第18話
一八、優勝旗目指して
翌日、青柳監督から呼ばれた。
「高橋、うちには、もう一枚、ピッチャーが足りない。
出番は無いかも知れないがピッチャーとして急務だがピッチング練習してくれ!
練習相手は私から青井に伝えておく。」
「はい…」
思いもよらない監督からの話しだった。
「じいちゃん、俺、もしかして甲子園で投げれるの?」
「まず無いな!今のままではな!」
試合の無い日は、青井とピッチング練習を行った。
「何だ…この球は…」
夜は又、青井はキャッチング練習。
相手は龍馬が付き合っている。
陸も夜、私の指導で右肘の出し方。下半身の使い方など教えシャドーピッチングで感覚を確認していた。
義男と小百合も甲子園近くのホテルに宿泊し、陸の活躍を期待した。
小百合が、「陸、この前は試合出ませんでしたね…」
「そりゃそうだろ。この前、野球覚えた奴が試合に出るなんて悪いよ。
皆んな、甲子園を夢見て練習して来たんだし。
でも、陸は変わった。そして強くなった。」
「おじいちゃんの力かしら…」
「それもあるけど、監督やチームのみんなが支えているから陸は、頑張れると思うよ。」
「ほんと、ありがたいわね…前の陸だったら、と思うと…あの時は心配だった。」
青柳監督が、「明日は準決勝だ。
先発は稲生で行く。リリーフは岡本、二人共、最後の試合と思って全力で投げてくれ!渋谷商業は手強いぞ。うちと同じでピッチャーが三人いる。
みんな、タイプが違って、バッターが慣れてきたら、ピッチャーを代えてくる。
今までの試合、予選を含めて、全てが一試合、三点以内に抑えられている。打線もピッチャーの配球を読みデータ野球をしてくる。岡本も稲生も自分のクセに注意しろ。」
「はい!」
決勝は龍馬、一本で行く作戦か?準決勝、苦しい展開になるかも…
準決勝
大明学園✖︎渋谷商業
先発は稲生、陸は九番、ライトで出場した。
相手ピッチャー林は、打たせて取るピッチングで大明学園の打線のクセや苦手なコースや変化球を巧みに投げ分けてくる。
ナインは、
「打てない球じゃないのに、全て裏をかかれる。」
その中、一人、気を吐いたのが陸だった。
一打席目から初球をセンター前ヒット、その後、盗塁、田中がバントで送りランナー三塁。中山が、どうにかレフトに犠牲フライを打ち三回に大明打線が先取点を取った。
青柳監督は、陸をスタメンで使った意味が私は解った。
陸は、ほとんどデータがなく感性だけで打つから相手にしたら厄介だ。
青柳監督は、「自分の苦手な配球とコースを読め!そして、その球を打て!」
しかし、苦手な事は、そう簡単に打てない。
続く陸の二打席目、林のスライダーを完璧に捕らえた。
ボールはレフトスタンドに…
レフトは一歩もうごけず呆然とボールが消えたスタンドを見るだけだった。
陸の高校通算二本目のホームランだった。
「陸、凄いぞ!何で簡単に打てるんだ?」
「結構、打ちやすいピッチャーだよ!」
渋谷商業は林に代え二番手、永井に代えた。
左のサイドから投げる曲者のピッチャーで
球はクロスに入り苦戦した。
四回を終わり2対0で大明学園がリードしていた。
五回の裏、岡本がヒットを打たれ続くバッターはバントで送りランナー二塁。
キャッチャー青井は岡本に得意のカーブをインコース低めにサインを出した。
打者は打席の位置を変え岡本のカーブを完璧に捕らえレフトフェンス直撃の二塁打。
一点を返された。
続くバッターも岡本のスライダーをセンター前に落として、同点にされた。
青柳監督は、審判に何かを言っている。
「二塁のランナーがサインを盗みバッターに伝えている。
確認して下さい。
スポーツマンシップに反する行為です。」
審判は集まり、確認し渋谷商業の監督に注意を行った。
六回よりピッチャー岡本に代わり稲生がマウンドに立った。
稲生は六回を三者凡退に抑え、試合は七回の表、大明学園の攻撃、三番、早田がファーボールで歩き、今大会、絶好調の牟田を迎える。
牟田は陸に、
「どうしたら、打てる?」
「何も考えず、牟田の苦手はインコースだよね!打席を離れて打てば?」
「なるほど…ありがとう陸」
林は困ったが、外角いっぱいに投げたら、さすがの牟田でも打たれこない!
永井は外角にストレートを投げ込んだ。
牟田はフルスイング、ライトのポールを巻いた。
牟田は外角が大好きで腕が長く追いつけていった。
ホームラン!球場が湧き上がった。
その後も各打者、打席の立つ位置を変え、林、そして三番手、森尾も打ち、終わってみれば8対3で快勝した。
試合後、渋谷商業の監督から青柳監督に、「誠に申し訳ございませんでした。
勝たせたい一心で…選手達にも、恥をかかしてしまいました。」
「勝たせたい気持ちは一緒ですよ。
しかし、よく研究して素晴らしいチームでした。」
大明学園、決勝進出。
決勝相手は大阪代表 華川学園だ。
菊池スカウトは青柳監督に電話をした。
「青柳!高橋をこれ以上、使うな!
俺の隠し球、他の球団に持って行かれたら、お前のせいだぞ…」
青柳監督の心境は、それどころじゃなかった。
青柳監督、自身、初めての決勝進出で震えが止まらず、ナインに激励をした。
「お・お・前達の力は本物だ〜
私に夢を与えてくれた。あ・あ・明日は三年生最後の▲✖︎○*◾️??」
涙と緊張で、日頃は冷静沈着な監督が舞い上がっていた。
部員は笑いを抑えるのに必死だった。
「んんんっ…明日のスタメンを発表する。
一番 セカンド 田中奏
二番 ショート 中山輝斗
三番 センター 早田順也
四番 レフト 牟田蓮
五番 ファースト 入江治
六番 キャッチャー青井岳
七番 サード 吉井和正
八番 ライト 益田海斗
九番 ピッチャー 福田龍馬
以上」
陸の名前は無かった…キャッチャーは青井岳が入った。
監督は青井の努力を気づいていたのだろう。
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