第5話 茜とお風呂の話

「へえ、それじゃあひまわりちゃんがなずなの家に遊びに来たんだ?」

「うん、まあ柑奈ちゃんが連れてきたんだけど」


「たまたま私たちと出会った子が柑奈ちゃんのお友達とはね」

「運命を感じるよね」


「いや、そこまでではないけど……」


 ひまわりちゃんが家に遊びに来た翌日の朝。

 茜ちゃんと一緒に登校しながら、その時の話をしていた。


「そんなに楽しかったの? なんだか今日のなずなはお肌がツヤツヤしている気がするけど」

「ああ、それはひまわりちゃんがくれた入浴剤の効果かも」


「え、何、一緒に入ったの?」

「あはは、まさか、さすがにそれは私の心臓が止まっちゃうよ」


「そこまでなの!? それじゃあひまわりちゃんとは絶対に一緒にお風呂入っちゃダメだよ」

「でも心臓を鍛えていつかは必ずひまわりちゃんと一緒に入ってみせるよ!」


 今は柑奈ちゃんとも普通に入れてるし、きっと何度か遊んでいれば、この心臓のドキドキもマシになるはず。

 その時はなんとかお泊り会を開催し、一緒にお風呂に入るんだ!


 そしてそのすべすべのお肌をこの手で……。

 デュフフフ……。


「じゃ、じゃあさなずな、私と一緒に入って特訓しなよ」

「え? 茜ちゃんと?」


「そうそう! 練習あるのみだよ!」

「でも茜ちゃんとは小さいころから何度も一緒に入ってるし、今さらドキドキしたりしないと思うよ?」


「なんですと!? じゃあドキドキしてたのは私だけだったって言うの!?」

「え……、茜ちゃんは私とお風呂に入ってドキドキしてたの?」


「あ、いや、別に裸を見て興奮してたとかじゃなくて、その……、そう! その大きいおっぱいを見てたら心臓がバクバクしちゃうんだよ!」

「落ち着いて茜ちゃん! 周りに人がいるから、大きな声で恥ずかしいこと言わないで!」


 茜ちゃんって普段はおとなしいのに、たまにこうやって暴走するんだもんなぁ。

 結構むっつりなのかな?


 というか、茜ちゃんは私の裸を見て、そういうことを考えちゃってるのか。

 そう思うとなんだか少し恥ずかしい気持ちもわいてくる。


 逆に私が茜ちゃんの裸を見て、あまり何も思わないのはもしかして失礼なことなのかもしれない。

 茜ちゃんはこんなにも私のことを想ってくれているのに。


 私も何か気の利いたことを言わないとだね。

 そう思って、私はいまだにあわあわしている茜ちゃんの頬に手を添えた。


「え? なずな、どうしたの?」

「前から思ってたんだけど、茜ちゃんってすっごくかわいいよね」


「ええ? ええええ?」

「ほらこんなに肌もすべすべで、私が女の子じゃなかったら絶対に放っておかないのに」


「ほわあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 私が茜ちゃんの頬をなでながら褒めていると、茜ちゃんが急に奇声をあげて倒れてしまった。


「あ、茜ちゃん!?」

「ふへ、ふへへへ……」

「幸せそうな笑顔で眠りについている……」


 学校まであと少しだし、これはもう私が運ぶしかないか。

 私はひょいっと茜ちゃんをお姫様抱っこして、そのまま教室まで連れていくことにした。

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