第26話 一緒にお風呂といえば
ある日の幼女同好会。
特にこれといった用事もなく、みんな思い思いの時間を過ごしていた。
今日は柑奈ちゃんも遊びに行くって言ってたから急いで帰る必要もない。
のんびりとここでゲームの幼女でも愛でることにしよう。
そんなことを思っていたら、さっきからずっと真面目な顔で読書をしていた珊瑚ちゃんがふとつぶやいた。
「ちっちゃい女の子と一緒にお風呂に入りたいですわね……」
「どうしたのいきなり……」
あまりに突然だったつぶやきに、彩香ちゃんが呆れたような反応をする。
その読んでる本にそんなシーンでも登場したのだろうか。
「私にも小さな妹がいれば一緒に入れたのでしょうね」
「まあ、そうかもしれないけど、いつまでも一緒に入ってくれるものじゃないわよ」
「そうなのですか?」
「それはそうでしょう? あなたにお姉さんがいたとして、今も一緒に入る?」
「誘われたら入ると思いますけど……」
「そ、そうなのね……、まあ、私の妹は結構前から一緒に入ってくれなくなったわ」
「そういうものなのですか」
確かに愛花ちゃんはこの前家に来た時にそんなこと言ってたなぁ。
柑奈ちゃんは誘ってはこないけど、乱入しても別に追い返されたりはしない。
今まで別々に暮らしていたことを考えたら、それって恵まれているんじゃないかな。
もしかして柑奈ちゃんの私への好感度って意外と高い?
むふふ、そっかそっか、柑奈ちゃんも素直じゃないなぁ。
私がひとりでニヤニヤしていると、ふと茜ちゃんが口を開いた。
「愛花ちゃんって委員長とはお風呂入らないんだ? この前なずなとは一緒に入ったって聞いたけど」
「どどどどど、どういうことかしらそれはああああああああああああ!!」
ぎゃあああああ、茜ちゃん、なんでそれ言っちゃうの!?
この流れでは絶対ダメなやつだよ~!
「怖い、顔が怖いよ彩香ちゃん、あと近いから」
「あらごめんなさい、取り乱してしまったわ」
私が彩香ちゃんを手で押し戻すと、意外と簡単に落ち着いてくれた。
よかった、彩香ちゃんの中でそこまで大きな事件というわけではなかったみたいだ。
「でもそうなのね、愛花ちゃんは私と入るの嫌がるのに、白河さんとは喜んで入ってイチャイチャしているのね」
「別にイチャイチャなんて……」
「してないの?」
「……」
「やっぱりしているのね」
別にイチャイチャしていたつもりはないけど、確かに愛花ちゃんの方から密着してきたりはあったなぁ。
でも余計なことは言わない方がよさそうかも。
「愛花ちゃんがそこまで拒絶するってことは、委員長、何かしたんじゃないの?」
「覚えがないわね」
茜ちゃんがきっとそれだろうと思われることを言うが、彩香ちゃんは即否定する。
でもこのパターン、覚えがないという時は大体何かやらかしているもの。
私にも覚えがある。
あの時は私も柑奈ちゃんに二時間ほど口を利いてもらえず泣きそうになった。
「もしかして……、最後に一緒にお風呂入った時に胸を触ったのがダメだったのかしら」
「それだよ委員長!」
彩香ちゃんのつぶやきに茜ちゃんが即ツッコむ。
思いっきり心当たりがあるじゃないですか。
「え? でも妹の発育をチェックするのは姉として当然でしょ?」
「当然じゃないよ! そんなことしてるから嫌われるんだよ!」
「嫌われてないから! ちゃんとお話をしてくれるし、電話もしてくれるし」
「むこうはどう思ってるかわからないよ? だってなずなとはお風呂に入ったんだよ?」
「うう……」
茜ちゃんの攻撃で彩香ちゃんのライフポイントは残り一割程度になった。
これ以上は止めてあげて……。
「白河さんは妹さんの発育チェックはしないの?」
「私はお風呂場で思わずペロッてしちゃって、思いっきりビンタされた後、しばらく口利いてもらえなかったね」
