第8話 嵐の前の静けさ(ミオ視点)

 ミオが鍵を閉める前に尋ねると


「大丈夫!」


 とリコから元気の良い返事が返ってきた。しかし、間髪入れずにヒヨリが放った言葉は場を凍りつかせた。


「ユイっちのスマホは?」


 『なんだから』『最初に持ってたんだから』みんながそんな目で見ている気がした。

 正直、もう持っていたくはなかった。私ざ持っていたんだから次は他の誰かに持ってて欲しかったけれど、馬鹿正直にそれを口に出せるほどミオは阿呆ではなかった。


 また、静まり返る。その無言の圧力に耐えかね、ミオが「うちが・・・・・・」と言いかけた時だった。


「じゃあ、俺が持ってるよ〜」


 名乗りを上げたのはキョウゴだった。


「電源は切っておいても良い?」


 そう聞かれ、ミオは頷くことしかできなかった。


「・・・・・・あ、じゃあ、鍵は返しておくからみんな戻って大丈夫だよ!」


 なんとか明るく振る舞う。職員室に鍵を返して出てくると、もう誰も待ってはいなかった。

 部活の時ならバスの時間まで一緒に話しながら待ったり、靴を履くのが遅い人がいればみんなが外で待っていてくれるのに・・・・・・。


 ほんの少し寂しさを感じながらサナチンとミサ、カンカンが待っているであろう、そしてリコ、コハル、ヒヨリがいるであろう教室へ向かった。

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