第0話冥界の王
冥界
硬い靴音を響かせながら男が廊下を歩く。
手入れの行き届いている黒髪を肩で切り揃え、執事服に身を包む美青年。
彼は目的の扉の前に立ち止まりノックした。
しかし返事はない。
彼はもう一度ノックしたが、やはり返事はない。
扉から距離を取り━━
飛び蹴りをした。
バゴォォンッ!
ドアを破壊して彼は部屋の中へと入った。
「ンゴォォ……Zz……」
いびきをかいて執務机に涎を滴ながら寝る主がいた。
「主よ、起きてください。主が起きないから扉が壊れましたよ」
しかし、主は起きない。青年は最後の手段に出た。
「主よ、ペルセポネ様にカロンが色目を使っておりましたよ」
すると━━
「あ"?殺すわ」
主が突然殺気を放ちながら起きた。
「嘘です。彼は真面目に仕事をしていますよ」
「驚かせるなタナトス!お前また僕を騙したな!」
腰まである真っ白い髪、真っ赤な瞳。黒一色のコート。華奢なため一目で男性と分かる者は少ない。
「扉を壊しても主が起きないのが悪いかと」
「嘘でしょ!?僕また起きなかったの!?扉壊れてるし!あ"~ヘカテーに折檻されるゥゥゥ!」
主が頭を抱える。
「愛の鞭ですね」
「愛の鞭!?あれを愛の鞭とお前は言うのかぁ!?」
主が叫ぶが……魔魚の群れに落とされても主は死なないでしょうに。
「そんなことはどーでもいいです。報告があります」
「そんなこと!?いくら死ななくても痛いのは痛いんだぞ!」
「報告があります」
「聞いてるのか!?大体ね、主人の扱いが君達なってないの!わかる?」
「報告があります」
「……はい。もういいよ。報告って?」
主が椅子を揺らしながら言う。
「アスクレピオスが生きていた用です」
「ふぇ!?」
ひっくり返った。
「痛てて……。え、嘘でしょ?ケラウノスでスドーンッて死んだんじゃないの?」
「誰かが彼女を助けたのかと」
「嘘ー。ヤバいじゃん!僕の仕事また失くなるの!?ヘカテーに折檻されちゃう!」
「大勢生き返らないのであればよいのでは?」
「人の話聞いてた!?ヘカテーに折檻されるの!もう魔魚と泳ぎたくない!最近魔魚が何言ってるか分かる様になってきたんだぞ!?まぁ、真面目な話をするとあまり死者の魂がこっちにこないと冥界を維持できないんだ」
「はぁ」
「反応薄っ!取り敢えずタナトス対処の方任せたよ。」
「わかりました」
私は主の部屋を出た。
タナトス退室後
「あれ、あれから生きていたって事は?仕事減ってないしむしろ『例の件』で増えてる……被害受けてない。生き返らせてないじゃんっ!これ無駄にタナトス動かしたって事だよね……。ヤバいっ!ヘカテーに折檻される!」
彼は顔を真っ青にして立ち上がった。
そして彼━━ハデスは部屋を出て疾走する
「タナトスカムバァァァァック!殺しは無しィィィ!今お前を動かしちゃダメだったァァァァ!」
しかしタナトスは見つからなかった。
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