VIII 笑う神さま
笑う門には福来たる
ボクはわらっているかな。
自分ではよくわからないよ。
ためしにミコちゃんに聞いてみたよ。
「ミコちゃん、ボク、いつもニコニコしてるかな」
「ボクト?うん。基本四六時中わらってるかな」
「しろくじちゅうって?」
「ああ。ごめん、アタシもこの間買った小説に載ってたから使ってみただけで、ええとね、いっつも、っていう意味」
「そっか。ボクはしろくじちゅう笑ってるんだね」
「どうしたの、急に?」
「笑う門には福来たる、って園長せんせいが教えてくれたからボクはどうなのかな、って思って」
「笑ってりゃいいってもんでもないでしょ。たとえばアタシはどう?」
「うーん。ミコちゃんは・・・しっかりしたお顔をしてるかな」
「わ。うまいこと逃げたね」
「ううん。ほんとにそう思ってるよ」
「つまり笑ってなくて怖い顔の時が多い、ってことか」
「ミコちゃんは正直だから」
給食の時間にふたりでそんな話をしてるとね、同じトキャケ組のレンくんがこんなこと言ったよ。
「僕の妹さあ、全然笑わないんだよね。いちにちじゅう泣き通しだよ」
「レン、アンタの妹ってなん歳?」
「えーと。生まれた時が一歳じゃないよね・・・えーと」
「じゃあ、まだ一歳になってないんだね。生まれてから半年とか」
「あ、そうそう!お母さんがケイはせいご半年だって言ってた!」
「それじゃあまだ泣いてばっかりで当たり前だよ。でもレンが遊んでやって笑ったりとかないのか?」
「うーん。僕が覚えてる限りではないかな」
「うっそ!?」
「ねえ、レンくん。ボク、ケイちゃん見てみたいな」
「いいよ。じゃあ、今度の土曜日にウチに遊びにおいでよ。ミコちゃんとふたりで」
幼稚園が終わってミコちゃんとふたりで寮に戻って早速レイジさんに報告したよ。
「へえ。笑わない赤ちゃんか」
「レイジさんは赤ちゃん笑わせるの得意?」
「うーん、俺にも弟がいるけど自分が三歳の時に生まれてね。遊んでやったりしてたけど、ほんとにわけわからないことで笑い出したりはしてたかな」
「わ!教えて教えて!」
「いいかい。こうやって」
なんだろ。
「こうだ!」
「わあっ!」
ボクとミコちゃんが揃って声を上げるぐらいすごい顔。
ずっと前に幼稚園の社会見学で連れてってもらった歌舞伎の役者さんがヨリ目で口の端っこだけ開けてポーズを決める時の顔みたい。
「ボクトくん、ミコちゃん、やってごらん」
「レイジさん・・・ボク、恥ずかしいよ」
「ア、アタシもそういうキャラじゃないから・・・」
「うーん。そっかあ。ならこうしたらどうだい」
「なになに?」
「笑いの神さまを連れていくのさ」
えっ。
なんだろなんだろ。
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