第一章 本編解説
第1部 ヴィクトールタウン
1-1.1話「荒野のナイスガイ」
脚本 :山本優
演出 :落合正宗
作画監督 :宇田川一彦
1979年10月7日10:00。東京12チャンネルにチャンネルを合わせた視聴者は、黒豹を連れた少年が立つ岩を抱えた青いロボットから始まるOPを見ることになる。『闘士ゴーディアン』のスタートである。
OPはプロテッサーに入るダイゴからのゴーディアンへの嵌入シーン、そして蜘蛛形戦車(バトルピューター)を踏みつぶし、蹴飛ばすゴーディアン、勢いよくパンチでバトルピューターを叩き潰すゴーディアンと続き、ラストラットは夕日をバックに立つプロテッサー・デリンガー・ガービンと前景のダイゴに回り込んで締める。
この映像は現在でも多くの人々に、動きは少ないが不思議な魅力を持っていると語られている。このOPを描いたのは当時グリーンボックスに在籍していた、なかむらたかしであることが『WEBアニメスタイル』内のインタビュー記事で判明している。なかむらの実力がフルに発揮されるのは次作の『ゴールドライタン』だが、この時点でも確かな爪痕を残していたのだ。
また、なかむらたかしは前掲のインタビュー内で自身の岩へのこだわりについても触れており、タイトルで持ち上げる岩の凹凸や、嵌入シーンで崩れ落ちる岩にもそのこだわりが見え隠れしているようだ。
バトルピューターへの攻撃シーンは、前半の踏みつぶしシーンと後半のパンチの落差が語られることが多いが、無理もない。この二つのシーンは「中の人」が違うのだ。それは1話と2話で語られることになる。
ちなみに、『闘士ゴーディアン』を歌う塩見大治郎は『アニメージュ』vol.18(79年12月号)内のコメントでこう語っている。
『低い音の部分が声が出にくくて難しいけど、力強くリズミカルに歌うとうまくいくと思います。あと“正義の使者”だという感じをだすには、感情移入をたっぷりして、せまっていくような歌い方が、気分がもりあがるポイントだと思います』
最後に注意したいのがこのOPの歌詞テロップ、サビ部分が「雄雄しい いさましい」と表示されているが、実際は「雄々し 勇まし(おおし いさまし)」と体言止めであること。これは作詞の松山貫之が講談調で作ったからだと山本正之がオリジナルサウンドトラック内のインタビューで語っている。なのでラストの「きみは しるか しるか」も「君は(ゴーディアンを)知っているか」の倒置である。近年はMAD動画で「知ったことか」というニュアンスで使われているが、オリジナルの意味は違うことを覚えていてもらえれば幸いである。もちろん、「君はゴーディアンを知るか」もここから取っている。
EDの『希望に向かって走れ』の作詞は山本正之。氏の特徴である掛詞は少ないが、サビの「平和イコール(正義・勇気・闘志)」に氏のメッセージが込められていると感じる。
また、「プロテッサー・デリンガー・ガービン」とゴーディアン三体のコールが入っているが、現存する1話と2話では、レコード盤の子どもコーラスではなく、男性の声が入っている。山本正之はオリジナルサウンドトラック内のインタビューでこの件に触れられたときに、「安原さんの声を録った記憶がある」と答えており、安原義人の可能性が高い。
EDの背景カットを描いたのは誰かは分かっていない。
この後は、DVD-BOX2巻特典の1話録音台本を参照しながら、あらすじと解説を行っていきたい。
1話「荒野のナイスガイ」あらすじ
時は未来。世界は荒廃し、ならず者達がはびこるアメリカ西部。メカ黒豹クリントと共に、ヴィクトールタウンを守るメカコン第18連隊に入隊するため一人の少年がやってきた。彼の名はダイゴ。タウンに向かう途中の泉で一休みしようと立ち寄ったところ、水浴びしている少女に出くわしてしまう。裸を見られた少女は猛抗議。彼女がメカコン仲間のピーチィだと知るのは、後の話である。
メカコンでは連隊長のバリー・ホークや、同室で編み物好きの巨漢ダルフと仲良くなる。パートナーのクリントと離れたくないというダイゴの訴えにバリーも折れ、一緒に入隊することになった。
その頃、マドクター本部宮殿(台本より)では、目だけがスクリーンに光る毒魔大帝統の前に、幹部たちがぬかずいていた。「太陽のすかし」という謎の言葉を繰り返す毒魔大帝統は、サクシダーの持つ「毒魔黙示録」27ページから作戦を指示する。前線指令のバルバダス率いる部隊が出撃した。
その夜、ダイゴは胸の十字架ペンダントの飾りが点滅するのに気づく。だが全く心当たりがない。直後、サイレンが響き渡る。ヴィクトールタウンの菜園コントロールセンターがマドクターに襲われたのだ。ダイゴも早速出撃するが、敵の奇襲攻撃の前に連隊は大ピンチ。その時、敵メカを踏みつぶしながら謎の巨大ロボットが現れた。恐れをなしたマドクターたちは退却していく。取り残されたダイゴは、巨大ロボットの手に捕まれ気を失った。
解説
録音台本でのタイトルは「荒野のナイス・ガイ」。
また、印字されているものの今回登場していないキャストが二条線で消されている。
ダイゴは自分の赤いホバーカーに乗って登場するが、この後はメカコンのホバーカーに乗るため出番はほとんどない。ならず者たちとホバーカーで追いかけっこするシーンは、その引き延ばし気味の遅いスピードで良く話題に上がる。
序盤のならず者との戦闘こそ恰好いいダイゴだが、ピーチィとの絡みに早くも2.5枚目ぶりが窺える。なお、このシーンでピーチィに「頭の中にダイナマイト放り込んだような声」と言っているが、台本では「頭ン中、電気がはじけるような声」となっているので安原義人のアドリブであると思われる。
1話で特徴的なのは光と影の演出。ダイゴが崖の上に立つシーンは真っ白く塗られており、水がなくなるほど暑い太陽の光の演出だと思われる。逆に、マドクター襲撃シーンは闇夜の設定のため、モノクロにカラーの閃光が交差し、メカコンがサーチライトを点けたり、爆発光の照り返しだけがカラーになるという手間のかかる演出を行っている。これは永井プロデューサーの語る「実写に近い描写」を意識した物だろう。井口忠一となかむらたかしの原画で、作画も安定している。
小ネタだが、サクシダーが飲んでいる酒は台本には「ナポレオン」と書かれていた。
メカニック設定の河森正治は、マドクターのバトルピューターや司令船のデザイン、メカコンのホバーカーやミリタリービーグル等で早速腕を振るっている。
次回予告はダイゴの一人称で「次回(タイトル)、また会おうな」が決め台詞。ただし、2話予告の時点で同じカットを何度も使い回したりと早くも危険な兆候が窺える。
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