第6話

 


 


  六、友情


 


 陸は家でプレステ2なる不思議なゲームをしてる。


 テレビ?ていう物に向かいあって。


 他のゲームも好きだったが、私が喜ぶと思って野球ゲームをしてるかも知れない。


 だからゲームの中で私は陸と楽しんでる。


 しかし、この現在、不自由なく何でも手の入る時代で毎日が驚きの連続だ。


 電化製品、持ち運び出来る電話。…


 だから、今の世の中、苦労や忍耐を忘れているのではないか?。


 しかし、今は人を殺す兵器を作らず、心が豊かになる便利な物を作る技術は素晴らしい。過去と現在が上手く調和し噛み合えば、この世の中、捨てたもんじゃない。


 


 私は陸に将棋を教えた。


 将棋は、きっと、周りから見て、一人将棋と思うだろう。


 相手がいる勝負に陸は、はまった。


 陸は、おじいちゃんが教えてくれる事が、何より嬉しかった。


 昔、陸が小さい頃、お手玉、折り紙を、おばあちゃんから教えて貰った日を思い出し、あの日と重ね合わせた。


 今度は、おじいちゃん、無茶苦茶な事ばかりしてくるけど、おじいちゃんと居れば暖かい。


 


 学校の休み時間、陸は龍馬を誘った。


「龍馬、将棋しない?」


 陸から、してみれば初めての友達に話し掛けた。


 龍馬は「将棋は、解らないけど、花札なら出来るよ。」


 陸は龍馬に、


 「花札は、誰から教わった?」


 と問いかけた。


「今は居ないけどお父さんだよ。」


 私は思った。


 私は、義男に何も教えてあげられなかった。


 だから、義男も陸に…


 


 翌日より休み時間、花札を龍馬とした。


 最初は私がやったが、陸もルールを理解して、そのうち、数人が寄って来て、花札ブームがやって来た。


 練習が休みの日、龍馬が陸を誘って昨年、オープンした久山のコストコに行った。


 龍馬は母と一緒に作ったコストコのカードで中に入り店内を物色した。


「でっかい商品がたくさんあるな!


 ホットドッグと、ドリンク飲み放題で一八〇円で玉ねぎなんか、入れ放題で試食も至る所であるんだってよ。」


「本当かぁ〜!行こう!」


 二人は、まずはホットドッグと入れ放題のドリンクを買った。


「お腹、空いてないから後で食べようぜ。」


 と龍馬が言った。


 どうも、この二人、主導権は気の強い龍馬が握った模様だ。


 


 二人は店内を見回していたら、肉売り場の試食に牟田が並んでいた。


 陸は、「あれ、うちの学校の牟田じゃないか?」


 龍馬は、牟田が野球を辞めた理由をなんとなく解っていた。


 


 俺のせいで野球を辞めたんだ。


 俺のワガママのせいで、こんな楽しい野球を奪ってしまった。


 きっと、こんな気持ちになったのは牟田だけじゃないはず…  


 本当に申し訳ない事をしてしまった…


 龍馬は、自分が買ったホットドッグを牟田に差し出し、


 「良かったら食べてよ!」


「いいのか?」


 三人は飲食出来る所に戻って、新たに龍馬はホットドッグとドリンクを注文した。


 三人はホットドッグに大量の具材を入れケチャップを大量に付けテーブルに座り溢れんばかりに口一杯にかぶりついた。


「美味いな!」


 三人は食べながら龍馬が突然に、


「牟田、悪かったな!俺のワガママで皆んなに迷惑かけて…


 牟田、また、一緒に野球やらないか…。


 今度は、大明学園で全員の力で全国制覇しないか?


 俺、牟田お陰でずいぶん助けられた事があったよ。


 でも、あの時は、自分の事しか見えてなかった。


 中学の全国制覇は皆んなの力で勝ち取った事を俺は気づかなかったんだ。


 すまん。許してくれ…」


「……俺、この前、野球部のグランド土手からみてたんだぁ…


 お前、変わったな…。


 なんかさぁ〜野球離れたら、急に寂しくなって…


 俺は野球しか無いのかなぁ…。


 もう、特待じゃないけど、戻れるかなぁ…」


「戻れるさ!


 俺から皆んなに紹介するから!」


「ありがとう!でも、ホットドッグで気持ちが動いたんじゃないからな!」


「わかってるよ!」


 陸とおじいちゃんは二人の様子を見ているだけだった。


「おじいちゃん、友情て良いかもね!」


 そうだな!ホットドッグの力もあったかも知れないな…


 


 その後、牟田は高校を代表するバッターに成長するのであった。


 


 


 二月に学校でクラス対抗の音楽発表会が行われる。


 龍馬と陸は全く、興味なし。


 しかし、クラスは優勝目指して熱くなっていた。


「一年二組のテーマ曲、何にする?」


 洋楽や、今、流行の曲があげられたが、なかなかまとまらない。


 クラスの中心的な櫻井律子が、発言しない龍馬と陸に問いかけた。


 「福田君は、どんな曲が好き?」


   「ん…っ」


 「じゃ、どんな、音楽を聴いてるの?」


   「中島みゆき」


 周りは、


「中島みゆきって、曲いいよねー」


「私、大好き!」


 続いて、櫻井律子は陸に聞いた。


「高橋君は中島みゆきの曲の中で何が好き?」


 陸は、


  「時代…かな?」


「いいねー!」


「時代にしようよ。」


 龍馬と陸は、上手く乗せられた感じだったが翌日より、クラスは昼休みに猛練習を重ねて、二人は少しずつ皆んなとの距離を縮めていった。


 音楽発表会、当日、クラスは一つになり、時代を熱唱した。


 (♪ そんな時代もあったねと、いつか話る日が来るわ…)


 結果は全クラス、五位で入賞した。


 優勝は逃したが陸や龍馬にとって最高の一日になった。


 私は陸に、「時代という曲いいな、いい曲は、今も昔も変わらない!」


 そしてこの曲は皆んなの思い出に残るだろう。


 


 私は陸に龍馬が練習しているグランドに誘った。


 陸は仕方なくグランドに足を運んだ。


 その時、練習試合で龍馬が投げていた。


 その姿に以前とは違う雰囲気を感じ、笑顔が出て、周りにも声掛けを行なっていた。


 余裕が出て、一回り大きく感じられた。


 

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