無垢な青

血管が肉を裂き、皮膚を突き破ったとしても。

(野菜を切る母の後ろ姿から聞こえてくる音が怖かった。母の顔がスマホの光で少し明るくなって、私なんか1ミリも見ていなかった。)

耳や鼻、子宮から内蔵の中で掻き回されて泡立った青い胃液が溢れ出して零れたとしても。

(押し倒された時ふかふかの心臓で浮いた気がした。部屋の電気が眩しくて、思わず笑った気がする。)

紐で手遊びをしていて、私を両手の親指と小指の4本の指で引っ掛けて固定された。右手の中指でみぞ落ちの皮膚を引っ掛けて、左手の中指で背骨の真ん中辺りの皮膚を引っ掛けて勢い良く引っ張っぱられたとしても。

(とても怖い夢を見た気がした。まるで、ずっと大きな蛆虫が骨や筋肉の流れをつたうようにぐちゅぐちゅと音を立てながら這い回られている感覚だった。)

私は何も思わなかった。それを受け入れ、それに何の違和感も持っていなかった。なぜなら私は、彼女の顔が赤い糸で吊られたような笑い方がたまらなく見入ってしまうほど大好きだったから。今は、血に染って、どんな顔だったらすら分からない。それが当たり前だと思った。たったそれだけだった。

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