Dragon drop(ドラドロ)

Habicht

ハビトの章

第1話 竜守(りゅうもり)


 忘却の地、ロックボーケ。


 そこには、それぞれ異なるドラゴンを守護する5地区があった……


 東の自治区 オータ、

 東南の農村 カダン、

 南の開発地 チクィート、

 西の未開拓地 ボーラ、

 そして、セントラルを有する北の大地 リシータ。


 5体のドラゴンの生息域がそれぞれの領域とされ、それを守護する者を"竜守"と呼んだ。


 これはロックボーケに生きるドラゴンと竜守の物語である……。



 ――――――


 ≪東南の農村 カダンにて……≫


 カダン地区の竜守である"ハビト"は、妙な胸騒ぎと共に、カダンの中心部 "カダンセンター" に、導かれるかのごとく訪れていた……


(なんだろう、この胸騒ぎは……それに、ドラゴンの気配が無い……?)


 センターを訪れたハビトの目に入ってきたのは、青白く輝くモヤだった。


「これは……?!」


 このモヤはドラゴンが竜守に伝える手段の一つであり、竜の記憶(伝言)でもある。


『竜守よ……我が体は朽ちる時を迎えた……、

 新たな守護竜を託す……、

 竜守よ……その幼き竜を育てるのだ……』


 ドラゴンからの言葉を聞き終えた後、

 ゆっくり消え去るモヤ……

 そこには、静かに眠る小さな竜が、光に包まれて眠っていた。


「な?! なんだってぇ~~!!」


 何かの間違いで竜守になって半年、

 右も左も解らぬままに今日までやってきた、

 それなのに……

 更によりにもよって、ドラゴンの子守りだと?!


 ロックボーケにおいて、絶大な存在であるドラゴン、

 それが転生を果たしていた。


(誰かに見られてはマズイ!)


 ハビトは自分のマフラーで幼き竜をくるむと、一目散に自宅へと走って戻った。


「はぁ……はぁ……」

 息切れがひどい。

 これから起こりうる、得たいの知れない事態への恐怖と相まって、ハビトの心臓は大きく脈打っていた。


「一体どうすりゃいいんだよ、これから……」



 この日より、ハビトの竜守としての人生は、激動の時代を迎えようとしていた……



 続く。

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