第23話 恋せよ乙女?

Side 美樹






小さいころから"おとなしい子"とよく言われた。

学校に入ってからも香澄や香織姉の後をついて回っていた。

本を読んだり、歌を歌ったり、絵を描いたりと人見知りで友達も少なかったけど、香澄や香織姉のおかげで寂しくはなかった。


でも、社会人になった今も人見知りはあり、男の人と話しをするのは正直今でも苦手。

少しでも人見知りを改善するため、カラオケオフや香織姉に紹介してもらったバンドのライブに出たり頑張っているが、こればかりは直ぐには治らないみたい。


でも、広木さんは何故か最初から平気だった。

"自分と同じガボールファンだから?"

何でかわからないけど、広木さんと話しをしていると楽しかった。


そして、何故か広木さんとは仕事も一緒にすることになった。

大好きなラノベの恋愛作品の様な出会いにもしかしたら"運命"なのかもと思った。

正直よくわからない。これが初恋?

でも、かなめも香澄も香織姉も応援してくれた。


ほとんど記憶にないけど酔っ払った私は甘え上手でしゃべりも饒舌らしい。

明日は広木さんとデートだ。


さっき待ち合わせ場所を新宿に変更する連絡があった。

かなめ情報の通り池袋に行くとの事。


正直、男の人と二人きりのデートなんて初めてだし、上手く話しとかできるか不安しかないけどみんなの応援にこたえるためにも頑張りたい。

そして、広木さんともっと仲良くなりたい!


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Side かなめ



返事しなきゃな・・・・

小さいころから一緒にいた一つ下の男の子

カッコよく成長し、いつの頃からか異性として意識してしまっていた。

そんな彼は私と同じ高校に進学してきた。


運動部だった彼は女子からの人気も高かったけど、私は。。。

そんな彼が私の高校の卒業の時に告白してきてくれた。

もちろん私は彼の事が好きだったけど、その気持ちを受け入れられる自信が無かった。

だから、幼馴染のいいお姉さんという都合のいいポジションを確保して告白を断った。。。

彼も落ち込んでたけど、私も家に帰って泣いた。。。自分が情けなくて。。。


それから学校が変わったこともあり、お互い顔を合わせることも話をする機会も減ってしまった。


"このまま私の事は忘れてくれていい"そう思っていた。


でも3年前彼が就職先で鬱気味になり退職したという話しを聞いたとき、すぐに彼の家まで行ってしまった。彼女が居るかもしれないし幼馴染の姉さんも邪魔なだけかもしれないけど会って話しをしたかった。


数年ぶりに会った彼は、少しやつれていた。

でも彼は、私の事を昔のように"かなめ姉"と呼んでくれた。あの頃のままに。。。

それからは、お互い近況を報告したり家の前で会えば雑談できるくらいの関係には戻れた。


そして、一昨年彼は新しい会社に就職した。

無理はしないようにしているようだが、前よりもだいぶ明るくなってきたし、私にも積極的に話し掛けてくれるようになってきた。


そして、美樹と相原さんの件で相談の電話をしたとき美術館デートに誘われた。

美大を出ている私に解説をしてほしいという理由だったので、"仕方ないな~"と受けたけど内心は凄くうれしかった。

そして昨日。まだ美術館デートも行ってないのに次のデートに誘われた。


水族館にプラネタリウム。ある意味デートの定番。

『スケジュール確認して連絡する』とその場は終えたけど、断る理由はない。。。

でも、あらためて思う"私でいいの?"


明日の美術館もだけど、彼と二人きりになったら多分頼れるお姉さんは演じきれない。。。でも、私も1歩踏み出したい。


だから彼に電話する。


「はい!慎吾です」

「水族館の件だけど・・・・・」


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Side 香澄



自分で言うのもなんだけど、私は結構モテる。

女子校だったのに他校の生徒から告白されたりもしたし、自分磨き・女子力アップも努力してきたつもりだ。

お付き合いした方も何人かいるし経験もしてる。


ただ、付き合った人は私の外見ばかりを見て内面をあまり見てくれなかったし、むしろ趣味の話しをすると嫌悪感を持たれることもあった。


"ガボールオタクで腐女子でコスプレ好きの何が悪い!!"


かなめや美樹は趣味の事を理解してくれてるし、某イベントで知り合ったリリカに至っては薄い本も作ってるコスプレ仲間。ある意味で同志だ。

だから傷つくのも嘘の自分をみせるのも疲れるから恋愛はしないことにしていた。

でも、彼は違った。


初めて会ったのは姉さん主催のガボールカラオケオフ会。

第1印象は、かなりマニアックな話しも出来る陽気な人という印象だった。

お酒好きで、仕事が早く終わった時は姉さんの店でバイトもしていた。

私も時々店を手伝っていたので、会話の機会も増えた。


"面白い人"ということで好感は持てたけど嫌われたくなかったから自分の本当の趣味は封印していた。


でも、彼は私以上に"濃かった"

「引かれちゃうかなぁ~」なんていいつつ、通好みのアニソン歌ったり某イベントでの思い出やアニメ、ラノベの話しを楽し気に語ってくれた。

いつの間にか私も心を許し『この人なら大丈夫かも?』と自分の本当の姿を話した。

当然のことながら彼は私を受け入れてくれた。

外見だけじゃなく、趣味の話しても楽し気に聞いてくれた。

何だかすごく嬉しかった。。。


彼曰くオフ会で私をみて一目惚れしたらしいけど、今は私がベタ惚れですw


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