第5話 幕間のテロリスト

 異様に目立つ二人組が成田空港に降り立った。

 一人は短い髪の毛を赤く染めた真っ黒いスーツを着た女。

 ――こう書くといわゆるかっこいい系の女を想像するかもしれないが、それは少々イメージから乖離する。なぜならその女は身長一四五cm程度しかなく顔立ちも中学生ぐらいにしか見えない幼さだったからだ。

 彼女の名はアンといった。

 そしてその後ろからは筋骨隆々として身長も二メートル近い、黒のタンクトップに黒いジーンズという姿の男があらわれる。こいつも髪の毛をド派手な青色に染め上げていた。

 男の名はギルバード。

「なんでニホンの航空会社の飛行機ってこんなに小さいわけぇ?」

 搭乗口を通過したアンはロビーのソファーにどっかりと腰を下ろした。

「あーあー。もう肩バキバキ! 揉んで!」

 するとギルバードがわざわざ床にヒザをついて恭しく肩を揉み始める。

「下手糞! もういい!」

 アンは勢いよく立ち上がった。

「ハァ……なんでわざわざこの『ご令嬢』の私がなんでわざわざ十二時間もかけて日本までこなくちゃなんないんだか」

 ご令嬢というのはこの場合、テロ組織『プリンスエドワード』の『ボスの娘』であるということを示す。

「日本語わかるのが俺たちだけだからじゃないですか?」

 アンの疑問にギルバードが答えた。

 二人共別に日系人というわけではない。日本の特撮やアニメで日本語を覚えたクチだ。

「でもまあいいや。組織の金で日本観光しまくってやる」

 アンは空港に設置された無料の観光パンフレットを大量に引っこ抜き、両手に抱えてタクシーに乗り込む。

「でも姉さん。目的を忘れないでくださいよ」

「トコロドラッグの奪還でしょ? わかってら」

 ブスっとした顔でギルバードの言葉に返事を返した。

 しかし。そのブスっとした顔はパンフレットに載ったおいしそうなごはんやキレイな風景を見るにつけドンドン柔らかい表情になってゆく。

「まずはやっぱり秋葉原だよなーフィギュアとかいっぱい買わないと。いやまてよ中野のほうがいいのか? あとは東京タワーにスカイツリー。フジサンってどうやって見たらいいのかな? あとスシは絶対食いたい! ワガシは京都に行ってからかなー」

「もう目的忘れちゃいませんか」

 などと言いながらもギルバードは思った。

(やっぱかわいいなあお嬢は)

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