第4話
四 二人三脚
意識が戻ってからの間、私と陸は周りにバレずにどうにか、やっていた。
て、言うのも、私は喋らずにいたからだ。
結構、喋らない生活はしんどい。
唯一の楽しみは病院の食事。
こんな美味しい食事が出来るなんて本当に有り難い。
私の時代、毎日が玄米や里芋ばかりだったが、それでも、お腹に入るだけでも幸せであった。
陸は大事していたバイクが事故で廃車し、もんもんと日々を過ごしていた。
そんな、ある日、病院でCT検査が行われた。
陸を担当していた、鬼塚担当医はCT検査の結果を見て驚くしかなかった。
何故なら陸の脳が二つあるのだ。
鬼塚は意味が解らないまま、陸が回復し問題ないと感じた為、退院を認めた。
「陸君、これから毎月、通院に来て下さいね。いろいろな検査を行いますので!」
鬼塚は、ニヤッと笑った。
陸の学校生活が始まった。…と言っても仕方なくの学校生活だったが…
教室に入り、陸を心配して待っていた生徒は誰もいない。
普段通りの日常での学校生活だ。
私は思った。
あまりにも寂し過ぎる。
何故、この子には心配してくれる友達や仲間が居ないのか?
私は孫の陸に聞く勇気が無かった。
陸はバイクが無くなった為、「あ〜っ、バイク乗りて〜ぇ」
が口癖になった。
学校が終わり、バイトが休みだった、明美が陸の学校の校門で待っていた。
「陸、元気にしていた?バイク全然、乗ってないし、久しぶりに二ケツして海岸、ぶっ飛ばしに行かない? それとも、もう、バイクは怖い?」
私は、思わず、
「女が運転するバイクなんて乗れるか!」
と私は言ってしまった。
明美は、少し驚いて笑った。
陸からそんな言葉が出てくるとは思わなかったからだ。
陸は、
「うそ うそ、明美、海、見に行こう!」
陸はヘルメットの中で
「じいちゃん、黙れって!」
と小声でつぶやいた。
明美のバイクの後ろににまたがり、海岸沿いをぶっ飛ばした。
小雪が降る中、寒さを堪えて明美にしがみ付いた。
「ひぇーっ…寒い!怖い!助けてー」
明美は運転しながら笑い転げた。
海辺に着き陸と明美は浜辺を歩き出した。
明美が陸に、
「最近どう?学校馴染んでる?」
陸は、
「馴染んでなんかないけど、最近、何か寂しくないんだ。バイクは無いけど…明美も居るし、そして…」
陸は言葉を止めた。
海岸に着きバイクを止め明美は、
「陸は、おばあちゃんに育てられたの…?陸が入院してた時、お母さんに聞いたの…もしかして、おばあちゃん子だった?」
「うん…おばあちゃんには何でも話せた。
今の明美と同じさ。
悪い事すれば怒ってくれて、そんな、おばあちゃんが大好きだった。
でも、病気で亡くなって、その日、以来、俺は頼れる人が居なくなった。
父さん、母さんは優しいけど俺の気持ちを理解してくれない。
父さんは、父親が早く亡くなって育て方が解らないって俺の前でも平気で言ってるし…」
私は思った。
陸は明美さんに言っているけど私にも伝えていると感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます