第25話 小学生のお泊り会と、一緒にお風呂
ついに来てしまいましたこの時が。
今日はなんと、ひまわりちゃんと愛花ちゃんがお泊りに来ているのです!
小学生のお泊り会……。
いいね!
お母さんも今日は帰ってくるの遅いらしいし、晩御飯は私が腕によりをかけて作っちゃうぞ。
ついでにおいしいスイーツなんかも用意して……。
胃袋を鷲掴みして、みんなのハートをゲットだ!
よし、頑張るぞ。
そんなわけで私は今せっせとご飯の準備を進めている。
といっても、作っているのはカレーだったりするんだけど。
別に手を抜いてるわけでも作れないわけでもないんだよ?
ただみんなの好き嫌いがわからないから、カレーなら大丈夫だろうと思っただけ。
カレーを嫌いな人なんてなかなかいないよね?
少なくとも、いろいろ作っちゃうよりは外れないでしょう。
まあ、私のカレーは超甘口だけどね。
ここは「辛くないとカレーじゃない」って人もいるだろうけど、私にとってのカレーは甘いものだ。
甘いは正義。
白河なずなはお砂糖でできてるんですよ♪
カレーにお砂糖を入れるわけじゃないですけどね。
デザートにはプリンタルトを作るとしましょうか。
なんか私の好きな物を並べてしまっている気がするけど、まあ大丈夫だよね?
そんなわけで晩御飯を済ませ、デザートも堪能し、再び部屋に戻って今度は私も一緒にみんなと遊ぶ。
というかなんで私の部屋にみんないるのかな?
そういえば柑奈ちゃんの部屋って誰も入ってないような気がする。
私も入れてもらったことないなぁ。
……何かとんでもない秘密があるんじゃないだろうか。
この前の暴走のこともあるしちょっと怖い。
でもでもそのおかげで、なぜかみんなが私の部屋にお布団を敷いている。
つまりは一緒に寝るということだよね。
むふふ、広い部屋でよかった~。
「みんな、もう少しでお風呂用意できるから順番に入ってね~」
私は楽しそうにゲームをしている小学生たちに声をかける。
するとひまわりちゃんがとんでもないことを言い出す。
「みんなで一緒に入ったらいいんじゃないですか?」
「いやいや、それはちょっと厳しいかな。ひまわりちゃんたち三人ならなんとかなるかもね」
「え~、なずなさんと一緒に入ることに意味があるんですよ~」
「なんで!?」
そう言ってもらえるのはうれしいけど、私の心臓が持つかどうか。
みんなと触れ合うようになってから小学生に対して耐性はついてきたと思うけど……。
正直、一緒にお風呂なんてことになったら果たして私はどうなるのか。
まだ私はみんなとやりたいことがたくさんあるんだ。
こんなところで人生終了したら、悔やんでも悔やみきれないよ。
「それじゃあ、ゲームをして私たちの中で一番だった人が姉さんとお風呂に入るって言うのはどう?」
「へ?」
私なりにお風呂イベントを回避したつもりだったのに、なぜか柑奈ちゃんが妙な提案をしてくる。
ちょっと待って、私の意志は?
なんで柑奈ちゃんはドヤ顔なの?
私だって一緒にお風呂に入りたいけど、もしひまわりちゃんや愛花ちゃんと入ることになったら、本当に命の危険があるかもしれないよ?
しかし、そんな私の気持ちなんてお構いなしに話は進む。
「柑奈ちゃんナイスアイデアだよ!」
「うん、いいと思う」
なんでひまわりちゃんも愛花ちゃんも乗り気なの!?
もしかしてそんなに私と一緒にお風呂入りたいの?
いや、これはあれだな。
ひまわりちゃんと愛花ちゃんはわざと負けてしまえば私とのお風呂を回避できるとか、そういう考えだな?
さらに言えば、愛花ちゃんはひまわりちゃんを勝たせれば柑奈ちゃんと一緒にお風呂に入ることになる。
こんなチャンスはなかなかないだろう。
そういうことだよねみんな?
「「「絶対に勝つ!!」」」
……やる気満々だった。
え、本当に私とお風呂に入りたいってこと?
