第8話精霊界っす!

 精霊は精霊界から召喚される。どの世界においても、精霊を召喚するとなると必ずこの精霊界を通す。

 つまり精霊界は精霊が存在できる世界全てに繋がっているという事だ。

 アルカがいる世界にシア以外に精霊神は存在していないが精霊界には存在し、精霊神が多数確認される世界もある。






 ***




 シア視点




 私はアルカの元を離れて精霊界の湖に到着した。

 そして軽く腕を振るって湖を消し飛ばし、目当ての精霊を見つけた。


「貴方は何を考えているのかしら?貴方の契約者、凄く不愉快よ。自分の契約者の管理も出来ないのかしら?」


 私は水色男の契約している精霊王を躾に精霊界を訪れた。


「すみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみません」


 私は一つの枷を取り出した。


「これは『吸魔の枷』。これは対象の魔力を永遠に吸収し続ける神器よ」


 目の前の精霊王が青ざめる。


 この神器を理解したようね。


「別名『精霊殺し』。貴方はどれぐらいで消えるのかしら?」


 精霊は魔力の集合体。この枷を嵌められたが最後、死は免れないわ。


 ギリギリで外しましょうか。


 精霊王に嵌めようとした時、背後に気配がした。


「ダメっすよ」


 私は振り返った。


 真ん中から半分ずつ、白と黒の髪をした独特な話し方をするローブの女性━━アスモがいた。


「私の勝手よ。これはお仕置きよ」

「あまり騒ぎは起こすべきじゃないっす。過激だと次の世界で敵が増えてアルカ様に迷惑かかるかもっす」

「……わかったわ。ほら、どっか行きなさい」


 精霊王がこの場から一目散に逃げた。


「全く、他の精霊脅しちゃダメっすよ。さっきの精霊王だってシア様の契約者なんて知らなかったハズっす。貴方の気配は誰も掴めないんすよ」

「だからお仕置きよッ!煩いわね」

「……シア様のお仕置きとか死ぬほうがマシな気がするっす」

「それより調べて来たのね?情報が手に入らなかったとか言ったらこれ付けるわよ」


『吸魔の枷』をカチカチと鳴らす。


「も、もちろん手に入ったっすから止めてほしいっす!」


 一瞬で真っ赤な部屋に転移した。

 寝室も、家具も全てが真っ赤な部屋。


「相変わらず気持ち悪い部屋ね。目がチカチカするわよ」


 ここは彼女の作った空間で精霊界とは違う。この空間はほぼ誰にも破れないし、認識出来ない。

 そして彼女の髪も真っ赤に染まっている。この場合は戻ったが正解ね。


「酷いっす!自分の自慢の部屋っす!」

「はいはい、さっさと報告しなさい」


 するとアスモは真剣な顔つきに変わった。まったくこれなら最初からしっかりして欲しいわ。


「やはり彼女はあの神だと思われます。彼女が言っていたのは嘘で間違いありません」

「やっぱりそうなのね。気配がこっちの世界のモノじゃ無かったわ。何故、こっちにいるのかしら?」

「調べた限りでは兄妹喧嘩をして家出をしたようです。現在向こうも総出で探している模様です」

「呆れたわ。ここ物凄く遠いじゃない。地獄のほうがまだ近いわよ」

「いやーっ、兄妹喧嘩で家出とか可愛いもんじゃないっすか」

「あら、真面目モードは終わりかしら?」

「疲れるっす。やっぱりこっちのほうが楽っす」

「まいいわ。じゃ、本題よ。どっちだと思うかしら?」

「惚れてるっすね」


 こ、これで私を含めて3人。


「ねぇ、私は恋愛経験は無いのよ?今日だってとっても頑張ったのよ?いつもはハグだけなのに!き、キスもして貰えたのよ?なのにどうして相手が増えるのかしら?」

「そうっすよねぇ、地獄じゃブイブイっ……いや、何でもないっす。そんな事自分に言われても困るっす。私も処女っす!」

「はぁ!?そういう問題じゃ無いわよ!というか貴方の得意分野でしょ!部下にでも聞きなさい!」

「いや、自分は幻影をテキトーに作って遊んでたら周りが勝手に騒いだだけっす!それに部下は部下でも、自分に会ったことのある奴なんていないっす!自分はピュアなか弱い乙女っす!」

「な、何がピュアよ!それに乙女って年じゃないわよ!そんな事言ったら私だって乙女よ!」

「……」

「な、何よ?」

「い、いや。ちょっと素でドン引きして言葉が出なかったっす」

「もう、いいわ!帰る!引き続き何かあったら連絡しなさいよ!」

「はい、行ってらっしゃいっすー」

 まったく、失礼ね。私は乙女よ!アルカなら分かってくれるわ!













 シアが居なくなった空間でアスモはニヤニヤと笑っていた。


「シア様もすっかり恋する乙女っすね。昔よりとっても明るいっす。でもシア様が惚れるアルカ様もいつかお話ししたいっす。しかし驚いたっすねぇ。神々はビビり過ぎっす。『神殺しの死神』とか物騒な異名は恋する乙女に失礼っす!悪魔な私より悪魔っす!でも大切な人に出会えたのはほんとに良かったっす。この調子で頑張るっすよ。少しは自分を愛せたんじゃないっすかね?『・・・』様」


 彼女は優しく微笑んでいた。

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