第149話 柑これ
最近の私は食べ過ぎらしい。
確かにそうかもしれない。
今さら手遅れかもしれないが、とりあえず体重を量ってみようじゃありませんか。
私は覚悟を決めて体重計に乗った。
……。
「減ってる~!」
なんということでしょう。
前に量った時よりも体重が減っているではありませんか。
そのことにちょっと安心しつつ、でも逆に不安になる。
なにかの病気じゃなかろうか。
よし、今日は安静にしていよう。
ということで私はPCを起動し、今まで撮りためた柑奈ちゃんの写真コレクションを鑑賞する。
略して柑これ。
どこからか略すなと言われそうだ。
やっぱり柑奈ちゃんはかわいいなぁ。
マジ天使。
あ、そうだ。
この前に集めたジュニアアイドルの水着写真に、柑奈ちゃんを合成するというのはどうだろう。
せっかく空いた時間だしやってみよう。
柑奈ちゃんかわいいって思ってほしいなぁ~♪
私は柑奈ちゃんの顔面を切り取り、ジュニアアイドルちゃんの画像に合成する。
うまい具合に調整し、違和感のない完璧な画像が出来上がってしまった。
私天才か?
最高傑作だ。
この気持ちを誰かと共有したい。
珊瑚ちゃんにおすそ分けしてあげよう。
送信っと。
しかし、何度見ても素晴らしい出来栄えだ。
この技術があれば、大きくなった柑奈ちゃんのちょっとあれな画像すらも作れてしまうかもしれない。
うむ、今度試してみよう。
あ、そうだ。
今度は愛花ちゃんの分を作って彩香ちゃんに送ってあげよう。
日頃お世話になってるし、そのお礼をかねて。
となれば善は急げ。
愛花ちゃんかわいいって思ってほしいなぁ~♪
よし完成。
送信っと。
『すぐ消しなさい』
『はい』
怒られちった。
てへっ。
うん、写真もいいけどやっぱり生でしょ。
「というわけで来たんだよ」
「どういうわけか全然わかりませんが」
私の目の前には水着姿のありさちゃん。
例の温水プールに来ていた。
この時間に来ればありさちゃんに会えることはわかっているのさ。
いや~、やっぱり生の水着姿はいいねぇ。
「ありさちゃん、ぎゅってしていい?」
「別にいいですけど」
「いいの!? やった~。げへへ、げへへ」
「……やっぱりやめてもらっていいですか」
「そんなこと言わずに、ちょっとだけ、ちょっとだけだから」
「はぁ、わかりましたよ。ほら、早くしてください」
「ぎゅ~」
「うほっ」
なんか抱きしめたら変な声出したよこの子。
「でもせっかくなら、かおりたんを連れてきてくれたらよかったのに」
「かおりちゃんを?」
「そうしたらかおりたんの水着姿を拝めたのに」
「なるほど、その手があったか」
なんと素晴らしい提案だ。
今までなぜ気付かなかったのだろうか。
……いや違う。
私はかおりちゃんをそんな目で見たことはない。
見たことはないということにしている。
だから気付いてもすぐに忘れるようにしていたのだ。
だってあれは天使だから。
しかしそうか。
みんなまとめてここに連れてこれば、みんなの水着姿が拝めたんだ。
画像編集している場合じゃない!
今度はみんなを誘ってみよう。
「それにしても、そんなこと思いつくなんてありさちゃんはそういうことばっかり考えているの?」
「なずなさんにそんなこと言われたくないんですけど……」
「なぜ? 私の頭の中は常にきれいで美しいのに。ほら私、大和撫子だから」
「大和撫子? 私の頭の中は筋肉とかおりたんで埋め尽くされていますよ」
「それは大変だ」
さすがに冗談だろうから軽く流しておく。
「それよりなずなさんは柑奈ちゃんのこと大好きなんですよね」
「そうだよ」
「で、一緒に住んでるわけじゃないですか」
「まあね」
「じゃあ一緒にお風呂入ったりしないんですか? まあこの歳ではしないか」
「たまに入るよ」
「だったら、柑奈ちゃんの裸とか見てるわけじゃないですか」
「だね」
「なのになんで水着姿をそんなに求めるんですか?」
「ななな、何を言ってるの? 裸には裸の、水着には水着の良さがあるんだよ!」
「そ、そうですか……」
「裸が一番なんて言ったら、服屋さんが無くなるよ? 街中が裸だらけになるよ? なにそれ最高かよ」
「お、落ち着いてくださいなずなさん!」
「ありさちゃん、今度誰もいない海で一緒に裸になって泳ごう」
「それはちょっと楽しそうですね!」
「え……」
冗談だったんだけどな……。
「あ、どうせなら泊りで行きたいですね」
「それは楽しそうだね」
「一緒にお風呂にも入れますよ」
「ええ!? 一緒に入ってくれるの?」
「ふふふ、体洗ってあげますよ」
「え、それは無理……」
「なんでですか!?」
「だって恥ずかしいし」
「え、何言ってるんだこの人……」
そんな目で見ないで~。
私はやっぱり見るのが好きなの~!
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