第107話 まさかの小路ちゃんルート?

 偶然出会った小学生とお別れをし、みんなのいる公園へと戻ってきた私と彩香ちゃん。

 見渡してもお母さんの姿がないので、どうやらまだ何かの作業を続けているらしい。


 私が公園の入り口に立っていると、それを見つけたひまわりちゃんが駆け寄ってくる。

 ものすごくかわいいので思わず抱きしめてしまった。


「くんくん、なんか知らない女の子のにおいがしますね」

「ええ!?」


 なんと、そんなにおいとかでバレてしまうというのか。

 恐るべしだ。

 いや、別にやましいことは何もないんだし、私は堂々としているけどね。


「姉さん、浮気でもしてたの?」

「あ、柑奈ちゃん」


「姉さんは少し目を離すとすぐこれなんだから」

「でも連絡先を聞きそびれちゃったし、これっきりになっちゃうかな~。あ、別に浮気とかじゃないからね」


「どうだか。それに姉さんのことだから超奇跡でもおこして再会するに決まってる」


 そんな奇跡、起こせるなら起こしてみたいものだ。


「柑奈ちゃん嫉妬してるの?」

「するわけないでしょ」


「そっか、してたら今夜は一緒にお風呂に入って、一緒に寝ようかと思ったんだけど……」

「もう、しょうがない姉さん。一緒にお風呂入って、一緒に寝てあげる」


「あ、ありがとう」


 柑奈ちゃんも素直じゃないなぁ。

 まあこれで今夜の楽しみができたというものだ。

 楽しみ過ぎてやりすぎちゃうかもしれないな。


「いいなあ柑奈ちゃん。私も何かして欲しいなぁ」

「え、ひまわりちゃん、私と一緒にお風呂で寝たいの!?」

「なんか混ざってますよ、なずなさん!」


 いけないいけない、ちっとばっかし興奮しすぎてしまったか。

 まあ良い。


 このままこのテンションを保てれば、奥手な大和撫子である私でも大人の階段を登れるかもしれない。

 ふふふ、ははははは。


「なずなさんが変な顔してる……」

「あ、小路ちゃん」


 私が変な思考をしていると、いつの間にか小路ちゃんがそばに来ていた。

 愛花ちゃんも一緒だ。

 さっそく彩香ちゃんが愛花ちゃんのもとに駆け寄る。


「愛花ちゃ~ん! ごめんね、寂しい思いをさせて」

「え、別に寂しくなかったけど……」


「気を遣わなくていいのよ愛花ちゃん! さあ、存分に甘えていいからね」

「ちょっと離れてお姉ちゃん」


 どうやらほったらかしにして寂しい思いをさせたと勘違いしてるらしい彩香ちゃん。

 もはや愛花ちゃんとの距離はゼロセンチメートルだった。


「うぐぐ……、お姉さん助けてください」


 ほっぺにほっぺをくっつけられて離れられない愛花ちゃんは私に助けを求めてきた。


「ほほえま~」

「ほほえまないでください!」


 どうやら本気で嫌がってるみたいだ。

 これはまたやらかし彩香ちゃんになる前に助けてあげるとするか。

 主に彩香ちゃんの方を。


「彩香ちゃん、そういうの人前でやるのはよろしくないと思うよ」

「はっ、それもそうね。私たちもこういうことはお風呂の中でやるべきよね」

「う~ん……」


 それはそれで愛花ちゃんが嫌がりそうだけど……。


「まあ、そういうことだよ」

「ありがとう白河さん。あなたがストッパーとしていてくれて助かるわ」

「どういたしまして」


 とりあえずこの場は愛花ちゃんを助けられたことだし、良しとしますか。

 私が自分の功績に満足していると、不意にくいくいと服が引っ張られる。

 ロリかわいい感触に驚きながら振りむくと、小路ちゃんが私を見上げていた。


 ちょっともじもじとしていてすごくかわいい。

 なんだろうこの感じ。

 告白でもされるのだろうか。


 思えば確かに最近小路ちゃん関連のイベントをけっこうこなしていた。

 好感度がかなりたまっていてもおかしくない。

 まさかこのお出かけが小路ちゃんルートのイベントだったとは。


「どうしたの小路ちゃん。誰もいないところに移動しようか?」

「え? いえ、別に大丈夫ですけど……」


 ふむ、なんと、公開告白をしようというわけですか。

 なるほど、これはつまり、『なずなお姉さんは私だけのものです!!』と高らかに宣言するわけですね。


 まさか小路ちゃんがそんな大胆なことをしようなんて。

 いや~、愛されてるなぁ私。


「あの、なずなさん」

「なあに?」


「あっちの方に神社があるみたいなんですけど、一緒に行きませんか?」

「え、神社?」


 告白じゃなかった~!!

 あっぶな~い!!


「あ、興味なかったですか……?」

「いやいや、そんなことないよ」


 ちょっと思ってたのと違っただけで、私も神社とかは結構好きだ。


「よし、じゃあ行こうか。あんまり遅くならないようにしないとね」

「そうですね。ちょっと距離があるので走っていきましょうか」


「走るの?」

「はい。途中で橋を渡るので景色もいいかもしれませんよ」


 もしかして、私が海を見たら走りたくなるとか言ってたことをちゃんと覚えてくれていたのか。

 でも小路ちゃんはそうじゃないんだよね。

 ちょっとそれは心苦しいところもあるなぁ。


「小路ちゃん、私に合わせてくれなくてもいいんだよ? おぶっていこうか?」

「だ、大丈夫ですよ。それに私、もっとなずなさんのこと知りたいので」


「え?」

「海を見たら走りたくなる気持ち、私もわかったらいいなぁって思って」


「小路ちゃん……」


 なにこれ、超いい子。

 マジ天使大和撫子。


「小路ちゃん、結婚しよう」


 って、何口走ってるんだ私。

 これは言っちゃいけないやつだよ。


 ちょっと焦りながら、小路ちゃんの反応を見る。

 すると、小路ちゃんはまるでお姉さんのようなやさしい笑みを浮かべ。


「本当にそうなったらいいですね」


 そう言った。

 はい、小路ちゃんは大事なものを盗んでいきました。

 私のハートをね(笑)

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