第6話 沈黙の放送室(リコ視点)

 何か言わなければ、でも何を言えばいいのか分からない。


「その、遺書・・・・・・ってやつを、よ、読むんじゃ・・・・・・ないの?」


 思い切って発した声は自分の声とは思えないほど震えていた。

 リコが何かを言ったことで演劇部員達は、少なからず安堵した。しかし、事態はそう甘くなかった。


「だから!それをどう読むかって言ってんの!お前ら、自分のスマホにロックかけてないわけ?」


 ソウタが明らかな苛立ちを見せる。


「ちょ、もう少し声抑えて!」


 ミオが慌てて制止する。ここは本来この時間昼休みに自由に使って良い場所ではないのだから当然だろう。ミオが放送委員だから使えるというだけだ。

 ソウタが溜息をつく。今度は抑えた声で言い放った。


「はいはい、すみませんでした」


 拗ねている。こうなったら面倒くさいことになるのはみんな分かりきっている。

 気まずい空気が流れる中、それを知ってか知らずかコハルが言った。


「でも、私たちに見て欲しいなら、ロックは解除してるんじゃないかな?」


 するとまたもや溜息をついて


「こんな馬鹿な奴らとやってらんないわ。昼飯食う時間無くなるし、帰るわ」


 そう言い残して放送室を去った。残された面々の間には気まずい空気が流れていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る