第159話 赤坂家とバッティングセンター

 今日はひまわりちゃんに誘われてのお出かけ。

 柑奈ちゃんは誘われてなかったようなので、いつもの小学生ズの集まりではなさそうだ。


 ちょっと嫌な予感がしないこともないけど、私と遊びたいと思ってくれているなら嬉しい。

 やましいことがあるわけではないけど、こそっと家を抜けだそうかな。


 そう思って静かに玄関にむかうと、タイミング悪くリビングから柑奈ちゃんが出てきた。


「姉さん、出かけるの?」

「ああ、うん。ちょっとひまわりちゃんに誘われてね」


 嘘つく方が後々面倒なことになりそうだったので正直に話す。

 すると予想していたのとは違う反応が返ってきた。


「ああ……。頑張ってね」

「何を!?」


 もしかして何か知っているのだろうか。

 ちょっと不安になってきたぞ……。


「じゃあ行ってきます」

「行ってらっしゃ~い」


 柑奈ちゃんに笑顔で見送られる私。

 楽しそうな笑みがさらに不安になった。


 なぜだ。

 今から天使に会いに行くだけなのに……。


 待ち合わせの場所に着くと、すぐにひまわりちゃんの姿を見つけた。

 天使すぎて一瞬だった。

 背中に羽根が見えるよ。


「ひまわりちゃん、やっはろ~」

「こんにちは~」


 お互いに手を振りあって、なんだかとても幸せを感じるひとときだ。

 そして私は少し後ろの方にいた紅葉さんにも挨拶をする。


「紅葉さんもこんにちは~」

「はいっ、こんにちは~!」


 こちらとも手を振りあう。

 紅葉さんもやはり母娘なだけあって天使みたいだ。

 相変わらずミニスカートが似合っていらっしゃる。


「って、なんでママがここにいるの!?」


 そして紅葉さんの存在に驚くひまわりちゃん。

 一緒に来たわけじゃなかったのか……。


「付いてきたんですよ」

「なんで!?」


「私もひまわりちゃんと遊びたいんです~」

「いつも遊んであげてるでしょ」


「どこがですが~? 全然足りませんよ~」


 ぶ~っとふくれる紅葉さん。

 まるでシスコンお姉ちゃんみたいでかわいい。

 実に良いですな。


「あと、ひまわりちゃんには言っておきたいことがあります」

「な、何?」


「なずなちゃんは私のものですからね! ひまわりちゃんにはあげません!」

「がう~!!」


 視線をぶつけ、火花を散らす赤坂母娘。

 やめて、私のために争わないで!


「私はなずなちゃんとひまわりちゃんだったら、迷わずなずなちゃんを選ぶ自信があります!」

「娘の前ですごい発言しないで! せめてちょっとくらい迷って!」


 それでいいのかひまわりちゃん……。


「まあまあふたりとも、とりあえず今日は3人で遊びましょうよ」

「むむむ、なずなさんがそう言うなら……」


 ちょっぴり不満そうなひまわりちゃんではあるが、もともと仲良し母娘なので問題ないだろう。


「私は最初からそのつもりでしたけど」


 まあ、付いてきた時点でそうでしょうね。


「で、どこ行きます? アニメショップでも行きますか?」

「それはこの前行ったばっかりです」


 まあ、何度行ってもいいものだけどね。

 しかしひまわりちゃんはすでに行き場所を決めていたようだった。


「今日はバッティングセンターに行くんです!」

「バッティングセンターか、そういえば最近行ってないかも」

「体を動かしたい気分なんですよ」


 そういう割りにひまわりちゃんはスカートを履いているんだよね~。

 はっ、もしや誘われているのだろうか。

 これはパンチラ作戦というやつに違いない。


 くぅ~、負けないぞ~。

 と言いつつ、一瞬で負けそう。

 気付けばスカートの中に手が伸びていたりしないように頑張らないと。


「では行きましょう~」


 そう言って紅葉さんは私の腕に抱きついてくる。


「あ~、ママ何してるの!?」

「一緒に仲良く歩こうと思って」


「今日は私が誘ってるんだからおとなしくしてて!」

「ひまわりちゃんは前を歩いて案内してください」


「む~」


 ひまわりちゃんはかわいくふくれながら私たちの前を歩いていった。

 行き先は多分いつものバッティングセンターだろうから案内はいらないんだけどね。


 しかしながら、紅葉さんのやわらかな胸の感触を、私はわざわざ振りほどくようなマネをしたくない。

 ひまわりちゃんには申し訳ないが、このままでいさせてもらおう。


 幸せな時間を堪能しながら、私たちはやはりいつものバッティングセンターに着いた。


「ママ、勝負だよ」

「ふふん、いいでしょう。受けて立ちますよ!」


 なぜか突然、私をおいて母娘の勝負が始まった。

 ふむ、ならば仕方ない。

 私は後ろでその勝負を見守ろうじゃないか。


 ふたりは勝負内容を話し合い、それぞれ中に入っていく。

 私はスマホを取り出し、カメラアプリを起動した。


 いや、別にやましい気持ちは一切ない。

 ただふたりの母娘対決の様子をおさめようとしているだけさ。


 そう心の中で何者かに言い訳をしながら、私はカメラの照準をひまわりちゃんのお尻に合わせる。


 第1球目。

 さすがというか、最初からボールをしっかりと捉え、打球は気持ちよく飛んでいく。


 そして私のスマホのカメラもふわりと舞うスカートの中をしっかりと捉えナイスショット!

 だが、ひまわりちゃんのスカートの中は、見せパン用のフリフリぺチパンツだった。


 くぅ~。

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