第2話 容疑


 幼竜を持ち帰ったハビト……


「ぴーぴー!」

 突然鳴き始めた、幼き竜。

 これはもしや、お腹が空いてるのか?


(ご飯と言われても、今は収穫期では無いし、あるのは……干し芋と、今朝釣ってきた川魚位しか……)


「ぴーぴーぴー!」


 幼竜は川魚に興味津々のようだ。


「生のまんま行けるのか……?」


 ハビトの心配を他所よそに、幼竜は生の川魚を平らげて、気が済んだのか、また寝てしまった。


(お気楽なもんだ……)


 しかし、短時間と言えど、今日は疲れた。

 幼竜も静かなうちに僕も寝てしまおう。


 …………


 しかし、翌日。


 ドンドンドン!


 激しく戸を叩く音に起こされた!


「カダン地区の竜守ハビトは居るか?!」


 なんと朝早くから訪れたのは、竜守の監視官だった!

 ※竜守の偉い人である。


「監視官?!こんな早くからなんですか?」

 寝ぼけて応えるハビト。


「惚けるな、ハビト!貴様にはカダンの神竜殺害の容疑がかかっている!直ちに投降せよ!」


(な、なんだって?!)

 神竜の力が失くなったのは僕でも感じてる。

 でも、なんでそれが僕のせいになってるんだ?!

 まさか、幼竜の存在までは知られていない……?


「わ、解りました。支度をしますので少しだけお待ち下さい」

 素直に応じる態度を示した。


「手早く済ませろ!」


(ラッキー!)

 僕は投降に応じる振りをして、着替えをするために自分の部屋に戻った。


(裏口から出れば監視官達は撒ける……)


 迷っている暇など無かった。

 僕はまだ寝息を立てている幼竜と、昨日の残りの川魚を胸元に抱えて、裏口から逃げ出した!!


『監視官命令を破る竜守は追放処分』


 竜守になる時に誓った誓いが頭をよぎる……。


 だがここで捕まったら、得体の知れない幼竜と容疑者というだけだ。

 竜殺しの容疑を着せられても、この幼竜だけは護らなければならないと、全く事態を理解していないハビトだったが、直感を信じての行動だった。


 地の利は有利だが……この先、どこへ向かえば……。


 ふいにハビトに過去の記憶が甦る。

(俺はハビトの親友だ!なにかあれば必ず助ける!お互いにな!!)

 そう……そう誓った友『ダイ』がいた。


 しかし、その親友は監視官達が支配するセントラルが建つ地区"リシータ"に住んでいる……


 これ以上失うものなんてない!

 灯台もと暗しってこともある。

 僕は逃亡先をリシータに決め、森の中を記憶を辿りにひた走った!



 続く。

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