第10話



一〇、マネジメント

 

 ようやく一年生も慣れ、三年生にとっては最後の夏の大会が七月から始まる。

 今年こそ、先輩を甲子園に連れて行きたい。

 最後は先輩から認めて貰いたい。

 その気持ちで龍馬はキャッチャーの構えるミットに魂のこもったボールをぶつけた。

 陸は、一年生から遅れてる事、一カ月、やっとボールを握らせて貰った。

 見違えるほど、投げるフォームは美しくなりバットスイングも力強かった。

 何より、両投げ両打ちだ。

 龍馬が久しぶりにキャッチボールの相手をしてくれた。

 しかし、ボールを握って投げたら、感覚を掴めずキャッチボールでも暴投ばかり…

 でも、龍馬は陸の進化を目の当たりにした。

 球はさほど、早くないが、この球の回転、地面から這い上がってくる球道。

 前、キャッチボールした時より確実に進化してる。

 周りも驚きを目にした。

 青柳監督と島崎副部長は、目を合わせ、ニャッと笑った。

 そして、夏の大会の予選でメンバーの発表が行われた。

 三年生にとっては最後の夏、三年生だけでも四〇人、メンバーに選ばれたい。三年間の集大成だ。

 緊張と共に監督の発表に耳を傾けていた。

「登録メンバーは一六人、番号で発表する。まず、一番、…」

 一番は基本、エースピッチャーで九番まではレギュラー候補だ。

「一番、福田龍馬。二番、糸田茂雄…」

 次々と呼ばれた。

 レギュラー候補に選ばれなかった先輩は、仕方なくメンバー入りに気持ちを切り替えていた。

 ベンチ入りから外れたら、スタンドからの応援、先輩達にしてみれば、この地獄の様な練習に耐えても結局、最後はスタンド応援、

これが勝負の世界である。

 残りの一枠…

  「高橋陸。」 

 周りは、ざわめいた。

「高橋て二年生の…?

 部室の裏で投げ方の練習してた、素人?」

 青柳監督は言葉を続けた。

「高橋については、マネージャーとしての登録だ。」

 なるほど、私は青柳監督の意図としてる事が解った。

 陸、自身は納得して無かったけど、

「俺は野球したくて入ったのに、マネージャーてどう言う事だよ!」

 しかし、二年生でベンチ入りしたのは、龍馬と陸の二人だけだった。

 家に帰ると、直ぐに親に報告した。

「お父さん、お母さん、ベンチ入りしたよ。」

 二人共、びっくりしてた。

 義男は、

「二百人いる中からベンチ入りしたのか?凄いな!絶対、応援に行くぞ!

 お父さん、ありがとう!」

 龍馬は陸に、

「絶対、甲子園に行こうな!」

「うん!」

 

 翌日から予想以上の陸にとっては過酷な日々が待っていた。

 マネージャーは女子は三人、森郁子さん(三年生)佐藤里奈(二年生)大場桜子(二年生)

 三人とも可愛いので、好かれようとして、皆んな、ご機嫌をとっている。

 しかし、キツい仕事や面倒な仕事は陸ばかり…。

 まず監督から言われたのは、選手の管理とスコアーブックの記入、相手の癖や一球ごとの球種を記入し、選手の皆に伝える。

 今の陸には無理だ。

 ルールも、ろくすっぽ解ってないのだから、…

 しかし、私はあえて教えなかった。

 これから先、陸の成長の為に…

 陸は不思議と頑張った。

 龍馬の声援で陸は変わったか?

 

 

   

 

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