自宅の変化
俺は病院から出て気がついたら、家にいた。移動していた時の記憶はなかった。考え事をしていたわけでもない。むしろ何も考えられなかったという方が正しい、ような気がする。
だが家には入れない。警察が何やら調べていた。この時間になっても鑑識やらなんやらが沢山いる。
「今日どうしよう」
そんな一言に気がついた警察関係者が俺に声をかけてきた。
「この家の住人さんで?」
「そうです。僕が最初に見つけて救急車を呼びましたけど」
「そらちょうど良いですな。ちょっときていただけますか?」
大阪というよりも、京都、もしくは三重よりの喋り方の刑事だ。だけど安心できる大人という感じだ。
「あの、皆さんはどのくらいで帰られるのでしょうか?」
「そうですね、あと一時間もかからんと思いますけどね」
「それと、はじめに今回のことは本当にご愁傷様でした。我々警察一同、絶対に犯人を見つけますので、ご協力よろしくお願いします」
刑事は丁寧に頭を下げた。俺は突然そのような不慣れなことをされて呆気に取られた。
「あのどうやって、この家に?」
「それはですね、敷島さんのお父さんですよ。ついさっき、君が倒れたことと相まって病院に行かれましたけど、どうやら、入れ違いになってしもうたようですね」
「はあ……」
正直それしか答えようがない。というか、父さん今日は近くにいたんだ。帰る予定でもあったのかな?
いや、そんなことより今は……
「ほんなら早速ですけどいいですかね?」
そうして、軽い事情聴取は始まった。といっても、俺はアリバイもあるし、今日倒れたこともあってそんなにたくさんのことは聞かれず、15分程度で終わった。そのあとは世間話などをしたり、少し慰めてもらったりして時間は経って、検証が終わると言っていた一時間が経つと、そんならこれで終わりですけどね、また日を改めて連絡しますんで、そんときに話聞かせてくださいな、と言い警察は引き上げていった。
「なんか現実感がないな……」
思わず誰もいない空間に対して声が漏れ出てしまった。声に出さないとやっていられないのかもしれない。
「疲れた……」
もうダメだ動けないと思いながら、二階に上がり、ご飯も風呂も入らないで、着替えだけしてベッドに倒れこんだ。
そこから先の俺の記憶はない。
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「くくく、面白い小僧だ。我を久しく楽しませてくれる契約者になってくれそうだ」
「あら珍しいわね、あなたがそんなに期待するなんて」
「あそこまで大きな力の波動自体見るのが、初めてだ。その上に、小僧の一つ一つの発言がな」
「ふーん、あなたがそれでいいのならそれでいいのだけど」
そこには二体の奇体がたたずんでいた。不思議なこと空間で、二体は茶を飲んでいた。
この二体の仲が随分といいようだ。側からしたらそれ以外のことは読み取ることはできないのであった。
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そんな嘘だ。嘘に違いない。嘘であってくれ。なぜ、二人が二人とも襲われなくちゃいけないんだ。
「ちょっと運転手さん、急いでください!!」
言っている私の方がクレーマーに違いことをしていることは重々承知している。だが今の私にはそんなことを言っている心の余裕は皆無だ。とにかく早く、早く、早く帰る。これしか頭の中にはなかった。
「着きましたよ」
「急かせてすまなかった、釣りは取っといてくれ」
私は料金よりも少し多めの金額をタクシーほ運転手に渡すと、運転手は頑として受け取ろうとしないが、それでも置いていくような形でタクシーから降りた。
私たちが住んでいるその家の前には警官がわんさかといる。報道でしか見ない光景が私の眼前には広がっている。
もはや、私たち家族の家のはずなのに、それとは別の建物のように思えた。
「すみません、この家の家主ですが」
私は近くにいた警官にそう切り出した。こう言ったとき、どのように声をかければ良いのか全くわからない。
「少々ここでお待ちください。上の者を呼んで参ります」
若い警官はそういうとその場を離れた。数分もしないうちに若い警官とともに食えなさそうな警官が来た。
「わざわざ申し訳ありません」
「いえ、そんなことよりも妻と娘は? 息子の姿も見えないのですが」
「息子さんは奥さんと娘さんの付き添いで病院に一緒に行きましたが、ショックだったのでしょう。そこで倒れてしまったと聞いています」
新たな情報だった。そもそも突然警察から連絡が来た。その時から私の考えていることは一つ。無事であってほしいということだけだ。
だが、そんな望みも息子が倒れてしまったという事実を聞いて、複雑な気分になってしまう。
息子は肝が座っている。よっぽどのことがなければ、倒れるということはないはず。にもかかわらず倒れた。
何か私の中で、一つの認めたくない結論が、導き出されようとしている。私にそれを抑える手段はなく、それを見ないようにすることしかできない。
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