今のところ、あれが一番長い時間続いたかもしれない。
ケンカとは思ってないけどね。
「ほら! やっぱりお姉ちゃんというのは妹の発育をチェックするものなのよ」
「絶対一般的じゃないと思う……」
同志を見つけてうれしそうな彩香ちゃんと、若干顔が引きつっている茜ちゃん。
自分で言うのもなんだけど、一般的ではないよね。
それに私のには彩香ちゃんと違って続きがある。
「私の時はね、次の日に起きたら柑奈ちゃんが私の布団に潜り込んで寝てたんだよ」
「なん……ですって」
「私が起こしてあげたら、顔を真っ赤にして逃げて行っちゃって、あれはもう天使だったなぁ……」
「そんな……、なぜ私よりもひどいことをしておきながら、そんな素晴らしい結末に? 私もペロペロしておけばよかった?」
彩香ちゃんは、信じられないといった様子で額に手を当てて愕然とした顔をしている。
まあ、あの愛花ちゃんの様子だと、ペロペロしてたら致命傷だったかもしれないね。
「なずなのところはラブラブだねぇ」
「まあね!」
それはもう、ずっと離れ離れだった分を取り返さないとだからね。
仲良くなれたと言っても、まだまだ一緒に過ごした時間は短い。
もっともっと思い出を作っていきたいんだから。
そんなことを考えていると、しばらく黙ったままだった珊瑚ちゃんが口を開いた。
「いいですわねおふたりは。私も一緒にお風呂に入ったりできる妹が欲しいですわね」
「そうだよね、珊瑚ちゃんはひとりっ子だもんね。知り合いに小学生とかいたりしないの?」
「実際に会うとなると、柑奈ちゃんたちくらいしかほとんど交流はありませんわ」
「そうなんだ」
あれだけ小学生の写真をパシャパシャ撮ってきてるのに、誰も交流がないのか。
それはそれですごいな。
でも柑奈ちゃんは私の妹だからダメだよ?
「茜ちゃんの知り合いとかにはいないの? 珊瑚ちゃんの妹候補みたいな子」
「妹候補って……。従妹が小学生だけど、あの子は私のお嫁さんになるって言ってるからダメだと思う」
「そっか~」
というか、茜ちゃんにもそんな子がいたのか。
ぜひ紹介してほしい。
「今度会わせてね?」
「遠くに住んでるからなかなか会えないんだけどね」
「よし、今度泊りがけで会いに行こうか」
「なんでそんな話になるの!? まさかなずな、その子のこと狙ってるの?」
「まさか、私は柑奈ちゃんとひまわりちゃん一筋だよ」
「それは一筋って言わないよね!?」
あ、そういえば泊りがけって話で思い出した。
「珊瑚ちゃん、今思い出したんだけど、いい話があるよ」
「え? なんでしょう」
「今度柑奈ちゃんたちは学校で泊りがけの行事があるんだよ」
「そうなのですか、楽しそうですね。でもそれで?」
「私もそこの近くにお泊りして、さりげなく一緒の時間を過ごそうと計画してるんだけど、珊瑚ちゃんも一緒にどうかな?」
「まあ! それは素敵ですわね」
「そこで妹分みたいな子を見つけて仲良くなれば……」
「一緒にお風呂イベントも叶うかもしれませんわね!」
私の計画の話で珊瑚ちゃんの目が輝き始める。
「それって平日でしょ? なずなたち学校どうするの?」
「もちろんお休みするけど?」
「即答!?」
そんなの当たり前だよね?
柑奈ちゃんたちと一緒にいるためなら、学校を一日二日休むくらいどうってこともないよ。
「よし、じゃあ珊瑚ちゃん! 一緒に頑張ろうね!」
「お~っ、ですわ!」
盛り上がる私たちと、呆れている茜ちゃん。
そして呆然としている彩香ちゃんがいた。
「どうしたの彩香ちゃん」
「私その話知らない……、愛花ちゃんそんなこと言ってくれなかった……」
「……」
「……」
「……」
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