いやん、なんだか照れちゃうよ~。
そしてしばらくしてゲームの決着がつく。
勝者はなんと愛花ちゃんだった。
そういえば前に来た時も、愛花ちゃんは彩香ちゃんとずっとゲームしてたから、ゲーム好きなのかもしれないね。
さて、それよりもどうしたことか。
よりにもよってこの中で一番ハードルが高い子になっちゃったなぁ。
知り合ってから一番日が浅い上に、おとなしい性格だからひまわりちゃんのような触れ合いも少ない。
仲良くなれたつもりではあるけど、一緒にお風呂に入るような間柄ではない。
大丈夫なのかこれは。
私は生きて帰ってこれるのだろうか。
だけど決まってしまったものは仕方ない。
「それでどっちから入る?」
「……お先にどうぞ」
「あ、うん、わかった」
ひまわりちゃんと柑奈ちゃんは負けたことがよほどショックだったのか、ふたりとも地面に転がっていた。
別に柑奈ちゃんはいつでも一緒に入れると思うんだけどな。
「じゃあ行こっか、愛花ちゃん」
「は、はいっ、よろしくお願いしますっ!」
そんなに緊張しないで……。
私も緊張しちゃうからね。
脱衣所に一緒に入り、なるべく愛花ちゃんを見ないように後ろをむいて服を脱ぐ。
私思うんだけど、お風呂なら裸になれるとかちょっと理解できないんだよね。
ここですっぽんぽんを見せたからって、その同じ人とふたりきりなら別の場所でもすっぽんぽんになれる?
私は無理だなぁ。
つまりはその逆も無理なんだよ。
普段はすっぽんぽんを見せられないんだから、お風呂だからって見せられるものじゃないんだよ。
つまり何が言いたいかというと、愛花ちゃんの前で服を脱ぐのがはずかしい。
ちらっと後ろを見ると、愛花ちゃんが背中をむけて服を脱いでいる。
発育途中の小さくてプニプニしてる体が目に入った。
こ~れ~は~まずい~!
ああ、こっちをむいて欲しいなんて思ってしまうよ。
なかなかの背徳感ではあるけど、それでも私にだってあんな頃があったんだよね~なんて思うと、少しは気持ちが落ち着いた。
私が小さい子を好きになるのは、もしかしてあの頃に戻りたいという願望でもあるのだろうか。
私は小学生時代に何か大切なものを置いてきたのかもしれない。
それは例えば柑奈ちゃんと過ごすはずだった日々とか。
いや、それはないか。
正直な話、柑奈ちゃんとまた一緒に暮らすことになると聞かされるまで、私は柑奈ちゃんのことをほとんど忘れていた。
でもきっとそれは自然なことなんだと思う。
人はずっと会えない誰かよりも、毎日会える大切な人の方が大きなウエイトを占めるものだ。
どんな大親友でも、転校して連絡も取らなくなれば、普段の生活の中では存在が消えてしまう。
もちろん大切な人であることには変わりないけどね。
寂しいことだけど、現実はそんなものだ。
もしかしたら私は、大切な何かを思い出せないでいるのかもしれない。
「あ、あの、お姉さん?」
「え? ああ、ごめんね、ボーっとしてた」
私は愛花ちゃんの裸を見て、いったい何を考えている。
なぜ小学生の裸の背中でノスタルジックな気持ちになっているんだ。
大丈夫か私。
「入ろっか」
「はい」
私たちはお風呂場に入り、交代で体を洗い、湯船につかる。
普通は反対側か隣同士かになると思うんだけど、愛花ちゃんは私の両足の間に割り込んできて、前にすっぽりと収まった。
そして私の胸の間に後頭部を預けてくる。
これ柑奈ちゃんもやってたなぁ。
みんな私の胸を面白がってない?
私としては密着できてうれしいんだけどね。
「ほふ~」
こんな状態だというのに愛花ちゃんはしっかりとリラックスしていらっしゃる。
ドキドキしているのは私だけだというのか。
そう思うとなんだかいたずらしたくなっちゃうなぁ。
私はそっと手を動かして、す~っと指先でお腹の辺りを触ってみる。
「うひゃっ」
「ふふふ」
かわいい声が出たねぇ。
「触るのダメです」
「ごめんごめん」
私はいたずらをやめておとなしくすることにした。
「ねえ、愛花ちゃんはお姉ちゃんと一緒にお風呂入ったりするの?」
「さすがにこの歳では入らないです」
「今私と入ってるけど」
「お姉ちゃんじゃなくて柑奈ちゃんのお姉さんだからです」
「そっか……」
どういうことなのだろうか。
普通はよその家のお姉さんの方が一緒に入らないと思うけど。
まあ彩香ちゃんだしなぁ。
何かやらかしたのかもしれないね。
ちょっとおさわりしてみたいけど、ここは自重しよう。
今はまだ、その時ではない。
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