第10話霊核修復
朝早く起きた俺はセツナと朝食を取った後、学院に向かった。
「助かりました~」
「これ俺の仕事じゃないですよね?」
現在ピンクなお姉さんことティア先生のクラスのテスト採点を手伝っている。
整備の仕事が終わり、休んでいたら捕まった。
「ティア先生は俺に魔法、撃たないんですか?」
「学院長の弟子だから~とか下らない私情で~魔法を人に向けるなんて~クズですよ~」
この人は講堂で魔法を撃たれた時、魔法を撃たなかった1人だ。
「クズ……?」
「ん~?事実じゃないですかねぇ~」
優しい雰囲気のティア先生だが、言葉まで優しい訳ではないようだ。
一般人かもしれない清掃員に魔法を放つ……確かにクズだな。
「採点終わりました。あとセレーナって何処に居るかわかりますか?ティア先生のクラスですよね?」
「あの子は~図書館に居ますよ~」
「ありがとうございます」
俺は部屋を出た。
今日はシアの準備が出来たからセレーナの治療をする予定だ。
歩きながら気づいたが、今は生徒は授業中なハズだ。
何故、彼女は図書館に居るのだろうか?
***
イリーナ魔法学院・図書館
「流石名門の図書館。規模がデカイ」
図書館の入口から奥が見えない。
学院の図書館は魔法空間になっていた。
「シア、セレーナは何処に居る?」
━━「召喚魔法の所じゃないかしら、ここね」
そう言ったシアは地図の一番端を指差した。
魔法空間になっているならば、歩く距離も長くなる。
「一番端だな。この距離を歩けと!?超遠いじゃねぇかッ!」
ぶつぶつと文句を言いながら歩き始めた。
一時間後……
「はぁ……やっと着いた」
セレーナは椅子に座り召喚魔法の魔法書を読んでいた。
「ちょっといいか?」
するとセレーナは魔法書を読むのを中断した。
「はい、大丈夫です」
「セレーナの精霊の件だ。準備が整ったから治せる」
「ほ、本当ですかッ!」
襟を掴まれてガクガクと揺さぶられる。
彼女の華奢な身体の何処にこんな力があるのだろうか。
そんな事を考えている間に彼女の揺さぶりは速度を上げていた。
「うぷッ……」
この前も同じ事をしていたから学習してほしい。
「あッ……ダメだ……」
口からお星さまを出した俺はセレーナを睨んだ。
お星さまは魔法で消滅させたから大丈夫だ。
「ぷッ……す、すみません……」
セレーナが肩を震わせながら笑いをこらえている。
「……もうさっきの事は忘れろ。早速、始める。腕を出してくれ」
セレーナが腕を捲って出した。
━━「一つだけいいかしら?」
「(何だ?)」
━━「何があっても魔力の供給を止めないこと」
「(わかった)」
何故か気になったが切り替えて集中する。
セレーナの精霊紋に触れ、唱えた。
「〈
黒紫の魔力が螺旋を描きセレーナの腕に吸い込まれ、精霊紋が点滅した。
「ほら、もう終わったぞ」
「うッ……」
セレーナがその場で泣き崩れた。
「今日は安静にな。召喚は明日からにしろ」
「本当にありがとうございました。この恩は必ず」
「気にするな。じゃあな」
「しかし」
セレーナが俺の腕を掴んだ。
「それなら昼飯奢ってくれ」
「それでは釣り合いません」
「しつこいと昼飯すら頼まんぞ?」
不服な顔をしたセレーナだが、渋々と頷いた。
「……わかりました。先に行っててください。本を片付けたら向かいます」
「おう」
俺は食堂に向かって歩き始めた。
少し歩いた所で俺は立ち止まった。自分の手を見る。特に異常は無い。
魔力を流した時に魔力に似たナニカが俺の中に入ろうとした。
そして違和感を感じた途端、別のナニカが入り込んで違和感を押し戻した。
魔力とも似たナニカは一体何だったのだろうか?
***
「はぁ、今日も駄目ですか」
私は図書館で今日も彼女を呼び出せなくなった理由を調べている。
精霊を召喚できない私は授業を受ける意味が無く、特例で図書館で一日を過ごす。
これまで手掛かりを探すことに人生を費やしてきたが見つからない。
あの日から腕の模様は薄くなり、何度呼びかけても彼女から返答は無い。
魔力を込めても、ただ消費するだけ。
「セリーナ姉様……」
セリーナ姉様に感謝の言葉すら伝えられていない。
そしてこのままでは国外に出ることの無いアルフに復讐する唯一のチャンスを逃してしまう。
「セリーナ姉様の力無しには勝てませんよね」
相手は賢者の称号を持つ男。彼女を召喚出来ない限り勝ち目など無い。
「……」
思い浮かべるのは赤髪の青年。Aランクのガクモンを瞬殺した魔法。あれはSSランクのモンスターでも通用する。
そんな魔法を使える彼なら何とか出来るのだろうか?
そして彼は何者だろうか?
すると誰かがこちらに歩いて来た。
先程、思い浮かべた赤髪の青年だった。
「セレーナの精霊の件だ。準備が整ったから治せる」
頭が真っ白になった。
そして気がついたら彼を強く揺さぶっていた。
彼が嘘をつく理由はない。
━━復讐
私を縛り続けていた復讐。そのためだけに生きてきた。
そのスタートに立てると思っただけで笑いが込み上げてくる。
そして━━
「うッ……」
膨大な知識の波で意識を失いそうになるが耐える。
彼に礼を言い、先に行くように促した。
膨大な知識の中にはSSをも屠れる魔法の数々。
「待っていてくださいね……アルフ……」
復讐の時は近い……
ところで彼は何故、転移装置を使わずに歩いて行ったのだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます