第152話 彩香ちゃんとお買い物ミッション
放課後のこと。
同好会の活動も終わり、帰宅しようと準備をしていると、そばに彩香ちゃんがやってきた。
何かあったのだろうか。
「ねえ、白河さん。明日って空いてるかしら」
「明日?」
まあ、休日だし、空いてるといえば空いてる。
公園で女の子を鑑賞したり、家で可愛い女の子が出てくるアニメを鑑賞したりと、いろいろ用事はあるけど。
それは明日じゃなくてもできるしね。
「空いてるよ」
「ちょっと私に付き合ってほしいのだけど、いいかしら」
「いいよ~」
「じゃあ明日の午前中にまた連絡するわね」
「うん、わかった」
なんだかよくわからないけど、彩香ちゃんとのイベントが発生したみたいだ。
よし、明日が楽しみになったぞ。
というわけで翌日の朝。
彩香ちゃんから連絡が来て、その待ち合わせ場所である駅前の広場に来ている。
どうやら何かを買いに行くらしい。
私が必要なのかどうかはわからないけど、一緒におでかけするのは楽しいし。
なにより私に声がかかったのが、理由は不明でも嬉しい。
「白河さん、お待たせ」
「彩香ちゃん! 私もさっき来たところだよ」
なんて、本当のことを言っただけだけど、なんだかデートっぽい。
「じゃあ行きましょうか」
「うん。それでどこに行くの?」
「洋菓子屋さんよ。数量限定のシュークリームがあるらしいの」
「シュークリーム? 彩香ちゃんでもそういうのに興味あったんだね」
「どういうこと? まあ、私じゃなくて、食べたがってるのは愛花ちゃんだけどね」
「愛花ちゃんか」
「そうなの。本当は一緒に行くはずだったんだけど、今日は外せない用事ができてしまったのよ」
「それで頼まれたわけだね」
「いいえ。頼まれてないけど行くのよ。愛花ちゃんのためならたとえ火の中水の中」
「それは行き過ぎた愛だと思うよ」
「あなたがそれを言う?」
「どういう意味?」
「気付いてない!?」
なぜそこで驚かれるのか。
私が誰かのために無茶をしたことなどあっただろうか。
あくまでも私は自分の幸せと誰かの幸せの両方を追い求めるだけだ。
自分を犠牲になんてするつもりはない。
「相手のために自分を犠牲にする愛は続かないよ」
「そう、白河さんはブラック企業に勤めていても、それに気付かないタイプね」
「え、なにそれ。嫌なんだけど……」
もしかして、私は他人から見ると何か大変な目に合ってる人なんだろうか。
そんなつもりはないんだけどなぁ。
「さあ、そろそろ時間だし、行きましょうか」
「あ、私のあげた画像、待ち受けにしてる!」
時間を確認した彩香ちゃんのスマホ画面がちらっと見えた。
そこには私が加工した愛花ちゃんの合成写真が写っていたのだ。
「違うわ。スライドショーのひとつよ。あくまでも」
「ふ~ん」
「ニヤニヤしないで!」
まあ、そういうことにしておいてあげようか。
「って、あれ? 電車に乗るんじゃないの?」
「いえ、歩いていける場所よ」
「そうなんだ」
駅前の待ち合わせだったから電車だと思ってた。
「さあ、行列ができる前に急ぎましょう」
「え、そういう類のミッションだったのこれ」
それなら急がないと。
もし買えなかったら愛花ちゃんが悲しむよ。
いや、そもそも買いに来てること知らないのか。
まあ、買えたらきっと愛花ちゃん喜ぶだろうし、とりあえず急ごう。
そして彩香ちゃんに付いてむかった洋菓子屋さん。
どうやら間に合ったのか、他のお客さんはいない。
人気商品なら並んでそうなものなんだけど……。
でも確かに数量限定のシュークリームとは書いてある。
彩香ちゃんは何も疑問に思わないのか、さっさとお店の中に入っていった。
私も続いて中に入る。
そしてお目当てのクッキーシューを大量に購入。
いいのか、数量限定……。
なんとなく不思議に思いながら駅前まで戻る。
「白河さん、どうもありがとう」
「私が必要だったのかはわからないけど」
「何言ってるの! ひとり3個までしか買えなかったのよ」
「あ、そうだったの?」
一応制限あったんだ。
3個ってえらく緩いけど。
「これ、本当においしいのかな?」
「どう見てもおいしそうだけど?」
「まあ、そうなんだけどね」
確かに見た目はものすごくおいしそうだ。
しかし、しかしだ。
なんであんなに人がいないのだろうか。
「食べてみる?」
「いいの?」
「ええ、6個もあるし、私たちだけじゃ食べきれないだろうし」
「なんで6個も買ったの……」
「実は最初からあげるつもりだったの」
「え、ありがとう」
それなら、遠慮なくいただきます。
本当においしいのだろうな貴様。
パクっとな。
う。
うめぇ……。
なんだこれ、今までの人生で一番おいしいシュークリームだよ……。
今度私も買ってきて、柑奈ちゃんやお母さんにも食べさせてあげよう。
「それより、行列じゃなかったから大分時間が空いたわね」
「あ、じゃあどこか遊びに行く?」
「それもいいわね。じゃあいったん家に帰ってこれを冷蔵庫に入れてくるわ」
「うん、付いてく」
私たちはいったん彩香ちゃんの家にむかい、シュークリームをおいて再びお出かけをすることに。
行列のない洋菓子屋さんに感謝だね。
「それじゃあ行きましょうか」
「うん」
どこに行くのかわからないけど歩き出す私たち。
あ、手を繋いで歩くのはどうだろうか。
「ねえ、手を繋いでいい?」
「なぜ」
「なんとなく」
「……腕を組むくらいなら」
「そっちはいいんだ」
よくわからないが、じゃあ腕を組もう。
「えへへ」
「何が楽しいのやら」
「え~? こういうの楽しくない?」
「……楽しいかも」
「でしょ~?」
ふふん、彩香ちゃんもそう認めたことだし。
今日は楽しむぞ~!
お~!
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