かなしみとやさしさをまぜてどうぞ

 クルトくんがね、ボクにコーヒーをご馳走してくれることになったんだ。

 学園のカフェテリアでね。


「ボクト、たまには男ふたりもいいもんだろ」

「うん。クルトくんといっぱいお話したいな」

「まあそれよりも恋バナしようぜ」

「コイ花?」

「なーんか、噛み合わないなあ・・・ボクト、ミコのことどう思ってんだ」

「ミコちゃんのこと?好きだよ」

「いやそんなあっさり答える意味での好きじゃなくて。この間空手道場のひとたちが助けてくれた時にさ。サナって子のことをしきりにカッコいいって言ってただろ。ボクト、ミコの前ではそういうこと言うなよ」

「どうして?」

「はあ・・・まあいいや。ミコもかわいそうな奴だ」

「あ。クルトくん」

「うん?」

「ボク、コーヒー飲むの初めてなんだ」

「お・・・そっか。そりゃそうだよな。じゃあまずそのままひと口飲んでみろ」

「・・・」

「苦いか?」

「うん。すごく苦いよ」

「じゃあ、ミルクを入れてやるよ」


 クルトくんはね、テーブルの上の銀色のピッチャーに入ってるミルクをトポポポ、ってボクのカップに入れてくれたよ。


「どうだ?」

「うん。これなら平気」

「はは。それだけ入れたらもうカフェ・オーレだけどな。ボクト」

「うん」

「ボクトはかなしいことをいっぱい知ってるよな」

「え、そんなことないよ。かなしいこととかあまりなかったよ」

「でもお父さんもお母さんも・・・」

「うーん。そうだけどでも理事長せんせいも園長せんせいもみんなも。クルトくんもやさしいからかなしくはないよ」

「ボクト。かなしいことがあったら俺に言えよ」

「うん」

「俺、バカだけどさ。このミルクみたいに薄めることは多分できるからな」

「わっ」

「なんだよ」

「いつものクルトくんじゃないみたい」

「ほらー。そういうところがかわいくないんだよな」

「ふふっ。ボクは意地悪だよ」

「そうかもしんないな。まあ、男同士、これからも時々は語り合おうじゃないか」


 クルトくんはボクがまだ苦そうに見えたのかな。


「ほら。砂糖も入れていいぞ」

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