第41話 柑奈&果南

 柑奈ちゃんと果南ちゃんの1打席勝負が終わって、今は3人でお風呂に入っている。

 なんでこんなことになってるんだろうか。

 まあ小学生ふたりと一緒にお風呂に入るという状況自体はかなりうれしいことなんだけどね。


 果南ちゃんの胸、けっこうあるし。

 触ってもいいかな?

 いいよね?


 こんなに私のことを好き好き言ってるなら許されるよね?

 いや、ダメだ。

 そんな果南ちゃんの気持ちを利用するような真似はしちゃいけない!


「お姉様、そっちに行ってもいいですか?」

「うひょ!? えっとまあ、いいよ」

「ありがとうございま~す」


 反対側にいた果南ちゃんが、立ち上がって私の前に背をむけて座ろうとする。

 しかしそれをちょうど体を洗い終えた柑奈ちゃんが止めた。


「ダメ、果南ちゃんはこっち」

「へ?」


 立ったままになっている果南ちゃんを置いて、柑奈ちゃんはさっきまで果南ちゃんがいた場所に入っていった。

 そして目を丸くして柑奈ちゃんを見ている果南ちゃんにむかって手招きする。


「さあ座って座って」

「え~っと、どこに?」

「ここに」


 柑奈ちゃんは自分の前を指さして、ニコッと果南ちゃんに笑いかける。

 今まさに私に対してしようとしていたことを、柑奈ちゃんが要求しているわけだ。

 ……なんで?


「どうしたの? 早く」

「は、はい……」


 柑奈ちゃんから笑顔の圧がかかり、果南ちゃんは言うとおりに柑奈ちゃんの前に座った。

 その瞬間、柑奈ちゃんの手が果南ちゃんの胸を鷲掴みする。


「ひゃっ」

「思った通り、引き締まったいい胸をしている」


「ちょっ、ちょっと何してんの!?」

「おっぱい鑑定士である私が、果南ちゃんのおっぱいを鑑定してあげてるだけ」

「だけって何よ!?」


 私の目の前で果南ちゃんが胸を揉みしだかれている。

 小学生にしては大きな胸が、あっちへこっちへぷるんぷるん。

 いったい私は何を見せられているのか。


「はあはあ、いいよ果南ちゃん」

「ひぃいいい、もうやめて~」


「待って、もう少しで全項目が数値化されるから」

「数値化って何!?」


 私の前でどんどん果南ちゃんの顔が真っ赤になっていく。

 これ、のぼせてない?

 もう限界が近いんじゃないだろうか。


 私の我慢ももう限界に近いし、そろそろ助けてあげようかな……。

 と、思った瞬間。


「フィニッシュ!」

「きゃあああああ!!」


 最後に果南ちゃんの両胸を同時に弾いてフィニッシュとなったらしい。

 果南ちゃんは悲鳴をあげて上をむいた後、糸が切れたように私の方に倒れてきた。

 私は果南ちゃんの顔がお湯につかる前に抱きとめてあげる。


「お姉様……、私、お姉さま以外の手で……、汚されてしまいました」

「あ、うん、なんかごめんね……」


 でもいいもの見せてもらっちゃったかも……なんて。


「若狭果南、ランクA。残念ながらランクSの姉さんには及ばないものの、まだ小学生ということもあり将来性に期待できる……と」


 柑奈ちゃんはどこから取り出したのか、スマホに何かを入力していた。

 この子はいったい何をしているんだろうか。

 だんだん柑奈ちゃんが変な子になってきている気が……。


 私が悪い影響を与えてしまっているとか?

