最終話 先生の指
私は目を閉じ、寝たふりをした。
頭をふらふらさせつつ、上着で隠れた部分では先生の手を握ろうとしてた。
でも、怖かった。
――気味が悪いとか思われるかな?
そんな心配してくてもいいのに、妙に照れ臭い。
掛けた上着の中で私は先生の手の周りを行ったり来たりしてた。
すると、先生は私の頭を自分の肩に置くと私の手を握ってくれた。
――大丈夫
その言葉にならない気持ちが嬉しかった。
また、泣きそうになった。
でも、先生の上着なので涙の染みが付くのも悪いので我慢した。
先生の手は骨が浮き出て繊細な指をしていた。
冷たくて気持ちよかった。
やがて、本当に私は夢を見た。
夢の中で私はさらに小さい子になっていた。
幼稚園児だろうか?
おそらく、それぐらいの小さい子になり私は二人の大人に手を引かれて土手を歩いていた。
たったそれだけなのに、私は充実感と喜びがあった。
夕焼けの土手を歩く。
そこに、悲しみはなかった。
苦しみもなかった。
空はどこまでも赤く、風は涼しい。
目を覚ました。
薄目を開ける。
隣に先生はいなかった。
入口に目を移すと、誰かと、きっと二人目の『先生』と何か話していた。
二人は私の視線に気が付いたのか、顔を向けたが慌てて私は寝たふりをする。
先生は、もう一人の先生から上着を借りるとそのまま中へ入っていた。
――きっと、今度は保護者達を怒るのだろう
そんな予感がした。
二人目の先生が先生のいたところへ座った。
私は頭の置き場がないようにふらふらする。
すると、二人目の先生は強引に頭を持つと自分の太ももに置いた。
そして、手を持つと私の胸に置いて自分の手も置いた。
二人目の先生の手はとても武骨で分厚く太く硬い手だった。
彼の手もとても安心できた。
そこで目が覚めた。
その部屋は私の部屋で周りには本があり、空の代わりに天井がある。
夢だったのだ。
ただ、枕もとには涙の跡があり、顔は涙でぐしょぐしょだった。
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