第212話 テリヤキチキンマヨ

 柑奈ちゃんと茜ちゃんが手を繋いで歩く姿を見せられつつ、私はみんなのところへ戻った。


 敷かれたレジャーシートの上で、これまた珍しい姿を見つける。

 愛花ちゃんがひまわりちゃんに膝枕されながらお昼寝していた。


「なんか珍しい光景だね」

「ふ、ふふふ……」


「どうしたのひまわりちゃん」

「愛花ちゃんがかわいい……」


「わかる」


 私だって愛花ちゃんに膝の上で寝られたらこうなるだろう。

 ほわほわ癒されている私たちのところに、鼻息の荒い彩香ちゃんが近づいてくる。


「わかってるわね、ひまわりちゃん!」

「うひゃっ!?」


 いきなりすぎてひまわりちゃんがビクッとなっている。

 そんなことしたら、膝の上の愛花ちゃんが起きちゃうよ?


「あ~、私も愛花ちゃんを膝枕した~い」

「お姉さん、怖いです……」




 それぞれ自由にのんびりとした時間を過ごす。

 今日は私もあまり動き回らずにダラダラとしていた。


 寝るのもいいかなと思ったけど、寝そうになりながらギリギリ耐えるのもまた良い。

 ぽかぽか陽気がほわほわ心地よいのである。


 そういえばそろそろお昼ご飯の時間か。

 この公園にはレストランもあったはずだ。


 でも私たちはお弁当を持ってくることにしていた。

 それぞれが自分の分を用意しているけど、私はみんなにも食べて欲しくてちょっと多めに作ってきている。


 いっそ全員分作っても良かったかもしれない。

 私は大量に料理をするのもけっこう好きだ。


 遊んでいるみんなを呼び、お弁当タイムとする。

 みんなのお弁当を見てみると、茜ちゃんと珊瑚ちゃんはサンドイッチだった。


 私も同じくサンドイッチだ。

 柑奈ちゃんの分も同じ。

 それからみんなで食べようと唐揚げもたくさん作ってきた。


「さあ、自慢の唐揚げを食べるが良い」

「めちゃくちゃある……」


 茜ちゃんもびっくりするぐらいの量だった。


「気合入れて作ったよ~」

「唐揚げならいくらでも食べられる自信あるよ」


 そう言って茜ちゃんは一個口に放り込む。

 私は残念ながらいくらでも食べられる自信はない。


 なんだか最近、胃が油ものを受け付けなくなってきている。


 歳なのだろうか。

 私はまだ女子高生なのだが……。


 自分で作っておいてなんだが、唐揚げは若い衆に任せておこう。

 というのも私の大本命はサンドイッチ。


 私史上最高傑作かもしれない、テリヤキチキンマヨサンドだ。

 もう名前だけで勝利が約束されているようなもの。


「な、なずな、それはまさか……」

「気付いてしまったかい、茜ちゃん」


 唐揚げを頬張っていた茜ちゃんが私のサンドイッチを見つけて震えている。


「ひとつ食べる?」

「食べる~!」


 サンドイッチをひとつ茜ちゃんに手渡し、そして同時に食べる。


「「んま~」」


 やはりテリヤキマヨは最強だ。

 ひとつ目のサンドイッチを平らげ、水筒で持ってきていたコーヒーを飲む。

 なんとも贅沢な時間だ。


 こうやってみんなで外で食べているという状況も、またさらにおいしく感じさせているのかもしれない。

 そしてこのテリヤキマヨ、実はソースとして少し持ってきているのである。


 何をするかというと……。

 唐揚げにつける!


「姉さん、待って!? ま、まさかそれは」

「見てしまったかい、柑奈ちゃん」


 隣でサンドイッチを頬張っていた柑奈ちゃんが、私のしようとしていることに気付いて驚く。


 私としては、唐揚げは塩コショウが好きではある。

 しかし、このテリヤキマヨをつけた唐揚げもまた美味。


 テリヤキチキンでもなかなかのものだが、わざわざ唐揚げにこのソースをつけるという悪魔の所業。

 抗えるものは少ないだろう。


「食べる?」

「食べる~」


 私と柑奈ちゃんは同時にテリヤキマヨ唐揚げを頬張る。


「「んま~」」


 やはりテリヤキマヨは最強だ。


 その後もおかずを交換したりしながらお昼ご飯を食べ終える。

 私は河原に移動し、別の水筒に持ってきていたココアを飲みながらまったりしていた。


「ふぅ~」


 ちょっとこってりしたものを食べ過ぎたかもしれない。

 胃もたれをしているのか?


 私も歳だな。

 私はまだ女子高生なのだが……。(2回目)


 あ~、ダメだ。

 眠くなってきた。


 お腹いっぱいになっていきなり眠くなるとか、ちょっとあれな気がする……。

 まあ、ちょっとくらい寝てもいいかぁ~。


 もう完全に頭の回っていなかった私は、その場でごろんとなって意識を手放した。

 おやすみなさ~い。


「……」

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