第6話 発進

「チーム24eyesって……」

 僕は困り顔でダイに問いただした。


「そうさ、俺達同期生12人で手を組む!」

 ダイの目はマジだ。


 同期生12人で瞳の数は24個、だから「24eyes」

 教育者が付けてくれた僕たちのキャッチコピーみたいなものだ。


 ゴン

 タオ

 ワタル

 マサ

 カズ

 ヨシ

 ダイ

 ハビト

 クミ

 サリー

 マリィ

 キョウ


 これで12人。

 しかし、養成施設では一緒だったけど、今やそれぞれ出身地にバラバラに散ってしまっている。


 マサとゴンは、二人の宣言通りならば、いつか合流できるかもしれない……


 難しい……そう感じざる終えないメンバーが居るのも事実である。


 タオは東のオータ地区の竜守だし、

 ワタルは西地区、

 クミ・サリー・ヨシは南のチクィート、

 図ったかのようにバラバラだ。


 それに性格もそれぞれ……

 なによりそこが問題だった。


「いまさら集まるなんて……」

 僕が弱音を吐くと、


「まずはやってみないとだろ?!」

 ダイは前向きだった。


 まずは話しやすい同地区の同期生からと、ダイが薦めるので、ダイのご近所であるマリィを訪ねることにした……


 ……


「ハビト君! 一体何があったの?!」

 第一声から僕の心配をしてくれたマリィ。

「かくかくしかじか……」

 僕は事の次第をマリィにも話した。


「可愛い~! この子が竜の生まれ変わりなのね!」

 僕の懐で眠る幼竜を見つめて、瞳を輝かせるマリィ。


「でも、私じゃ幼竜については分からないから……キョウに聞いてみればどうかな?」

 マリィは協力的な雰囲気だった。


 これは個人的だけど、僕は施設時代にマリィが気になっていた、つまり初恋ってやつだ。


 彼女の屈託のない笑顔が好きだった。

 それは今も変わることない。

 だが、僕に降りかかった問題はそれどころではない。



「キョウか……少し遠いけど行ってみよう」

 ダイが議論の先陣を切る。

 彼はいつでも冷静に物事を判断できる。

 こういう時には判断に任せておいても間違いはない。

 たとえ間違ったとしても、それ以上に"正しい道"を、選択できていない僕らには強い味方である。


 かくして、ハビト・ダイ・マリィ+幼竜は、キョウの住むリシータの最奥地を目指して、霊峰カサギを登ることを決意する。


 キョウの住む場所は、広いリシータの最も過酷な、カサギの登山道の中継地にある。


「登山の前に幼竜このこのエサを確保してからでいいかな? なましか食べないんだよ」

 乗り気の二人に釘を差すようで、申し訳なさそうに切り出すと、


「もちろん! 近くの川で調達してから行きましょ」

 と、マリィが言ってくれた。


(あぁ、やっぱりマリィは優しいな……)


 当たり前の優しさでも、今の僕には特別に思えていた……




 続く。

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Dragon drop(ドラドロ) Habicht @snowy0207

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