第3話 金のお話

とりあえず天使アリスは山神の肩に乗って、ふんふんと鼻歌を歌いながら上機嫌だった。

「なんか機嫌良いな。」

山神は家に帰りながらイライラしながら言うと、

「そりゃ、だってあーた、私の懐にマネーが入ってくるのよ。マネーが。」

アリスが嬉しそうに言った。

「給料は入ってこないの?」

山神はアリスに聞くと、

「私、営業職なの。」

アリスは淡々と答えた。山神は、?という顔をすると、アリスはため息をつきながら、

「日本の保険会社と同じで、営業職の給与体系については『成果主義』の考え方を取り入れているから、全員が同じ給料をもらう訳じゃないの。契約件数など営業成績によって給料が変わってくるのよ。日本の保険会社と同じで、成果に応じた歩合給なの。」

アリスが淡々と説明すると、

「福利厚生や待遇面についても良いの?」

山神はアリスに不思議そうに聞くと、

「何言っているの?天使は死なないから、福祉なんてないわ。」

アリスが怒りながら言うと、山神は少し笑った。

(福祉が無いなんてざまぁ。)

山神は内心思うと、

「聞こえてるわよ。」

山神の耳を引っ張った。

「痛たたっ。聞こえてるの?」

山神は焦って聞くと、

「天使だからよ。」

アリスは淡々と答えた。

(天使だったら、いいのかよ。)

山神は心の中で思うと、

「天使だから良いのよ。」

アリスはふふんと言いながら答えた。

「ところで、何でイライラしているの?」

アリスは不思議そうに山神に聞くと、

「何で保険の代償が寿命なんだよ。」

山神は怒りながら答えた。

「まぁ、所謂下界で言う所の生命保険ね。」

アリスは淡々と言うと、

「真の生命保険か・・・。」

山神は少し納得してしまった。

「しかし、寿命はやり過ぎでないか。僕の寿命が減るんだろ?」

山神は心配そうにアリスに聞くと、

「寿命は金で買えるわ。」

アリスは淡々と答えた。

「えっ?金で買えるのかい?それは少し都合が良すぎるのでは?」

山神は意外そうに聞くと、

「この世だろうが、あの世だろうが、世の中金よ。金。金でないと駄目よ。どこもかしこも資本主義よ。下界だって、医者に治して貰ったら長生きするでしょ。それと同じよ。」

アリスは熱弁した。

「そうかな・・・。」

山神はなんか納得した。

「日本では地獄の沙汰も金次第って言うでしょう。」

アリスは山神に言うと、

「それは、地獄の話だろ?」

山神は呆れながら言うと、

「あ、そっか。」

アリスは気づいたように言った。

「天界も金なんて、神はいるのか。」

山神は辛く言うと、

「失敬な日本だから八百万の神々がいるわ。」

アリスは強く言った。

「天使は西洋じゃないの?」

山神はアリスに聞くと、

「良い質問ね。」

アリスは教師のように答えた。

「うちはキリスト教系の日本支部なの。」

アリスは山神に説教するように言うと、

「僕仏教徒だけど。」

山神は答えた。

「そこは顧客だから、宗教は関係ないわ。」

アリスはしれっと言った。

「そうなんだ。顧客・・・。」

山神は驚いて言うと、アリスは答えた。

「金は宗教を越えるのよ。」


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