ノラ猫は自活するものだ

 親子の猫がいたよ。

 お母さん猫はマンホールのふたにお腹をぺたんて着けて子猫が、ぴょん、てジャンプしながら辺りを走ってるのをみまもってるよ。


 それでねえ、虎児郎こじろう・Ordinary Cat、略してKOCはボクたちに猫の現況を訴えてくれたよ。


「アッシらノラ猫は餌を自分たちで見つけなきゃなりやせん。昔はそこいらをちょっと走りゃあネズミもいたしトカゲもいたし。あとは家で残った煮干しなんかをくれるゆとりも人間はみんな持ってたもんでさあ。それが今じゃあ猫好きがいたところで自分のペットの室内猫にしか興味がなかったり、猫カフェなんぞに行って自己完結してしまってる。まったく嘆かわしいもんさね」

「それで作ったのが全国猫事情普及連合会ぜんこくねこじじょうふきゅうれんごうかいなの?」

「そうでさあ。アッシら猫は自由なのはいいが好き勝手気まますぎて団結するってことを知らねえ。そこんところをいっちょバシッと連携ぶちかまして猫の人類社会における地位向上と安全の確保を目的に立ち上げたんでさあ」


 ミコちゃんがなにげなく聞いたよ。


「活動ないようは?」

「へっ?」

「だから、具体的にはどんなことしてるのさ?」

「へえ。今んところはこうやって夜な夜な集まってにゃーにゃーやってるところでして」

「意味分かんない!」


 ボクたちが猫のじじょうがわかるわけはないけれども、ただ集まってるだけじゃなんにもならないって思ったから、ちょっとだけみんなでアドバイスしてみたんだ。


「集まるにしても議題を決めた方がいいわね」

「ミチルさん、議題ってのは?」

「だから・・・たとえば効率的な餌の確保ルートとか」

「ふむふむ」

「ゲリラ豪雨の時の避難場所とか」

「にゃあるほどねえ」


 あっ。

 今の、『にゃあるほどねえ』がさすが猫でちょっとかわいかったな。


「あれ?なんか向こうの方の猫が騒いでるね?」

「ほんとだ。なんだろう」


 ミチルちゃんが神社の鳥居に近いほうの猫たちが、ふぎゃーっ、って鳴いているのを聞いてそう言ったからボクも気になってしまったよ。

 KOCも少し慌ててるみたい。


「奴らが来やがりましたよ」

「奴ら?」

野犬やけんでさあ」


 野犬?

 今の時代にノラ犬っているのかな?


 でも、やっぱりいたよ。


「ヴワン!KOC!今日は何匹殺してやろうか!」

「しゃらくせえ!このくされDOGが!」


 KOCがいきなり現れた野犬5匹に向かってDOGなんてそのまんまの呼び方してるからクルトくんはつい言ったよ。


「DOGだなんて普通すぎだな」

「へえ。Death Of Godデス・オブ・ゴッドなんてこちらの神さまに無礼千万なチーム名組みやがってんでさあ。おい!DOG!今日こそ容赦しねえぞ!」

「はっ!無能のKOC風情が威勢のいいことぬかすな!全員噛み殺してやる!」


 さすがにDOGのほえ方は迫力があるよ。ミコちゃんが本気で怖がってるもん。


「ちょちょちょ!逃げた方がいいよねっ!」

「ボクもそう思う。早く歩き始めないと」

「そうでさ。早くお逃げなせえ!ここはアッシが食い止めやしょう。それっ、全員で波状攻撃だ!」


 うにゃうにゃ!

 にゃにゃにゃにゃ!


 なんだかちょっとだけかわいらしいときの声を上げて猫連合が一斉に野犬たちに突進したよ。


「ヴァウヴァウヴァウ!」

「フギャーン・・・」

「ガオッ!」

「ギャニャーン!」


 鳴き声だけで伝わるかなあ・・・それはもうすごいせんとう戦闘だったよ。

 でもボクはそれよりもじゅうようなことに気づいたんだ。


「ねえ、さっきDOGもしゃべってたよね?」

「ボクト、猫が喋るんだから犬も喋るだろうよ」

「あ、そっか」


 クルトくんの言葉になんだかとてもなっとくしたからボクはそのまま何も考えずに必死で足を動かして逃げたよ。


「あっ!」

「グゥルルル・・・」


 お、おっきい!


「な、なにこれ!?」

「い、犬か!?」


 さっき襲ってきた10匹ほどのDOGなんか子犬に見えるぐらいのね、四つ足で立ってるのに肩の高さがボクの頭のてっぺんまでよりも高い大きな犬が一頭、境内の石畳をかんぜんにふさいでいたの。

 クルトくんが叫んだよ。


「お、お手っ!!」

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