第27話 お泊り行事当日
柑奈ちゃんたちのお泊り行事当日.。
私たちはなんと、柑奈ちゃんたちと同じ施設に部屋を確保していた。
実はここ、珊瑚ちゃんの家が持ってる施設で、私たちは特別に使用させてもらえることになったみたい。
きっと柑奈ちゃんたちのお泊り場所がここだったのも、浜ノ宮家が関係してるのかも知れない。
まあ、もっと驚くべきことは、堂々と平日に学校を休んでこんなことをしているのに、ここの使用許可をもらえてることだよね。
珊瑚ちゃん自由過ぎるし、ご両親もそれでいいのかって思う。
そのおかげで私もこんな素晴らしい待遇をしてもらっているので何も言えないけど。
なるべく近くにって思ってたのに、まさか同じ建物なんてね。
うふふ、柑奈ちゃんが気づいたら驚くだろうなぁ。
「なんかすごいねぇ、浜ノ宮さんがいれば何でもできちゃいそうだよ」
「いいよねぇ、選ばれし者って感じだね」
「まあ、恵まれてはいるよね」
建物内を見て回っていた茜ちゃんが戻ってきた。
今日の茜ちゃんはいつもより浮かれている気がする。
もしかして茜ちゃんも実は今日を楽しみにしてたのかな?
「まさか茜ちゃんまで学校を休んでついてくるなんて、本当は茜ちゃんもちっちゃい子が好きだったり?」
「ち、違うよ! なずなのいるところが私の居場所だから、それだけだから!」
「えへへ、ありがと茜ちゃん、私も一緒にいられるのうれしいよ」
「ぶ、ぶひっ!」
「ぶひ?」
茜ちゃんが満面の笑みを浮かべながら、なぜかブタの鳴きまねをした。
どうしたんだろう、突然……。
「ああ……、やってしまった……、この私が仮病で学校を休むなんて……」
私たちの後ろには、今日来たことを少しだけ後悔して落ち込んでいる彩香ちゃんがいた。
真面目な委員長である彩香ちゃんには、みんなに嘘をついて遊んでいる今の状況が許せないのかもしれない。
一応私だって罪悪感はあるんだよ?
でもそれ以上に、一緒に暮らすようになってから初めてのお泊り行事で、柑奈ちゃんと離れ離れになるのが私は耐えられなかったんだよ!
……まあ、別に一日も離れたことないわけじゃないけどさ。
「彩香ちゃん、もう今さら取り戻せないんだし、せっかくのお泊りを私たちも楽しもうよ」
「白河さん……、そうね、私の皆勤賞の夢が早くも散ったことなんて、愛花ちゃんと学校行事に参加できることに比べたら大したことないわね!」
「皆勤賞狙ってたんだ……、でも学校行事に参加はできないんじゃないかな……」
あくまでも私たちは偶然同じ場所に居合わせただけの存在。
このお泊り行事に参加しているわけではない。
彩香ちゃん……残念です!
「それじゃあ、とりあえずいったん部屋に戻ってからまた集合しようか」
「そうだね」
茜ちゃんがそう言って、私たちは二部屋に分かれていく。
私と茜ちゃんが同じ部屋で珊瑚ちゃんと彩香ちゃんが同じ部屋。
「私もなずなさんと同じ部屋がよかったです……」
「うっ」
珊瑚ちゃんが部屋の前でキラキラした目を私にむけてくる。
そんな目で見られたら私、同級生相手なのに萌狂ってしまいそうになるよ。
珊瑚ちゃんと同じ部屋って言うのも魅力的だけど、ここは落ち着ける茜ちゃんが一緒でよかったかもしれない。
「なによ、浜ノ宮さんは私と一緒は不満なの?」
「不満じゃないですけど……、なずなさんと比べると、月とすっぽんですわね」
「失礼すぎる!」
本当に失礼だった。
でも珊瑚ちゃんなら許されてしまうのがすごいところ。
彩香ちゃんも別に怒ったり悲しんだりもしていない。
先に珊瑚ちゃんたちの部屋の前を通り、私たちは少しだけ奥の部屋にむかう。
その時、ちょうど曲がり角から出てきた小さな女の子とぶつかってしまった。
「あうっ」
「あ、ごめんね、大丈夫……」
私がぶつかった女の子に手を差し伸べると、その子は私たちのよく知る女の子だった。
「ひ、ひまわりちゃん!」
「なずなさん!? なんでこんなとこ……うぐぅ」
その女の子はなんとひまわりちゃん。
私は慌ててひまわりちゃんの口を手で押さえると、すぐに私たちの部屋のドアを開いて中に連れ込んだ。
よく考えたら別に隠れる必要はなかったんだから、こんなことしなくてもよかったはずなのに。
さっきのところだけ誰かに見られたら、ただの事件だよね。
「ぷはっ」
「あ、ごめんねひまわりちゃん」
「な、なんでここにいるんですかなずなさん」
「えへへ、柑奈ちゃんの学校生活が見たくてね。ほら学校に入っていくわけにもいかないじゃない?」
「ここでも十分アウトだと思うよ!?」
「あれ? そうかな?」
「なずなさん、もう常識が壊れちゃってるんじゃないですか?」
う、嘘だ……。
私は優等生で大和撫子な女子高生で通っているはずだよ。
そんな私が非常識なわけがない。
きっと何かの間違いだよ。
「って言うか、学校はどうしたんですか?」
「もちろん休んだよ?」
「ええええええ~!?」
「そんなに驚くことかなぁ」
「ま、そんななずなさんだから私は好きなんですけどね」
「えへへ、ほめられたねぇ」
「ほめてはいないけど」
そうなのか。
「それより茜さんまで何してるんですか? まさかあなたまで小学生を……?」
「ち、違うから! 私はなずなについてきただけ!」
「何で止めなかったんですか! 取り返しのつかないことになったらどうするんですか!」
「だって、あんな笑顔を見せられたら……、止められないよ!」
「それはわかりますけど! それを止めるのがあなたの存在する理由でしょ!」
「ひどいこと言うね!?」
私を止めるのが茜ちゃんの存在理由って……。
でも確かに私には茜ちゃんが必要なのかもしれない。
「茜ちゃん、こんな私ですが末永くよろしくお願いします」
「え!? ひゃい! こちらこそよろしくお願いします!」
「あ、なんかこれ、プロポーズみたいだね」
「ぷ、プロッ!?」
茜ちゃんが顔を真っ赤にして目を回している。
どうしたんだろう、大丈夫かな?
心配しながら茜ちゃんを見ていると、くいっと私の服が引っ張られる。
振りむくと、ひまわりちゃんがぷぅっと頬をふくらませていた。
なんだかよくわからないけど、すっごくかわいいひまわりちゃんだった。
「よしよし~」
私が頭をなでると、にへっとひまわりちゃんの表情が崩れる。
でもすぐにまた頬をふくらませて、にやけないように頑張っている。
なにこれかわいい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます