0-2.企画書からわかること
前項でも記したとおり、『闘士ゴーディアン』の初期設定は2006年発売のDVD-BOX1巻に特典として収録された企画書レプリカによってある程度判明している。
まず表紙では『SFアクション・アニメ 企画設定書 闘将ゴーディアン』とあるのが目を引く。ロボットアニメであることを前面に出さないのはタツノコらしい。また、「闘将」という冠から、1978年4月1日放送開始の東映制作ロボットアニメ『闘将ダイモス』を思い出す人も多かろう。『ダイモス』放送以前から企画が動いていたのであれば、企画から放送まで1年半以上かかっていることになる。
2ページ目には<口上>というタイトルで本作のあらすじが記されており、この時点で「ヴィクトール・タウン」「サントーレ」「ゴーディアン」「マドクター」「プロジェクトX」「ビッグ・カタストロフ」「セットガード・プロテクション」といった本作を彩るキーワードが出そろっている。
また、時代設定は「地球生成44億9999年」とあり、当時の世紀末ブームが反映されている。実際の本編でも1999年前後の設定であることが窺える描写がある。
<口上>は次の言葉で締められている。
『これは、挑む男の極限のロマンと、人間の根源的な愛と青春を駆けめぐる、ひとりの少年の熱い生きざまのドラマである。』
3ページ目からはキャラクターの設定が続く。ダイゴの設定では「カーペ・タウン(本編ではヴィレッジ)」で育てられていたというのが目を引くくらいで本編とほぼ同じ。
クリントの設定では、『電子ロープで背をうつと、内蔵されたメカニックシステムが表面化して、メカ変化をとげる。』というのが本編では消えている。九里一平の設定画では、メカ部分のない黒豹としてクリントが描かれているので、本編のメカ部分が見えるスタイルに変化する予定だったと思われる。
最も本編と違うのはサオリが「サラ」、ロゼが「サオリ」という名前だったこと。この設定は『冒険王』で桜多吾作が連載したコミカライズ1話にも残っており、企画書を参考に描いたのかもしれない。
続くメカ・コン隊員の設定ではバリーの肩書きが『18連隊、特殊部隊の隊長』となっている。18連隊の中でも一部のメンバーが特殊部隊なのか、18連隊自体が特殊部隊なのかは分からない。アンノンジー長官には『孫は11人、恐妻家。』という設定があったが、本編で披露する機会はなかった。
ここからはマドクター側の設定。マドクターという組織に関しては、『コンピューターを過信、悪用によってマニアックな人類の統制を果たそうとしている。』とある。文章の意味が私には分かりづらいが、マドクターのコンピューターによる統制を指していると解釈して先に進める。
(追記 後に入手した『竜の子ファンクラブニュース』No,6には『自意識を持った巨大コンピューター、マドックはその力を過信 M.M.C(メカニック・コントロール・センター)システムを狂わせ、メカの悪用によってマニアックな人類の統制を果たそうとする』という文章があり、企画書レプリカの文面は欠落していた可能性が高い。ちなみにM.M.Cとはメカコンを作った組織である)
マドクターのコンピューターには「マドック」という名があり、『メインデスマスク(本編で光る両目として表される部分だと思われる)とサブデスマスクをもつ。』とあるが、サブデスマスクの設定は本編ではなくなっているかもしれない。内部構造が明かされたときにはそれらしき物はなかった。
続けてマドクター三首脳としてクロリアス(25才、プログラマー)、エリアス(30才、技術者)、サクシダー(40才、作戦参謀)が紹介されている。クロリアスは『観葉植物をめでる。自室は花園の様相』という設定があったが、本編では反映されなかった。エリアスは九里一平の設定画では赤いコートの下にジャンプスーツを着ていたが、アニメ用の設定ではオミットされている。サクシダーが他の幹部より劣っていることを自覚していることもこの時点で書かれているが、「毒魔黙示録」を朗読することは企画書の時点では出てこない。バルバタス(27才、前線指令)は『興奮すると歯車のアイパッチがギリギリと回る。』とあるが、本編で効果的に使われたことはなかった。そしてこの時点では、マドクター総統に成り上がるバラスについては全く触れられていない。そのかわりに年齢不詳の謎のキャラとして「トロス・クルス」が紹介されている。『ダイゴとは奇妙な宿縁のライバルとなっていく。』とあり、トロスの役どころはほぼ固まっていたことが窺える。
最後にゴーディアン三体の設定。
ゴーディアンはダイゴの生身の生体機能のサイバネテックスに反応するように作られ、生身とメカをつなぐバイオメカフィルターがあらゆる機能を増幅させるが、他の人が使うと拒否反応を起しやけどする。これは熱いエネルギー状の電子的のパルスがかけめぐるからであり、このエネルギーが逆流すると「パルス・ストーム」という現象が起こり、無理をすると命取りになる。これは説明こそないものの、本編でも演出されている。
ゴーディアンの超合金のキャッチフレーズとして使われた「分身合体」の単語はなく、「嵌入」「離脱」の表現が使われている。また、この際の掛け声として「セット・ガード!プロテクトヘビイ!」という例が書かれているが、本編では使われていない。
ゴーディアン三体は機能に応じて斗い、巨大だから最強とは限らないということが明言されているのは、『ブロッカー軍団Ⅳマシーンブラスター』など主役ロボットの複数運用を手がけてきた山本優らしい。
三体のロボだが、企画書では「ゴーディアン・プロテッサー」、「ゴーディアン・デリンジャー」、「ゴーディアン・ガーディン」となっている。ガーディン(ガービン)の身長は10メートルだが、本編では15メートル設定に変更されている。
この時点では武器に剣は全くなく、『ビーム類は極力使用しない』と但し書きがされている。プロテッサーのアメ・ラグボール状の武器「ゴーディアン・ボム」は本編でも使用されているが、爆発するのではなく、電子的に破壊するという武器。技の設定も複数あり、アメ・ラグの試合のように状況に応じて使い分ける予定だった。
デリンジャー(デリンガー)は格闘戦用の機体で、カンフーや電子ヌンチャクがメイン武器の予定だった。どちらも本編では生かされていない。
ガーディン(ガービン)は『アメラグの中央突破的激突をむねとする』と書かれた重突進や、ガトリング・アームという武器を持つ。必殺技は胸から出る一発のみのミサイル「ミサイル・ボーガン」で、恐らくここでダイゴの射撃能力が試されることになったのだろう。一発のみの理由は仕損じると『エネルギーを逆に相手に与えることになる』と書かれているが、山本優はゴーディアンもマドクター側の機体も同じエネルギーで動くと考えていたのだろうか。マドクター側のメカ設定はここにはないので分からない。この中で本編でも使われたのはガトリング・アームのみである。
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