図。ここではクロリアスの絵に「サクシダ」、バルバダスの絵に「クロリアス」、サクシダーの絵に「バルバダス」と書かれている。ダルフも「ダルク」と書かれており、「ダルク」表記で初期の台本や雑誌記事に書かれているのも納得である。

 注目すべきはサクシダーがメカコンホバーに対して「イモバッタ」発言をしていること。この台詞は第6話「ヴィクトールタウンの罠」のシナリオでクロリアスが使っている。クロリアスとサクシダーを取り違えたため、サクシダーの発言になったと思われる。ラストカットはゴーディアンに対抗心を燃やすエリアス。

 ピーチィーの金髪と被らないためか、ロゼの髪がべた塗りで描かれている。


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