第213話 膝枕と妄想の物語
ふと目を覚ます。
どうやら本当に眠ってしまっていたようだ。
でもなんでだろう、頭の下がやわらかい。
意識がはっきりしてくると、その理由が分かった。
「起きましたか? なずなさん」
「珊瑚ちゃん」
私は珊瑚ちゃんに膝枕されていた。
何がどうなってこうなっているのか。
「私はなぜ膝枕をされているの?」
「それはですね、私がやってみたかったからですね」
「やってみたかったんだ」
「はい」
されたいではなく、やりたいのか。
なんとも珊瑚ちゃんらしい気もする。
それにしても心地よい。
やわらかいし、いい香りもする。
さすが珊瑚ちゃん。
これがお嬢様ってやつか。
下から眺めるお胸も良いものだ。
こうしていると、せっかく起きたのにまた眠ってしまいそう。
なんだかこどもの頃を思い出す。
そういえば幼いころに、こうしてお母さんに膝枕してもらったことあったなぁ。
私を覗き込むお母さんの笑顔が好きだった。
それと見上げた先にある大きな胸も。
よく手を伸ばしてぽよんぽよんしていたものだ。
「きゃっ」
「あ、ごめん」
思い出に浸っていたら、間違えて珊瑚ちゃんの胸をぽよんぽよんしてしまった。
これは失敬。
それからしばらくぼ~っとしていると、またまた眠たくなってきてしまう。
これはダメだ。
心地よすぎる。
「ねえ、珊瑚ちゃん」
「どうしました?」
「交代しよう」
「え?」
「私が珊瑚ちゃんを膝枕してあげるね」
「ええ!?」
私は体を起こすと、珊瑚ちゃんの前に座る。
そして膝をポンポンと叩く。
「さあ、おいで~」
「はわわわ……」
なんだかもじもじとしていた珊瑚ちゃん。
恥ずかしそうにしながらも、しばらくしてそっと私の膝に頭を置いた。
お~。
いいね~。
見上げてくる珊瑚ちゃんもすごくかわいい。
目がウルウルしているように見える。
やばい。
吸い込まれそうだ。
「良い眺めですね」
「青空がきれい?」
「いえ。大きなお胸で空は見えません」
「それは言いすぎでしょ」
そんなことが起きていたら、私から珊瑚ちゃんの顔は見えないはずだ。
「どう?」
「そうですね。なんだか……」
「なんだか?」
「とても良いものですね。思っていたよりも落ち着きます」
「それはよかった」
しばらくすると珊瑚ちゃんが目を閉じた。
眠たくなったのかもしれない。
気持ちはよくわかるよ。
目を閉じている珊瑚ちゃんの顔が目の前にある。
じっと見ていると、なんだかキスをしたくなってしまう。
そんなわけにもいかないので、とりあえず代わりに頬を撫でる。
「ふえ?」
珊瑚ちゃんは驚いて目を開ける。
なんかごめん。
そしてついでにプニプニする。
とてもやわらかい。
何もかもが極上。
それが珊瑚ちゃんだ。
私ではこうはならないだろう。
「はわわわ……」
髪の毛もさらさらだ。
指を入れるととろけるような肌ざわり。
マイクロファイバーみたいだ。
「はわわわ……」
髪をすくって鼻の前に持ってくる。
いい香りだ。
お花のような甘い香りと、それから石鹸のような爽やかな香りが混ざっている。
目を閉じると浮かんでくる。
お花畑で泡まみれになっている珊瑚ちゃんの姿が!
大事なところは泡と謎の光で見えないが、なんと美しい姿だ。
いろんなところが、揺れる、動く!
そしてこのリアルなやわらかい感触!
……。
いかんいかん、邪な妄想をしてしまった。
ごめんよ、珊瑚ちゃん。
「はわわわ……」
「どうかしたの珊瑚ちゃん?」
と、言ってから気付く。
私の手がいつの間にか珊瑚ちゃんの胸を揉みしだいていることに。
しまった!
髪の毛も胸もあまりにもやわらかすぎて気付かなかった!
あとちょっと、さっきの妄想も原因かもしれない~!
「ごめんね珊瑚ちゃん。大丈夫?」
「永遠の眠りにつきそうです……」
「行かないで~!」
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