第211話 ポカポカでピクニック
放課後。
今日は同好会の活動予定もないのでまっすぐ帰ることにした。
帰り道、後ろから茜ちゃんが追いかけてきて一緒になる。
春らしいポカポカした天気が心地いい。
どこかへ出かけたくなるよね。
「ピクニックとかいいかもしれない」
「いいね~。行こうよ」
「え、行っちゃう?」
「うん。いいんじゃない?」
思い付きでつぶやいただけだったけど、こうなると本当に行きたくなってしまう。
「それじゃあ行きますか、あの公園へ」
「……どの公園?」
週末になり、ピクニックに行くため駅前に集合。
メンバーは我らが同好会の4人。
それから柑奈ちゃんにひまわりちゃんと愛花ちゃんだ。
私と茜ちゃんでお弁当も用意した。
準備万端。
さっそく電車に乗り込む。
この電車で移動するというのが楽しいのである。
後のバス移動はちょっと苦手だけど。
ただみんなとおしゃべりしていればそんな時間も楽しく過ごすことができた。
直通のバスを降りると公園はもう目の前。
大自然に囲まれた、癒しのスポットだ。
春の風がポカポカで気持ちいい。
「やばい、寝そう」
そんなことを口にすると、隣にいた茜ちゃんがふふっと笑った。
「場所取ったら、シートを敷いてしばらく寝る? 私の膝、貸してあげるよ」
「おっぱい貸して~」
「残念ながらなずなを満足させるようなものはついてないよ」
「ご謙遜を」
茜ちゃんの胸は大きさもやわらかさも私好みだというのに。
もっと自分に自信を持ってさらけ出して欲しいものである。
しばらく歩いて、前回来た時と似たような位置にレジャーシートを敷いた。
ここは川も近く、裏にあるアスレチックへも移動しやすい。
眠いけど、寝たらもったいないのでちょっとお散歩しよう。
歩いていれば眠気もとんでくれるに違いない。
さすがに歩きながら寝たりはしないだろう。
ひとりでふらふら歩いて奥の方へ行く。
アスレチックエリアをひょいひょいと進む。
スポーツ少女の私には、これくらいなら半分寝ていても余裕である。
そしてある地点に到達し、足がとまった。
「ここでかおりちゃんに出会ったんだよねぇ」
よくこんな電車とバスを乗り継いで来るようなところで出会って、今も関係が続くものだ。
意外と有名なのだろうか、この公園。
それにしてもあれだ。
このアスレチックエリアはあまり春って感じがしない。
やはりせっかくなので、春のポカポカな風とお花の甘い香りを堪能したいところ。
よし、戻るか。
「うわっと」
「おおっ」
いきなり振りむいて帰ろうとすると、すぐ後ろに茜ちゃんがいた。
追って来てたみたいだ。
さすが同じくスポーツ少女の茜ちゃん。
これくらいのアスレチックは余裕みたいだ。
「なずな、もう引き返すの?」
「うん。なんとなく来ただけだから。ちょっとお花の香りでも楽しもうかと」
「え……、なんかなずなのイメージじゃないね」
「そんなことないよ。私って清楚な女の子だから」
「大和撫子って言わないんだね」
「それだ!」
「自分で設定忘れてたね?」
「設定って言わないで……」
確かにちょっと、すぐに出てこなかった。
私の中の大和撫子が最近崩れていっている気がする。
もともとあったのかも怪しいが……。
「さてと。なずな、戻るなら手を繋いで歩こうか」
「え、なぜ?」
「なぜって言われると悲しいからやめて……」
「ごめん」
別に嫌とかじゃないけど、純粋になぜって思ってしまった。
私だって理由なく繋いでたりするのにね。
よし、繋ごう。
そう思って茜ちゃんの手を握ろうとした時だった。
「よっと」
「おおっ」
タイミング良く柑奈ちゃんが現れる。
まるで忍者のようにどこからか飛んできた。
本当にどこから来たんだろう。
「茜ちゃん、邪魔しに来たよ」
「柑奈ちゃん、邪魔しに来たって……」
茜ちゃんが柑奈ちゃんをジト目で見る。
その視線……、こちらにもください!
「ふふん。茜ちゃんは私が手を繋いであげる」
「なぜ……?」
そう言いながらふたりは手を繋ぐ。
そして私をおいて元の道を引き返していった。
「……え? どういうこと? 私は何を見せられているの?」
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