第47話 小百合と同人

 私は白河小百合。

 高校生と小学生の娘を持つ、二児の母だ。


 小学生の娘である柑奈ちゃんは、最近まで私の母の家に預けられていた。

 実の姉妹でありながら、私のせいでずっと離れ離れにさせてしまっていたのだ。


 その母が亡くなり、柑奈ちゃんは私の家で暮らし始めることになった。

 なずなちゃんも大きくなり、私も生活が安定してきたので一緒に暮らすことに問題はない。


 ただなずなちゃんはお年頃なので、実の姉妹とはいえ、いきなり家族が増えるということに抵抗がないか心配ではあった。


 柑奈ちゃんの方は一度頼まれて、なずなちゃんをこっそり見せてあげたことがある。

 もっと小さいころだったけど、野球をしているなずなちゃんを見て、すっごく驚いていた。


 どういう偶然なのか、ふたりはすでに知り合いだったのだ。

 当然ふたりが姉妹だということは教えていない。

 そんなものを抜きにして、ふたりは出会い、仲良くなっていた。


 いくら近くに住んでいたとはいえ、よく学校も違うのにそんな状況になるものだ。

 なずなちゃんの方は多分、自分に妹がいたことすら覚えてなかったんじゃないかな。


 そんな柑奈ちゃんを引き取り、なずなちゃんに妹だと告白する時は私もドキドキだった。

 柑奈ちゃんはすごく緊張して落ち着かない様子だったけど、なずなちゃんの方はサプライズまで仕掛けて意外と普段通りだった。


 私はこの時までふたりが姉妹だと伝えてはいなかったのに驚きもしない。

 なぜかはわからないけど、きっと柑奈ちゃんが妹だと気付いてたんだろうなぁ。


 元々お友達だったこともあって、なずなちゃんは柑奈ちゃんに抱きついたり、なでなでしたり、ずっと笑顔だった。

 小さい子が好きななずなちゃんだから、小学生の妹と一緒に暮らせるということが嬉しかったんだね。


 ちょっと危ない性格ではあるけど、もしかしたら寂しい思いをさせた反動かと思うと何とも言えない気持ちになる。

 でもそのおかげで柑奈ちゃんをむかえることに抵抗がないのなら、それは救いだと思った。




 そんな少し昔のことを思い出しながら、玄関の扉を開く。

 あら? 今日はふたりとも家にいるはずなのに静か……。

 不思議に思いながらリビングに入ると、ソファに座っているなずなちゃんの後姿が目に入った。


 もしかして寝っちゃってるのかな?

 中に入ってなずなちゃんの前まで来ると、その膝の上に頭を預ける柑奈ちゃんの姿があった。


「あらあら、仲良しでいいわね」


 ふたりそろってソファでうたた寝。

 なんとも微笑ましい光景だった。


 でもなんで柑奈ちゃんはうつぶせなのかな?

 普通膝枕だったら仰向けじゃない?


 むむむ……!

 なんだか創作意欲が湧いてきちゃったわね!


 お礼になずなちゃんのスカートを柑奈ちゃんの頭にかけてあげる。

 そして私はふたりの様子を写真におさめると、急いで自室へとむかった。


 パソコンを起ち上げ、イラストソフトを起動。

 液タブにむかってペンを走らせる。

 今日はこの写真を元にイラストを描く!


 実は私、学生の頃は漫研や同人サークルなどに所属していた。

 創作活動はあの頃からずっと続けている。


 今でも個人的に同人活動をしていて、私の百合作品には結構なファンがいた。

 イラストだけではなく、マンガや小説も書く。

 その道ではかなり有名になっているらしい。


 この前は私の作った未熟なゲームを、立派なゲームに作り直してコンシューマーへ移植してくれた企業もあった。

 実の娘をネタにするなんて背徳感があるけど、それがかえって創作意欲を高めてくれる。


 私はノリノリでイラストを描き進めていく。

 が、急に手が止まってしまった。


「う~ん、何か物足りない気がする」


 なんだろう、もっと過激なものを描きたい気分?

 いやでも、R-18ものは最近手を引いてたからなぁ。

 だって自分の娘をモデルにそんなことさすがにできないもの。


 でもひさしぶりに描いてもいいかなぁ。

 今度紅葉ちゃんにモデルやってもらおうかしら。


 あの子ならまあいいでしょう。

 私もいろいろ迷惑かけられたし、被害にもあったし。

 まあそれは今度にして、今足りないのはなずなちゃん分かもしれない。


 そういえばいきなりあんな状態を見せられて舞い上がっちゃったから、今日はなずなちゃん分の補給ができていない。

 起こすのはかわいそうだから、そっと抱きしめるくらいにしてあげよう。


 あの子はいいにおいがするから、それだけでも十分元気になれる。

 それにどれだけ救われてきたか……。


 ということで補給補給!

 ついでにココアでも入れてこよう。


 私は一度リビングに戻ってなずなちゃんのもとにむかう。

 そこで私は衝撃的な光景を目にする。


「えっ、何? いったいどうなってるの!?」


 ソファには押し倒されたなずなちゃんと、そこに覆いかぶさって胸を鷲掴みし、谷間に顔を埋める柑奈ちゃんの姿が。


「どうしたらこうなるの!? 柑奈ちゃん起きてるんじゃないの?」


 私の言葉にもまったく反応しないので本当に寝ているらしい。

 確かにこの子は私の見えるところでこんなことをする子じゃない。

 まあ隠してるつもりらしいけど、私には一部バレてるからね。


 あとあなたの部屋の秘密も知ってるから。

 それはそうと……。


「うらやましい! 私もそこに埋まりたいのに! もおおおおお!! プンプン!!」


 罰としてこうしちゃうからね!

 私はなずなちゃんの手を柑奈ちゃんのスカートに移動させ、まるでめくっているように演出。

 うん、最高!


 私はその状態を激写していく。

 ああ、本当にこの子たちがいればネタに困らないわね!

 最後にちょっと補給代わりとして、なずなちゃんの頬に軽くキスをする。


「ううん……」

「ひっ」


 まずい、なずなちゃんが起きちゃう!

 逃げろ~!!

 私は急いでリビングから退散し、自室へと逃げ込む。

 

 その夜。

 私は久しぶりにR-18百合イラストを解禁した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る