第5話

五、友達作り

 

  翌日より私は陸にイタズラぽい、おせっかいを実行した。

 家では、大きな声で、

「おはよう!おやすみ!」

 学校でも、誰でも、「おはよう!」と陸から怒られつつも会う人、皆んなに声掛けを行なった。

「おじいちゃん、頼む!辞めてくれ!」

 しかし、私は辞めなかった。

 クラスメイトは最初、あいつ頭、打っておかしくなったんじゃないの…?とか言ってたが、だんだん周りから陸に、おはよう!元気?とか話し掛けてくれるようになった。

 陸も悪い気はしない。

 しだいに自分の気持ちで、「おはよう!」が言えるようになった。

  

 そんなある日、学校帰りにグランドで野球部が練習試合をしているのを目にした。

 あの投げてるピッチャーは誰だ。

 凄まじく球が速い。

 私のいた職業野球でも、十分通用すると思う。

 しかも、見た事の無い、落ちるボールを投げる。

 後から陸に聞いたらフォークボールと言う魔球だそうだ。

 私の時代には、そんな魔球を投げる投手はいなかった。

 身長もあり物が違う。

 打ち取ったあたりはサードゴロ、しかし、 をサードがエラー。

 まだ、一年生なのに気にせず、グローブを投げて怒鳴ってる。

 あの子は誰だと陸に尋ねた。

「福田龍馬て言う奴だよ。いつも俺と一緒でクラスでは浮いた存在でいつも一人で居る、自分とはタイプが全く違うけどね。」

 龍馬とは、また、偉い名前やの!

 福田龍馬は野球部でプロから早くも注目を浴びていて、よくスカウトがやって来る人物だ。

 

    ー一年前ー

   

 中学三年の全国大会

 決勝戦、

 龍馬は、中学日本一をかけて、マウンドに立っていた。

 相手は三連覇中の静岡東中学校。

 七回最終回、得点は一対〇。

 龍馬がいる、古賀中学がリードしていたが、突然、ストライクが入らず、三者連続のファーボール。

 ナインが集まり、龍馬に声を掛けたが龍馬は、「キャッチャーが、ちゃんと取ってくれないから、仕方なくコースを狙わないといけないんだよ!

 しっかり取ってくれよな!

 後ろに逸らされるのが怖くて、変化球なんて投げれないよ!」

 

「……。」

 

 続くバッターは、ボール玉に手を出してくれて試合は、龍馬がいる古賀中学が、どうにか全国優勝を果たしたが、ナインは全員で勝ち取った喜びはなかった。

 

 龍馬は多くの有名校から特待で誘われてはいたが、自宅から近い大明学園を選んだ。

 

 古賀中学の野球部で四番で主砲だった牟田は、「福田が野球部に入るんだったら俺、野球辞めるわ!」と特待で入った大明学園の野球部には入らず帰宅部になっていた。

 

 優勝ピッチャーで、大明学園に入学して陸と同じクラスだが、常に一人の力で全て勝ったと思い込むワンマンな性格は変わらず、今では、二年生や三年生からも嫌われて、相手にされてない。

 実力があるから試合には出てるけど、周りからの風当たりは強い。

 私は彼に興味が湧いた。

 陸が彼の机を横切ろうとした時、彼に私は話し掛けた。

「おい!龍馬、俺と友達にならないか…」

 陸もたまげたが龍馬も、唖然とした。

「バカじゃないの?何で、お前と友達?

 意味が分からん!

 俺は、友達なんか要らないんだよ!

 ましては、お前と友達?勘弁してくれよ。

 もう、いいだろ!

 あっちへ行けよ!」

 

    「ごめん…。」

 

 陸は、また、おじいちゃんの無謀な発言に嫌気がさした。

「何で、俺が、あんなヤツに謝らないといけないんだよ!

 それに友達?…勘弁してくれ!」

 

 翌日、授業が終わり、龍馬の方から陸に近づいて来た。

「昨日は、すまなかった。

 ちょっと、びっくりして…

 よく、考えたら、お前と俺、似てるよなぁ…

 友達もいないし…

 

 友達になってもいいぞ!

 陸て呼んでもいいか!俺は、お前から呼び捨てにされたけどね!」

 

  「あぁ…っ」

 

 

 なんか、アイツ、上から目線だったよなぁ…

 友達なんて面倒くさいなぁ…

 

 龍馬は今まで一度も、どんなスポーツも負けた事がないが一年の体育会の紅白リレーのアンカーで陸に抜かされた思いが忘れられなかった。

 しかも部活に入らず、特待生でもないヤツに負けるとは…龍馬も以前から陸に興味津々だった。

 

 陸は最初は戸惑っていたが、徐々に似た環境だった事で親しくなっていった。

 

 話す会話は、ほとんどなく私はこんなんで友達…?と思ったが…

 龍馬と居る時も、私は仲間に声掛けを行なった。

 しだいに、龍馬にも、みんなが寄って来た。

 しかし、もともとは龍馬は学校でも有名生徒だ。

 今までは近寄りがたい存在だったが、女の子からも話し掛けてくれるようになって、少しずつ距離が縮まってるように感じた。

 陸にとって、高校生活、初めての友達で龍馬にとっても同じ気持ちで笑顔が出てきた。

 周りも陸と一緒に居る龍馬にも、おはよう!て声を掛けてくれた。

 龍馬は陸に、

「友達って良いかも…今から、陸、体育館まで駆けっこで競争しないか?」

 

 小百合は義男に、

「最近、陸、妙に挨拶したり変よね…明るくなったて言うか?」

「ん…陸も変わろうとしてるんじゃないか?俺達も、ちゃんと向き合わないとな…

 今度、旅行でも行くか?」

「家族の旅行て、無かったよね…」

「今度、ゆっくり、三人でプランを立てよう。」

 

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