第210話 雨の日のバス停にて
学校からの帰り道。
ひとりでのんびり歩いていると、ぽつぽつと地面が濡れていく。
確かに曇ってはいるけど、まさか降り始めるとは。
大したことはないのでしばらく無視して歩いていると、徐々に勢いが強まって来た。
ちょうど屋根付きのバス停が目に入ったので逃げ込む。
そしてさらに強まる雨音。
諦めて逃げ込んだのは正解だったね。
スマホで雨雲レーダーを見てもすぐには止みそうにない。
しばらくこんなところで雨宿りするのか。
はやく帰りたい。
ゲームでもするかなぁ。
少しブルーな気分になっていると、そこに天使が舞い降りる。
偶然にもひまわりちゃんが駆け込んできたのだ。
「ひまわりちゃん!」
「なずなさん! 偶然ですね」
「だね。すっごい濡れてるね、大丈夫?」
「大丈夫ではないですけど、仕方ないです」
なんとかしてあげたいけど、残念ながら私はタオルなどを持ち歩いていない。
最悪どこかで諦めて家まで走ろう。
この私が抱きかかえて、最速で家まで送り届けてみせようじゃないか。
それにしてもさっきからひまわりちゃんがチラチラとこっちを見ている。
何を見ているんだろう。
……胸?
はっ!
濡れて私の下着が少し透けて見えているじゃないか。
くっ、だが隠すようなものを今は持っていない。
ここは仕方ない。
さあ、ひまわりちゃん。
私の恥ずかしい姿、もっと見て!
いや、ちょっと待ってよ?
私が透けているということは、もっと雨に打たれているひまわりちゃんはどうだ?
間違いなく透けているのではないか?
うん。
実は気付いていた。
でも気付かないフリをしていたんだ。
私はチラチラみたりはしないよ?
ガン見するからね。
「あの、あんまり見ないでくださいよ……」
「あ、ごめん」
くっ、気付かれてしまったか。
嫌がっているならガン見は止めておこう。
「それにしても、エッチなゲームでありそうなシチュエーションだよね」
「な、何言ってるんですか?」
「いや、ごめん。忘れて」
小学生相手に何言ってるんだ私は。
完全にヤバいやつだよ。
しかし、しかしだ。
濡れて透けてるんだよ。
これが興奮せずにいられるか?
否!
これで何もしないのはひまわりちゃんに対して失礼というもの。
ここはおいしく頂いておくのが礼儀というものではなかろうか。
「寒い……」
「大丈夫?」
やはりずぶ濡れ状態でじっとしているのはつらいものがある。
せめて私の上着でも貸してあげたいが、そこそこ濡れているので意味はないかもしれない。
しかし、そこでひまわりちゃんからお願いをされる。
うるうるした目で超かわいい。
「濡れてて嫌かもしれませんけど、ギュってしてくれませんか?」
え、嘘だよね。
これなんてエロゲ?
「お安い御用だよ」
喜んで抱きしめちゃうよ。
ギュっ。
……。
私の服に水が染みこんでいく……。
これ、何か意味あるのだろうか。
「もう大丈夫です」
「え? もういいの?」
「はい。ばっちりです」
「……ばっちり?」
十分あったまったってこと?
疑問に思っていると、ひまわりちゃんの視線が私のある部分に固定されていることに気付く。
……胸?
そう、さっきのハグによって私の服がさらに濡れ、そしてさらに下着が透けていたのだ。
それはもうくっきりと。
「なずなさん、けっこうエッチな下着つけてるんですね♪」
「はめたね、ひまわりちゃん!」
「えへへ。やっぱり濡れてる姿ってエッチですね」
「いい趣味してるよ」
やはりひまわりちゃんは将来有望である。
「なずなさん、写真撮っていいですか?」
「この姿を!? やだよ!」
「え~」
「じゃあひまわりちゃんの写真も撮っていい?」
「うっ、む~……」
悩むひまわりちゃん。
どうだい、君がやろうとしたことはそういうことなのだよ。
さすがにここは引き下がるでしょう。
そう思っていたら。
「わかりました! 同じ枚数写真撮っていいですよ!」
「何枚も撮るつもりなの!?」
うぐぐ……。
なにやらおかしなことになったぞ?
しかしだ。
ひまわりちゃんのスケスケ写真を手に入れるチャンスでもある。
仕方ない。
「よし、撮りたまえ!」
「ありがとうございます!」
そして謎の撮影会が始まる。
お互いに恥ずかしさで頭がうまく回っていない中、夢中でシャッターボタンを押す。
ここがどこなのかも忘れて。
しばらく白熱の撮影会を繰り広げる。
けっこう時間が過ぎていたのか、いつの間にか雨は止んでいた。
そしてついにバスがやって来たのである。
降りて来る人はいない。
つまりこのバスは私たちがいたからここに停まったわけで。
さっきまでの撮影会は運転手さんにばっちり目撃されていたことだろう。
幸いにもいくつかの系統が停まるバス停なので、しばらく固まっているとバスは去っていった。
超恥ずかしい。
そしてさらにとどめを刺される。
「何してるの君たち……」
そんなつぶやくような声に振りむくと、そこには茜ちゃんと彩香ちゃんが立っていた。
……超恥ずかしい。
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