 それとも元々変な子で、それがどんどん露呈してきているのかな。

 この調子なら、もしかすると互角に語り合える日も遠くないかもしれない。


 というか、私の胸はランクSなのか。

 一緒にお風呂入るとたびたび胸を揉んでくるのはこういうことだったわけだね……。




 お風呂からあがり、リビングで休憩中。

 のぼせる寸前だった果南ちゃんもようやく回復して、顔の色も戻っていた。


「まったくひどい目にあったわ」

「ごめんね、柑奈ちゃんのあんな姿、私も見たことなかったから」

「お姉さまは悪くありませんよ。柑奈ちゃんがとんでもないおっぱい星人だっただけで」


 おっぱい星人か……。

 茜ちゃんもそんな感じなんだよね。

 だんだん柑奈ちゃんと茜ちゃんが似てきてるのが心配なところではある。


 いや、別に似ているのが悪いんじゃなく、ふたりとも変態へとまっしぐらしてるのが気になるんだよね。

 変態は私だけで十分だと思うから。


 それに私が被害にあうだけならともかく、私のヒロインたちに手を出されるのは困る。

 かわいい女の子たちは私の手で愛してあげたいものだ。


 でも柑奈ちゃんのおかげで、果南ちゃんのことをかわいいと思えるようになったかも。

 色っぽいところを見られたからなのか、ちょっとかわいそうだなと思ったからなのか。


 どっちかはわからないけど、初めて会ったときは茜ちゃんへの愛が重すぎて全然そういう対象として見れなかった。

 でも今なら素直にかわいく見える。


 そう、果南ちゃんは普通に見たらめちゃくちゃかわいい子なんだ。

 ありがとう柑奈ちゃん、おかげで果南ちゃんを好きになれそう。

 私が心の中で感謝していると、そこにお風呂上がりの牛乳を飲みに行っていた柑奈ちゃんがキッチンから戻って来る。


「いいおっぱいだったよ、果南ちゃん」


 柑奈ちゃんが親指をグッと立てて果南ちゃんのことをほめている。

 しかし、あんな恥ずかしい思いをさせられた果南ちゃんがそんな言葉を嬉しく思うはずもなく思いっきり反抗した。


「やかましいわ! もう、子どもができたらどうしてくれるのよ!?」


 ……?

 こども?

 おっぱい揉まれたくらいでいったい何の話を……。


 柑奈ちゃんも果南ちゃんの言ったことが可笑しかったのか、少し笑いながら言葉を返した。


「果南ちゃん、そんなことくらいで子どもはできないよ」


 うんうん、そうそう。

 柑奈ちゃんはちゃんとわかってるみたいだね。

 まあ小学6年生だしね、学校の授業でそれくらいのことは習ってるよね。


「果南ちゃんがいくら姉さんのこと好きって思っても、片想いじゃダメなんだよ。両想いになって、そこから始まるんだから」


 ……?

 なんだろう、確かに大きな話で言えばあってるんだけど……。

 根本的なところで間違ってるよね。


 私と果南ちゃんが両想いになってどれだけ愛し合ったところで、残念ながら子どもは生まれないんだけどね。

 もちろんおっぱい揉んだくらいではね。


「ねえ、ちょっと聞きたいんだけど、ふたりはどうやったらこどもができるか知ってる?」


 本当は知ってるんならこの質問はかなり危ないものなんだけど。

 きっとこの子たちは知らないんだろうなぁ。


「えっと、ふたりの愛のパラメータがカンストしたら1年後くらいに生まれるんでしょ?」

「それ何のゲーム?」


 その愛のパラメータというのはどこにあるの?

 柑奈ちゃん、リアルとゲームを一緒にしちゃダメだぞ♪

 でもよかった、それを知らないということは、エッチなゲームに手を出してるわけじゃないんだね。


 ちょっと疑惑がある言葉を聞いてたから心配だったけど、ちゃんと一般向けに移植されてから遊んでるんだろう。

 よかったよかった。


「えっと、果南ちゃんはわかる?」

「そ、それはその……」

「え、あれ?」


 柑奈ちゃんへの一言から絶対にわかってないと思ってた果南ちゃんが、顔を赤くして目をぐるぐるにしていた。

 これはまさか、本当は知ってたっていうの!?


「あの、その、エッチなことをしたらできるって……」

「ぶっ」


 合ってる、確かにそれだけ聞けば合ってる。

 ただし、私たちは女の子同士。

 残念ながら例えエッチなことしても子どもは生まれません!


「そ、それは本当なの果南ちゃん」

「う、うん、だって茜ちゃんがそう言ってたから……」


 おい、茜ちゃん、小学生に何言ってんの。

 思いっきり勘違いしちゃってるじゃない。


「じゃあじゃあ、私、果南ちゃんのこどもができちゃうかもしれないの?」

「もしかしたら私の方かも……。私たちもこどもだからわかんないけど……」

「ごめんなさい、そんなこと私知らなくて……」


 いやいや、そんなことでできてたらこの前揉まれた私はどうなるの……。


「謝られてもどうしようもないわ!」

「じゃあ、もしこどもができたら私が責任取って結婚するから……」


「うわ~ん、私はお姉さまと結婚したかったのに~!」

「そんな……、私だって、姉さんと……。うう……」


 ……。

 ……。

 ……。


 うん、ダメだこの子たち……。

 もしかして保健体育の授業を受けてないのかな?

 こうなったら私が補習してあげないといけないな。


 グフフ。

 グフフフフ。

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